第4話 時代外れのコロナ禍
コロナ陽性の患者さんが出た。
感染源は不明。
私はあの人だろうと思っている人がいた。
その人は通常、アフリカで宗教の布教活動をしていた。
その人から先に出た大園さんに感染したと考えた。その信者Kも陽性であった。
陽性患者は1日5名のペースで感染した。
このままでは10日で全滅だった。しかも悪いことに病棟をまとめる中谷師長も感染し、指揮は大塚看護部長が執ることをなった。
まだ、まだ暑い時分に私たちはガウンにゴーグル、手袋2枚で作業しなければならなかった。病院の見解は明るみにはなっていないが他の病院でもコロナは猛威を振るっているというものだった。
患者さんだけではなくスタッフにも陽性反応がでる人が増えた。
病棟にレッドゾーンを作り陽性患者さんの隔離を進めた。食事も弁当に変わり、入浴もOT、体操もみななくなった。
感染と裏腹の仕事。そんなリスクを冒す価値のある仕事だろうかと自問した。
感染者は30名を超えた。ただ他の病棟から感染者がでなかったのは幸いであった。
感染者は40名を超えた。この時期になると初期感染者が回復し始めた。中谷師長も復帰され指揮を取られた。
感染と回復が拮抗し、回復が優っていった。そのうち新規の感染者は1名とかになっていった。
約1ヶ月間でコロナ禍は終息した。
この間の頑張りを病院が形にすることはなかった。ミスをしないことが正しいこととされた。些細なミスでも始末書を書かされた。看護師、准看護師、介護職という差別はあからさまであった。どんな仕事も工場も事務所も何らか変わりはなかった。迎合出来た者だけが残り、そうでない者は去っていく。それでも食べていくために次の仕事を探さなくてはならない。部屋には求人雑誌が無作為に積まれていた。
あのコロナ禍はなんだったのか?
天災にも似たものに感じる。
本当に終息してよかった。
私の企てが始まらないではないか。
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