第5話 港さん
「死ぬのが怖か、恐ろしか、何とかしてくれんね……」
毎朝、港さんの病室を通るたびに投げ掛けられる弱音いや本音。
「おはようございます」
と、言って相手にはしない。
港さんは御年90歳の最高齢者だ。
歳を重ねるごとに徳を重ね達観した考えを持つようになると考えていたがそうではないようだ。
私は62歳で死ぬと思い込んでいる。意味などない。ならば後10年は猶予があるわけだ。
一方、港さんはどうだろう。10年の長生きは考えづらい。
差し迫った死の恐怖は当事者にしかわからないだろう。寄り添うことしかできない。というかオネショの後始末くらいしかできない。
「ごめんね、港さん」
自殺防止の相談ダイヤルみたいのあるけど
というか掛けたことあるけどその老人版が必要ではないか。
人ひとりが死ぬのに若いも老人もなかろう。結構、掛けてしまうものだよ。頭の中がキューと締め付けられた状態だから……
そして私の母も90歳になる。
兄が世話をしているがその面倒の限界は近いと思っている。生物学的に90歳まで生きる必要があるのだろうか?人道的にいつも優しく接することができるだろうか?
人間は神に試されている。
そして100%負ける勝負が続く………
「ごめんね、お母さん」
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