第16話

『結婚式、朝の国』

「あー、やっぱりそこかぁ」

「いやでもイベントの場合だし」

《あの、そもそも、奴隷と結婚は》


「元」

《ですが獣人ですよ、シアンのお相手はエルフですし》

「夜の国、獣人化の魔道具無しでも結婚相手なら大丈夫かもじゃん?」


《かも知れませんが》

『うん、ドレス着て』

「よし、俺はドレス選ぶからアヤトは場所と指輪選びな」

「うん」


 本編にはハンナとの結婚イベントって無かったから、私もすっかり失念してたけど。

 アレかな、やっぱり特別編だとキョウと結婚してたのかな。




『はい、では誓いの言葉を』


 ちょっと手伝うだけだったけど、あっと言う間だったなぁ。

 指輪はアヤトの手作り、ドレスは領主さんに頼んで良いのを準備して貰って。

 俺らの服はツンデレ貴族がお祝いだとか言って用意してくれて、場所は教会。


 うん、完璧じゃね?


「幸せにするので、結婚して下さい」


 だけかよ。

 いや逆にアリか、正式にプロポーズしてないんだろうし。


《は》

「ちょっと待ったー!」

「えっ?」


「ハンナさん、コイツで本当に大丈夫?」

《はい》


「よし、うん、1回やってみたかったんだ」

「もー、キョウさん」


「ごめんごめん、はい、続けて」


《宜しくお願いしますね》

「うん」


 結婚式が終わったら二次会兼披露宴。

 宿屋を貸し切ってご馳走を並べて、知り合いを片っ端から呼ぶ。


「いやー、領主様にも来て頂けるなんて」

《いや、寧ろ話も有って来させて貰ったんだが》


 貴族位をくれるって。

 本当は上位の辺境伯か騎士爵とか任せたいけど、アヤトのダンジョン好きを考慮して子爵にって。


「子爵って」

《今まで通りのダンジョンでの成果で維持出来るが、スタンピード対策には必ず関わって貰う事になる》


 それな。

 ユラちゃんによるとスタンピードは朝の国のせい、朝の女神の加護が無い者が王位に着くと起こる事らしいんだけど、何でかウチに来ちゃったんだよね。


 そこよ、結局は誰かがならんといかんのよな。

 このオッサンで良いと思うんだけどな、統治上手いんだし。


「そう恩を売ってる風だけど、お願い含んでるよね?」


《まぁ、ココに留まって欲しいとの思いを含めてだ》


 コレはなぁ、ユラちゃんと相談だな。




『本来、無い』

「やっぱねぇ」

《ですが流れとしては当然かと、功績と善良さを鑑みての事でしょうから》

「大したメリットも無いけど、デメリットって何だろ」


「あのオッサンはしないだろうけど、居着いて欲しくて媚びを売るとか、他の貴族が何か仕掛けて来るか。まぁ、どっちもどっちだよねぇ」


 ですが、コレはコレで統治の基礎とも成り得る。


 今の私としては世界統一への気持ちが傾いている、何故なら意外にもこの世界は小さいからこそ。


 大戦の影響で大陸の殆どが沈み、浮島として各国が存在している。

 だからこそ王位を奪い合うが、戦争行為は殆ど無い。


 ただ、最後に、朝の国の統治が失敗すれば火山に呑まれる。

 それか新しい大陸が出来あがり、平和に暮らすかの分岐が有るそうで。


 そうなると統治が少し難しくなるんですが。

 大義は成せる。


 加護を2人に得て貰い、統一を成し遂げるには。


「他の国に逃げるかもなのに、ココで」

「統一しちゃうのもアリじゃない?永遠に逃げ続けてスタンピードを一生退け続ける、今は平気でもずっとはシンドイと思うよ」

《私もそう思います、ユラが結婚すればいつかは出産となる。その時にスタンピードと共に敵の手に迫られては、その時でないにしろ子供を抱えて逃げ回るにも、子に良い事とは思えません》


 既定路線から既に大幅に外れている以上、予測不能な何かが起こってもおかしくはない。

 私とアヤトの結婚からして、既に既定路線から外れている事だそうですし。


「そこは考えておくけど、それにしても夜の国の情報が無いと」

「だよねぇ、上手く出来てるよ本当」

《先ずは夜の国、次は申し訳無いのですが星の国への偵察を行うべきかと》


「そこはうん、俺が誰かに操られてる懸念も有るしね、仕方無いよ」

「信用はしてるんですけど、ごめんなさい、物語の性質上どうしても疑うしか無いので」


 美味い話には裏が有る。

 無意識に、無自覚にキョウが操られているとも限らない。


「じゃ、保留で」

「ですね」


「よし、このまま家に帰えっちゃえ、新婚さん」

「あ、はい」


 初夜まで我慢してらっしゃいましたし、奴隷紋を外しての性行為は初めて。

 楽しみですね。




《コレは、確かに、仕事には向きませんね》


 本当に、感度1000倍とはいかないけど、全然違った。


「ごめんね、今まで不満だったよね」

《いえ、快楽が無かったワケでは無いですし、達する事も有ったので。寧ろ、日常生活を送るにしても、前の方が楽かと》


「そう?」

《凄く美味しい食事でしか、満足しないワケでは無いかと》


「んー」


《こう、女体化なさって貰えれば分かるかと》


 女体化。


「女体化」

《シアンがブランシュに魔道具の相談をしてらして、いっそ男性体化しては、と》


「え、出来るの?」

《はい、お子さんも叶うそうで》


「えー、凄い、そっか、凄いなぁ」


 綺麗な顔の可愛い赤ちゃんが生まれそう、あ、でも男になると顔がやっぱり少し変わるだろうし。


《あの、本当に、前も十分に満足していましたからね》

「嘘は言わないって分かってるんだけど、何か、心配」


《是非なってみて下さい、お相手しますから》

「いやー、そこまではちょっと」


《いえいえ、遠慮なさらず。あ、ブランシュが実験体を探してたんですよ、シアンの為にも試してみましょう》

「そんなに?」


《はい、お願いします》


 初めてお願いされたかも。


「うん、分かった」


 うん、もう少し考えて返事をすべきだったよね。


《どうでしたか?》


「うん、全然、違ったけど、うん、分かった」

《今回が初めてだったんですし、まだまだかと》


「いや、本当、大丈夫だから」

《遠慮しないで下さい、折角、変身後暫くは妊娠しないそうですから》


 ハンナがマジカルチ〇コ持ちじゃなくて本当に良かった。

 コレ、感度1000倍は無理だ、死ぬ。




『おはようアヤト』

「おはようユラ」

『おはようございますー』

「なんだよー、アヤトの女体化見たかったのに何で男の姿なんだよー」


『ね』

『アレですかね、不具合でも?』

「いや、違うんだブランシュ、うん、女体化はした」

「あ、アレか、避妊効果の為か、エロ過ぎだろアヤト」


「いやそれも違うんだって」

『ハンナのお手伝いしてくる』

「うんうん、察しの良い子だねユラちゃん」

『で、何か問題でも?』


「いや、うん、感度1000倍って死ぬんだなと思った」

「だよなー!うん、分かるぞ、ようこそ女子の世界へ」


 感度1000倍になる媚薬って、最早。


『何ですかその暗殺薬』

「あー、そっか、逆にそうか」

「いや、無いけど、有ったら死ぬなと思って」


『いやでもアレで2倍いかない位ですよ?』

「は、え?」

「うんうん、マジで普通でも失神する子も居るし、妥当だよねぇ」


「え、じゃあ、本当に死んじゃうじゃないですか」

「ほらアレじゃね?魔法的な何か」

『そうなると感度が落ちるかと、結局は脳が焼き切れない様に保護するんでしょうし』


「あー、何、アレ、実は死んでるのか」

「怖い事を言わないで下さいよ」

『お2人が1番怖い事を言ってますけどね、失神ってマジなんですか?』


「君、まだなのか」

「アレだけの魔道具を開発しておいて、まだ」

『だーかーら、誰かに試して頂かないと不安だったんです』


「と言ういつの間にシアンちゃんと仲良くなってたんだか」

『それは、恋愛の、事を』

「それこそキョウさんに聞けば良いのに」


『聞いたらいきなり大量の避妊具を渡して来たんですよ?!』

「そんな事もあろうかと全種類買い揃えておいたんだ」

「どんだけ渡して遊びたかったんですか」


「だってアヤトは避妊具んん」

「結婚するまで本当は避妊した方が良いですよ、本当、うん」


『やっぱり、感度が落ちるんですよね』

「そこは内側に、男性側に例の潤滑剤を、つか浸しておけば良いんじゃない?」


『天才では?』

「良く言われる」


 避妊具の面倒な点は乾燥状態から戻して使用する点だったんですけど、成程、それなら小瓶で置いておけば。

 いやでも雑菌の繁殖が。


 でも、そこを抑えられたら。


『アヤトさん、治療費は出します、実験台になって下さい』

「治療費って」

「うん、頑張れ」


 コレは、やっと、一般にも売れる品物が出来上がるかも。

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