第9話 光る折り紙

 OT室には「ちぎり絵」に使うちぎられた色紙がたくさんあった。


 これでこの世へのラストメッセージを残すつもりでいた。『さくら』の絵に、『BYE』の文字。病院からの『卒業』と病院への『さよなら』の意味を持たせたかった。あっ、僕は人生からの卒業・さよならである。


 「まてよ、そんな時間あるか?」


 「協力者はまだいない……」


 協力者はいなかった。統合失調症はうつ病とも躁うつ病ともかなり違っていた。例えて言うならオセロゲームだ。パタパタと白から黒に変わる。黒に変わったら悪人になってもう話は通じない。そしてまた白、善人に変わる。


 「この方なら……」はことごとく勝手に裏切られた。「だよね。だから入院してるんだもんね」何かを求めている自分を恥じた。


 すべてをひとりで決行。だれも巻き込まない。そう決めた。


 暗室のOT室のドアの隙間からちぎられた折り紙が光を発しているのに気づいた。


 「…………光る?」


 新たな使い方を検討した。


 「月の暦にも気を配らないとな……」


 「そういえば天気予報はあまり月について取り上げないな。まあ、無理ないか」


 病棟から一般道に出るまで200㍍ある。


 「考えていることは完全に犯罪者だな。躁かな?」


 って思って少し笑った。

 


 


 

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