その5 現実味。

超能力なんてものの存在を、私は信じていない。

けれど、今日体験した事は紛れもない事実。



イケ:「じゃあ、今、私が何を考えているか読み取ってください。」



そうだ、そうすれば話は早い。

ガチのマジで異世界転移なんてとんでもない事が起きたのか...っていうか、トリックの仕込みとかがわかるよね。

...本当に超能力なのかね?すげー偶然って事もありえるよね、まだね。


私は意識を集中し、イケモトの顔を見た。


むむむ...

むむむむ...

むむむむう...



新井:「なんもわかりましぇん。」


イケ:「あれ?そうですか?」


新井:「もし思考を読む能力が私に有ったとして、どうすれば使えますか?」


イケ:「私にはわかりません...。国が管理する文書に記録が残っているかもしれません。」



なんだろう?もの凄い偶然だったんだろうか?


もう一度、イケモトの顔、いや、今度は頭に向けて集中してみた。



イケ:「あの...。」


新井:「はい。」


イケ:「見詰め合ってるみたいで、ドキドキします。」


新井:「え?」


イケ:「読み取れなかったんですね...。」


新井:「あ、はい、わかりませんでした...。」



ところで、ずっと腰が痛いのを我慢しているのがそろそろ限界だ。

これのせいで上手く行かないのかもしれない。

集中しようとしたけど、痛みが気になってしょうがないもの。



新井:「あの、腰痛が辛いです。」


イケ:「あ、すみません。楽な姿勢でいてください。」


新井:「失礼します...。」



私は、イケモトに背を向けるように、ゆっくり体勢を変えた。



新井:「このまま訊いてもいいですか?」


イケ:「はい、どうぞ。」


新井:「私はここが異世界だとか、召喚がどうとかまだ信じていません。何かそれがハッキリわかる物、ありませんか?」


イケ:「うーん...はるかさんの世界がどうなのか私は知らないですからね...。違いがわかる物があればいいんですけど...。」


イケ:「あ、そうだ、新聞読みます?」



新聞ですか。

なるほど、なるほど、新聞ね。



夕月新聞 2023年 9月14日



見た事の無い名前の新聞だ。

でも日付は合ってる。

14日~21日の7日間で、私は休みを取っている。



・きさらぎ駅崩落事故 修復工事開始

・全身ライガース M1 102年ぶりの優勝へ

・軍棋名人戦 第2局 挑戦者の新手で定跡から離れる

・狭碁名人戦 第4局 白中押し勝ち

・南夜燻 銀総書司自ら飛翔 月本海に落下か



....



新井:「昨日と一昨日のやつも見たいです。」


イケ:「持って来ます。」



....



こんな物まで仕込むものだろうか?

細か過ぎる、作業量も凄いんじゃないか。


さすがに...これは...。



....



.....



......




イケモトが述べたファンタジーが、私の中で現実味を帯びて来た。

全身に震えが走った。

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