第14話
「アヤト、お金貸してくんね?」
「この前、渡しませんでしたっけ」
「使っちゃった、スカーレットに」
「は?」
「ココから居なくなってくれた方が楽じゃん?だから残りの見受け代と移動費渡して町を出した」
キョウが何かしてたのは私もハンナも知ってたんだけど。
昨日の今日で、凄い。
「だからモテるんですね?」
「おう」
私も鞭打ち行脚を見て、少しスカーレットの事が気になってたんだけど。
キョウ、偉い、凄い。
『すき』
「ぉお、とうとう認めてくれたかユラちゃん、ありがとう」
ずっと前からもう、認めてたんだけど。
こう、タイミングが無くて。
「すみません、ありがとうございます」
《お気遣い頂きありがとうございます》
「いえいえ、うん、気分が良いねぇ」
『おかねあげて』
「あ、はいはい」
《再度3等分にしましょう、私とユラ、アヤト、キョウで》
『うん』
「いやー、悪いねぇ」
でも、受け取ったら今度は食費だ家のお金だって言って、ハンナに渡した。
行動が先ずイケメン、凄い、流石主人公格。
私、モブが良かった。
『キョウのお嫁さんは幸せ』
「おう、アヤトも見習えよ?」
《程々にお願いしますね、モテ過ぎても困りますので》
「あ、はぃ」
「直ぐ惚気る、行こうユラちゃん、今日は俺が構ってあげよう」
『うん』
先ずはブランシュの居る地下へ。
昨日の時点で圧を掛けたかったんだけど、あの騒動が有ったからしなかったんだよね。
「お邪魔して良いかなー」
『はーい、はいはいはい、あらユラさんも、どうかしましたか?』
『お外に出ないでお外に行きたい』
「安全の為にも暫く引き籠ろうって、ね」
『だからはやく魔道具を作ってください』
『今までに無い、圧の、掛け方を』
『おねがい』
「はい可愛い」
『それとも男が良いですか』
『なっ』
「あー、確かに、好みのタイプとか居る?」
『いや、それは』
『細マッチョ、騎士、黒髪』
『何でそれを』
「実は心を読めるんだよねー?偶に外れるけど」
『たまに当たる』
『3つ当たるとか凄い、え、そこまで調べました?』
「いや、流石にそんな暇は無かったけど。成程ねぇ、よし、散歩しろ、ハンナとユラと買い物に行け」
『そこ命令形なんですね』
「君の為だよ、生きるなら楽しい方が良いでしょ?」
『まぁ、はい』
『いこう』
『くっ、なんて卑怯な圧の掛け方を』
『わかる』
何でココの人は明け透けに何でも言っちゃいますかね。
「ハンナさん、ブランシュのお婿さん探しにユラちゃんと行ってくれない?」
《分かりました》
『何で直ぐに納得しますかね?』
《相手が要らない派ですか?》
『いやそこは居たら居たで良いとは思いますけど』
「クズの事はさっさと忘れた方が良いと思うよ、もう死んでるだろうし、マジで時間の無駄だから」
『いや、そこは私にも』
《では問題が有るかどうか買い物をしながら見定めてみましょうね》
『うん』
『うんって』
「はいはい、さっさと行ってくる、お土産待ってるよ」
「ですね」
最初。
面倒に巻き込んでくれてなんて人達だと思ったけど、怒らない謗らない、焦る様な事も嫌味も何も無くて安心してたのに。
うん、忘れてた、この人達って強引なんだった。
『ハンナ、何でお菓子凄い買うの?』
《警備隊の方、ギルドの方にお礼とご挨拶をと》
『それ、最初から決めてたんですか?』
《あ、いえ、買い物に行けと言われた時に思い付きました。手作りでは警戒する方も居るので、買った方が良いかと》
『すごいねハンナ』
《ありがとうございます》
この国の奴隷だからか、凄い優秀なんですよね。
と言うか朝の国でも扱いは同じだけど、ココまでちゃんとしてないって言うか。
アレですかね、あの領主様だからこそ、ココまで奴隷が賢いとか。
ぅうん、謎。
『あの、ハンナさん』
《はい?》
『ハンナさんみたいに賢い奴隷って、居ます?』
《ご入り用ですか?》
『あ、まぁ、半分、助手は居たら居たで楽なので』
《私では難しいでしょうか?》
『いや、ハンナさんは色々と大変でしょうから、こう、他に居るのかなと、半ば興味本位でもあります』
《成程。では菓子を届け終えてから、昼食後になると思いますが、行ってみましょうか》
『あ、はい、お願いします』
あの領主だからこその、ココの奴隷の待遇なのかと思ったのですが。
《朝の国でも、こうですか》
『うん、だから違いは何なのかなと思って、やっぱり領主様の格の違いかな、と』
「で、良いのは居た?」
「あ、そこですよ、どうでした?」
『いやー、ハンナさん程のは居なさそうでしたね、やっぱり希少種だからですかね?』
「ブランシュちゃん、好みの相手が居たかを聞いたんだけど?」
『あぁ、まぁ、ふへっ』
《警備隊の方に見とれてましたので、身だしなみ用の代金をお願いします》
「あ、はいはい、はい」
「でさ、朝の国にもハンナさんみたいなのって居なかった感じ?」
『そう奴隷市場を見回って無いんですけど、全く同じ毛色と耳の形、それと尻尾の者は居なかったと思います』
「あー、じゃあさ、折角だし夜の国に行っちゃう?」
「確かに、同族探しにも」
《そこなんですが、同族にそこまで会いたいとは思っていないので、後回しでも宜しいかと》
「念の為に、一応聞くけど、何で?」
《探す者も居なかった、そして捨てられた可能性も有る、となれば会う方が損が出る可能性も有るかと》
「でも、同種の方が繁殖率が高いんだよね?」
《まぁ、そう聞きますが》
『そこは淫紋で何とかすれば良いだけでは?』
「そこどうにか出来るもんなの?」
「って言うか奴隷紋とは別に淫紋が有るんですか?」
『えーっと、ちょっと見せて頂いても?』
《あ、はい》
私の身に刻まれているのは、今までの経験からして、淫紋を改良した奴隷紋。
避妊が主で淫紋としての機能は薄い筈、なんですが。
『あー、コレ淫紋を改良したタイプの奴隷紋ですね、はいはいはい』
「いやそこ詳しくお願いします」
『淫紋って、本来は
「あー、人によって妊娠し易い日に欲情するって聞くもんね」
『そこです、それを高めるのが淫紋。けどコレは避妊の紋と言っても良いかと、謂わば真逆、妊娠を抑制してるんですよ』
私もそう思います。
「コレを解いて、淫紋を付けると」
『場合によっては、防音の魔道具が必要になるかと』
「あー、だから表には詳しく出て無いのか、男のロマンを消し飛ばしちゃうから」
『と言うかまぁ、お互いを守る為かも知れませんね、改良型を試した方は両者共に酷く憔悴してましたし』
「そこまで」
「だから娼婦に無いんだと思うよ、仕事にならないだろうから」
「そこ、せめて感度だけ上がるとか無いですかね?」
『有りますけど、要ります?』
《仕事に支障が出るのは、流石に困るんですが》
「じゃあもう1人買おう、ブランシュちゃんの助手も必要だろうし」
《あの、お金は大事なので》
「仲良しするのも大事だし、お金は稼げば良いし。ブランシュちゃん的に欲しい子は居た?」
『セレッサって可愛い子が居たんですよ、それこそユラちゃんに良いかな、と』
「あ、その子って」
《私は見て無いんですが》
『あ、少し離れた時にチラっとご紹介頂いたんですけど、お知り合いで?』
「ハンナ、ブランシュと行ってきて」
《はい》
私に、2度手間を掛けさせるとは。
『あぁハンナちゃん、ブランシュ様』
『セレッサを下さい、適正価格で』
《代わりに良い提案が有るので、呑んで下さらないと他の街で買って、良さをココで広めるそうです》
『うん、はい、そうします』
『悪かったよハンナちゃん、君に言うと直ぐに買い手が付きそうで、暫く見世物として置こうと思ってただけで。ごめんごめん、で、良い案を教えてくれないなか?』
《先ずは値段を書いた証書をココへ》
『ぅう、直ぐに用意させるからそう怒らないで、ね?』
こうして、感度が上がるとされる潤滑剤の販売と魔物に育てられた子セレッサを引き換えに、家へ。
『あー、凄い、ずっと見ちゃいますねコレ』
『きれいな髪』
《大丈夫ですよ、家族になったんです》
ユラの知識では殆ど言葉を話さない、と。
実際にも非常に寡黙。
「ヤバいね、この並びはずっと見てられるかも」
「キョウさん、そんな趣味が」
「無いんだよなぁ、未成熟なのは本当、無理」
「仮に叶ったとしても、大人になったら捨てられるかも、って思わないんですかね?」
「あー、分からんけど、だから逆に手を出さないか。そこまで考えが至らない、か」
「あぁ」
《愚かなままにすれば容易いかと》
『だから奴隷にも民にも、そう教育を施さないんでしょうね』
「はぁ」
「まぁまぁ、今日は家族が増えたんだし、お祝いしよう」
《ですね》
コレで暫くは引き籠っても大丈夫そうですね。
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