第11話 もう無理

「洗剤は肌身離さず持つと教えたわよね?」


「はい」


「これA棟のトイレに置きっぱなし!」

 (洗剤を突き出しされた…)


「あ……」


「まったく、なぜかはわかるよね?」


「はい、患者さんが誤飲しないようにです」


「決められた通りにして下さい」


「すみません」



 朝から二廻りは違う女の子にこっぴどく叱られた。


「なぜ、簡単なことが出来ないのだろう」


 彼女に対する苛立ちよりも「頭が悪くなった」ような気がして不安に思った。


「職務遂行能力的に限界」と自分で判断した。また、そう感じることが多々あったし

スタッフ同士が話していたら自分の悪口を言われてる気がした。


「もう無理だ。辞めよう」


 中谷師長に時間を作っていただいた。




「どうしましたか?荒木田さん!」


「その~仕事にくるのがいやで~あの……辞めたいです」


「何かあったのですか…?そうですか…。契約期間満了まで1ヶ月あります。それは守ってください」


「はい。後1ヶ月頑張ります」


「ではそうしましょう!」


 強くとめなかったのは仕事が出来ないと知っているからだ。仕事の割当ても私は簡単な物から上には行かなかった。


「これでいい。期限ができた」


「生きるか死ぬかはまた次回の時に考えるとしてプランAを進めよう」 


「もともと長く勤めるのが目的ではない」


「プランAの遂行を満月に実行することにしよう」


 ただ洗剤の忘れ物だけはするまいと誓った。

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