その4 異能の者達。

とりあえず聞くだけ聞いてみよう、と、私は思った。



イケ:「召喚士というのは、術式を用いて、離れた空間から‘何か’を呼び寄せる者を指す言葉です。」


新井:「ふーむ。」


イケ:「現在、この月本には、2名しか存在していません。その1人が私です。」



あ、そう。


質問しなければ気が済まない話になるまで、私は適当に相槌だけ打って聞く事にした。



イケ:「召喚士は、国家資格です。ある意味では職業とも言えます。」



へえ~。



イケ:「生活費は国から補助されます。医療費も無料です。」



すげーですね。



イケ:「私に召喚されたあなたは、被召喚者です。だからさっき、医療費を請求されませんでした。」



そうなんだー。



イケ:「私は術式であなたを召喚しました。対象指定記述は、『妻となるべき人物』としました。」



なるほど。


うん、そうか。


...ちょっと待った。



新井:「私が妻!?なんで?」



そういや、「この人が嫁か」みたいなのがあったな。

あれはなんだったんだろう?



イケ:「記述が引き寄せるのは、それに相応しい対象だけです。」



ん~~~、ファンタジーにも程があるな。

そうだ、あれが何なのか質問してみよう。



新井:「ちょっと聞きたい事があります。」


イケ:「はい。」


新井:「私があなたに最初に会った時、あなたが考えている事が、私に伝わったような気がしました。それもあなたの術式ですか?」



あえてファンタジー脳に合わせてみた。



イケ:「え?」


新井:「召喚術の何かで私に思考を伝えた?」


イケ:「いえ、そんなのは無いです。」


新井:「私の事を『嫁だ』とか、『美人だ』とか、『たこ焼きの蛸が小さいのは許せない』とか、そう思ったり言ったりしましたよね?」


イケ:「ええっ!」



あからさまに驚かれた。



イケ:「車の中で唐突にたこ焼きについて訊いたのは、その時に私の思考を読んだからなのか!」



頭の中を全部言葉に出してすんごい驚いてる。

顔がマジ過ぎてなんか怖い。

これ言ったのマズかったかもしれない、どうしよう。



イケ:「凄い!凄い!あなたに出会えた事を、神と先祖に感謝します!」



今度はものすごく喜んでいる。

激しいな...怖ぇーよ。



イケ:「ところで、そろそろ名前を教えていただけませんか?」



冷静さを取り戻したもよう...しかし急変化し過ぎだろ。


そうね...ここまでお世話になっておきながら、名乗らないわけにはいかないよね。



新井:「新井遥奏あらいはるかです。」


イケ:「はるかさん、よろしくお願いします!」



よろしくお願いされた...。


え...っと、で、私の頭に流れ込んで来た思考はイケモトのもので間違い無いのね。

そんで、それはイケモトが何かしたわけじゃない...。

つまり、私の超能力...って事でいいの?




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