第8話

 ユラ側の候補者の調査結果は。

 キョウのオススメは獣人、アヤトは鍛冶師の弟子、そしてユラ本人としては。


『ハンナは?』


《私としては、寧ろ全員と平等に接するのが1番かと》


 性行為には早過ぎますし、個性が伸びるのはコレから。

 暫くは様子見が1番かと。


『分かった』


 素直に納得出来るのも、賢さの現れなんですが。

 そうですね、自信を付けて頂くのが今は。


《あの、コレは》

「ユラとハンナさんの為に、花を買いました」


 拒絶され、性交渉が無いまま1週間が過ぎ。

 突然の贈り物。


 どうして私の機嫌を取ろうとしてるんでしょうか。


『ありがとう』

《ありがとうございます》

「何の花が好き、とかは」


《その、特に何が好きとかは》

「あ、あ、ですよね」

『見付けようね』


《あ、はい》


 こんな事をしなくてもユラの保護者である限り、離れる事は無いのに。


「ハンナ、ちょっと良いかな」


《はい》


 キョウとユラを置いて別室へ。

 コレは、愛の告白でしょうか。


「奴隷だって忘れててごめん、でも奴隷じゃないって今でも思ってるし、ハンナにも自分が奴隷だって思わないで、欲しいんだけど」


 最初から、そこまで自分は奴隷だとは思っていないんですが。

 言って信じて貰えるかどうか。


《流石に全く思わないのは無理なのと、そもそも元から、最低限しか意識していないんですが》


「それ、ユラの為だよね」

《それもですし、そう警戒しないでも良いだろうと、まぁ、野生の勘ですかね》


「本当に?あ、疑うとかじゃなくて、無理をさせて無いかが心配で、嫌なんだ、好きじゃない相手と性行為をするって事」


 無関心だと答えたら、多分、大問題になりますよね。

 でも好きだ、との態度を延々と取り続けるのも難しいですし。


《アヤトの言う、好き、とは、どう言ったモノでしょうか?》

「好きって、良く分からない?」


《愛は分かります、ユラを愛して守ると心に誓いましたから。ですが好き、となると、人其々に違うのでは、と》


 コレで、私にどう接して欲しいかを聞き出せる、筈。


「僕の赤ちゃんが欲しいって思って貰いたい」


《えっ》

「奴隷だから考えた事も無いかもだけど、ずっと一緒に居たいとか、赤ちゃんが欲しいって思って欲しい」


《それは、愛では?》

「うん、愛してるから愛して欲しい」


 まだ知り合って日が浅いのに、入れ込み過ぎでは。


《まだ、2ヶ月》

「いつなら良い?いつ好きになるのが最適?」


《それは無いとは思いますけど》


「けど?」


 確か、飽きが来る期間は。


《最低でも3ヶ月、最長で4年。ユラの為にも、婚姻や子供については》

「それ飽きる期間だよね、恋が冷める期間」


《返品や交換、新しく買いに来る周期がそうなので、心配なんです》

「ハンナが受け入れてくれなくても何かが変わる事は無い、頑張ってそうするから、僕の気持ちは置いといてハンナの気持ちを尊重して欲しい」


 私の気持ちの尊重。




「重い」

『素敵』


 キョウと一緒に覗き見。

 何か、そう、なっちゃった。


「そっか、お嬢様はこう言うのが良いか、よしよし」


 アヤトとハンナに子供扱いされるのは良いけど、キョウにされるのは、何か癪。


『子供扱いしないで』

「折角の子供なんだから良いじゃん、満喫しときなよ」


 全部言ってやりたい。

 キョウが悪いワケじゃないんだけど、何か癪。


 何でだろ。


『キョウはあまり好きじゃない』

「取らないし邪魔しないって、寧ろ応援して、コレなんだし」


 だろうとは思ったけど。


『ハンナを悩ませてる』

「そら奴隷だから悩むでしょうよ、しかもユラちゃん信者」


 そっか、私からも言うべきか。


『私も言う』

「まぁ、だよね、けどもっと混乱するかもよ?」


 ハンナに意志が無かったなら、きっと混乱する筈。

 でもハンナには意志が有る、しっかりとした愛情をくれる、子供だからか良く分かる。


『言う』

「信じてるんだね、ハンナさんの事」


『うん』


 アヤトが強いのは分かってる、それこそハンナが居なくても私達は生きていけると、今は思う。

 けど私に、私にもアヤトにも必要、家政婦や奴隷じゃないハンナが必要。




《アナタもですか》

『私を最優先にするって言うのは嬉しいの、けどアヤトとハンナには幸せになって欲しい、それが私の幸せになる』


 キョウが外れてるんですが。

 まぁ、帰還予定ですからね。


 それにしても、余計な事を。


《分かりました、ですがもう少し良く考えさせて下さい》

『うん』


 さぁ、どうお仕置きしましょうか。


《余計な事をした自覚は?》


「あー、少し、俺を消す?」

《今悩んでいる最中ですね、アヤトの記憶も消すかどうか、つまりアナタの入れ知恵を無効化させる事も可能。かも知れない》


「何を企んでるの?」


 仲間に引き入れて疑いを濃くした、非常に良い傾向ですし。

 認識阻害を解除しますかね。


《ユラを愛すると誓っただけですが、何か問題でも》


「今、匂いが判ったけど。それも操作してるのかもしれないってなると、永遠に疑い続けるか、ココで信じるか様子見か」

《お好きにどうぞ。ただ貴男次第でアヤトとユラの幸せに影響する事を、しっかり認識して下さいね》




 アレやっぱり、魔王がケモミミ奴隷少女に転生したタイプのアレじゃん。

 え、なに、ココそう言う世界線なの?


 全員、転移転生者?


 えー、凄ない?

 凄い、どうしたら良いかさっぱり分からん。


 大義って何だ。


 あ、アレか、ハンナさんを幸せにするとかか。


 有り得る。

 ハンナさんが最強だとしてもユラちゃんが制御装置みたいなもんで、ユラちゃんもアヤトも納得出来て、かつハンナさんも納得のルートを辿る補助を。


 補助で大義って、成せるか、補助系魔法の主人公も居るんだし。


 いやアレ、アレが主軸か。


 あー、正解が知りたい、せめて攻略本か何かが落ちて無いかなぁ。




「はぁ」


 僕が家のドアを開けると同時に、キョウさんの盛大な溜息が。

 ハンナに呼び出されたって聞いたけど。


「キョウさん、もしかしてハンナに怒られちゃいました?」

「いやココがゲームなら攻略本とか落ちて無いかなと、せめて説明書、世界線の説明欲しいじゃん?」


「キョウさん、完璧主義ですよね?」

「あー、そうなっちゃう?」


「死にたくないのは勿論だとは思うんですけど、俺もハンナも強いし、そうなると上手く生きたいのかなと思って」


「楽しく生きるのがココに転生した者で、上手く生きたいのが転移者か。確かに、ムーブかなり変わるよなぁ」

「僕は平穏に、だったんですけど。確かにユラの為にも、ある程度は楽しく無いとダメですよね」


「真面目か」

「そこは程々にしませんよ、安全第一ですから」


「ちゃんと正しく抜いてるか?」

「どうして標語を言うと必ずその流れになるんですかね?」


「そら避妊は安全第一を念頭に置いてすべき行為だからだろうに」

「ですよね、正しく使えば病気も防げますし」


「君、ココの避妊具で病気回避は不可能だからね?」

「何で良く知ってますかね?」


「そら話のネタにする為だよ、よこしまなる君と同じにしないでくれたまえよ」

「本当ですかねぇ」


「マジマジ、ココのは近世、物語的には中世と同じ。魚の浮袋だとか動物の膀胱、盲腸を使ってて。それらの避妊具には病気を防げるだけの密度が無い、透過性の問題が有る」


「あぁ、精子は防げてもウィルスや菌は防げない、大きさが違うから」

「そうそう、流石転生者」


「やっぱり顕微鏡は欲しいですけど」

「メガネ、レンズなぁ、結構技術的特異点に成り得ちゃうからなぁ」


「万能薬(抗生物質)、マジの万能薬、レンズ」

「あ、伝書紙の量産は?星の女神様から貰ったコレ、ココでも作れない?」


「それもそれで特異点になっちゃうのでは?情報は金ですよ?」

「隣の夜とココと星の国に売るんだよ、打倒、朝の国」


「朝、昼、夜。何で星なんですかね、何となくは分かりますけど」

「特別編か続編なんじゃね?」


「あー、有る有る」

「しかも星って繋ぐじゃん、星を繋ぐと星座になる、それとか座標とか目印とか」


「流石天才」

「なら賢者枠にしてくれよぉ、何でスピード系なんだよぉ」


「流れ星、伝令」

「あぁ」


「売りましょう、先ずは作らないとだけど、伝書紙」

「それ宛ては有るの?」


「実は、資金源とかも知ってはいるんですけど」

「何で関わらないんだ君は」


「だって、嫉妬させるのアレだなと思って」

「で、今は嫉妬されないかも知れないから怖い、と」


「ぅう」

「ちゃんと抜いてる?」


「まっ、抜いてます、だから浮気の心配は無いんですけど」

「いや力加減とか方法大事だからね?」


「方法?」

「床禁止、柔らかく優しく、じゃないと中でイケないってお医者さんが言ってた」


「床」

「いや、うん、先ずは娼館に行こうか」


「絶対に嫌です」

「違う違う、見るだけ、マジで見るだけ。ユラちゃんにもちゃんと説明するから大丈夫」


「え、ダメですよ」

「いや寧ろ大事でしょうが、自分に無いからって乱暴に扱うのもダメ、逆に慎重に扱い過ぎてもダメだって教えないとなんだし」


「まだ早いのでは?」

「そら具体的には言わんよ、自分達の大事なモノを大切に扱う為に、専門家の技術を見に行ってくるって言うさね」


「口が上手い」

「おう、よし、行くぞぉ」

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