メリーゴーランドに行きましたね

最初にメリーゴーランド

 メリーゴーランドに行くんだね。キラキラと豪華なアトラクションだよね。


 ほら、すぐそこにメリーゴーランドがあるよ。さすがに手入れもされていないから、薄汚れて汚くなっているね。見てよ、あの木馬。赤茶色に錆びて、まるで血に濡れた馬みたいだ。


 このメリーゴーランドには噂があるんだよ。なんと木馬がしゃべるってね。


 木馬に乗っているとね、「苦しい、苦しい」と声が聞こえてくるんだよ。はじめは誰かの悪ふざけと思われていたよ。

 でも乗っている人全員が聞くんだよ。「苦しい」って。


 お客さんからの苦情もあって、従業員は木馬になにか仕掛けられているのかと調べたんだ。どこかに機械でも仕掛けられているんじゃないかってね。どこにもそんな物はなかったよ。そして従業員は聞いたんだ。木馬から発せられる声を。

 「苦しい、助けて」と。その木馬は目から血を流していたそうだよ。


 と言う噂のメリーゴーランドが目の前にあるね。ほら、あの馬だよ。4番の木馬。目から血を流したような汚れがついているだろう?


 さあ、せっかく来たんだ。乗ってみなよ。ほらほら。



 ◇ ◇ ◇



 あなたはせかされるように4番の木馬の上に乗せられた。錆び付いた部品がギシギシと音をたてる。


「いいね! 写真を撮るよ!」


 一緒に来た人物は呑気にスマホを取り出した。フラッシュ撮影なのか、周囲がまぶしく光った。その時、あなたは違和感を覚える。あなたのお尻に生暖かさを感じた。


「あ! メリーゴーランドが動いている!」


 カメラを向けながらその人物は言った。電気が通っていないはずのメリーゴーランドが回り出した。


 あなたは驚いて木馬にしがみついた。そして気が付く。この木馬から暖かさを感じることに。そして、首からドクドク脈を感じることに。この木馬、生きている。あなたはそう思った。


「助けて……助けて……」


 声が聞こえた。あなたはカメラを向けている者の悪ふざけかと一瞬思った。


「助けて……助けて……」


 違う。声はすぐ近く。あなたの木馬から聞こえてきている。


「助けて……助けて……」


 声がやまない。メリーゴーランドも止まらない。どうしようか?



 『木馬から飛び降りる』

https://kakuyomu.jp/works/16817330663384580032/episodes/16817330663405127236



 『助けてあげると声をかける』

https://kakuyomu.jp/works/16817330663384580032/episodes/16817330663405501773

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る