第6話

 今日からユラちゃんの結婚相手候補の調査、と言っても教会を見張るだけなんだけど。

 いやー、彼らがお金持ってて助かった、調査費を出してくれるって。


 ずっと危険を避けてたからマジでギリギリだったんだよね、ギリギリ、ジリ貧。


 先ずは能力付与アリの候補者、鍛冶師の弟子君。

 良いね、凛々しい系だ。


 うん、真面目。

 けどなぁ、真面目が全てじゃないからなぁ。


 それこそ真面目過ぎてパンクしたアヤト兄も居るんだし。

 やっぱり程々だよなぁ。


 お、商家の奴隷で小間使いの獣人君。

 尻尾って可愛いよな、耳とかもうズルいわ本当。


 仲良いなぁ。


 良い子達なんだろうな、奴隷の存在は知ってるのに気にして無いし。


 あ、獣人君はアレだな、悪戯っ子だな。


 んー、落ち着きが無いとユラちゃんが気圧されるかもだしなぁ。

 同じ位に大人しそうな子の方が。


 いやでもお互いに引っ込み思案で、ユラちゃんを守れないのは困るし。


 あー、でも彼みたいに正義感が強いのも、強過ぎるのも。


《わっ》

「ひゃう!」


《どうも、ご苦労様です》


「ハンナさん、意外とお茶目だね」

《表情筋が弱いだけなんですが、良く誤解されるんですよね、真面目だって》


 嘘か冗談か分かんないんだよなぁ、この人。


 いや、でも元の世界では当たり前だし。

 アレだな、能力に頼り過ぎるのもイカンって事だよなぁ。


「あ、何で居るの?」

《交代のお時間なので、休憩してからアヤトの居る場所へお願いします》


 子供を見てるとあっと言う間に時間が過ぎてた。

 凄いな子供って。


「ありがと、ちゃちゃっと食ってクソして行ってくるわ」

《ごゆっくりどうぞ》


 無表情強いなぁ。 

 マジで冗談か分からん。




「ねぇねぇ、アヤト君、無表情プレイってどんな気持ち?」


「げっふん、ごほっ」

「あ、ごめんごめん、つい先輩に教えを請うと思っちゃって」


「キョウさん、こう、こんなもんなんですかね?僕、二次元の事でしか話した事無くて」

「あー、女子同士は遠慮無いね、演技してるとか平気で言うし。片や男は何回出来た、とかね」


「あ、それは話し、それ、相手とって事ですかね?」

「両方、それお前だけ満足してるんじゃねって両方の聞くと、おいおい、何で落ち込みますかね?」


「マジで、初めてで、不安で」


「誰を相手にしても、相手変えても、全員が演技だって見抜けないなら意味無いからね?」


「あぁ」

「あー、言ってやろ、ちょっと他で練習しようと思ってただろ、最低ー、きゃー、不潔ー」


「だって、凄い良くて、何か、凄い、慣れてて」

「中古ならまぁ」


「新品なんです」

「あー、けどお前童貞だったんですよね?」


「ぅん」

「頭良さそうだし、見て覚えて、器用なだけじゃね?」


「なのかなぁ」

「いや知らんけど、あのさ、演技だったって見抜いてどうしたいの?」


「良くしたいに決まってるじゃないですか?」

「今までのが全て演技だったとしたらどうすんの」


「それは、多分、僕に気を遣ってくれて。最初も、向こうからで、もしかしたら見抜かれてて、こう、言い出せなくて悩んでた時に、こう、パクっと」

「ドエロ」


「そうなんですよもう、凄いエロくて、で、夢中でつい」


「童貞か」

「けど、でも、今は違いますし」


「そうだ、俺が童貞だったわ」


 でも、多分、経験は有るんだろうなぁ。

 いや、どうなんだろ。


「キョウさんって」

「女同士なら有る、男は無理、同性だし」


「百合」

「おう、百合な」


「こう、コツとかを教えて貰うのは」

「対価を差し出せい、金か美味い飯屋か、君らいつも何処で食ってんの?」


「昼以外は家ですけど」

「ハンナさんの?」


「うん、ユラが向こうの料理をせがんでは、家で」

「何で俺にも食わせないの?仲間じゃないの?試そうとしたのユラちゃんにもバラすよ?」


「いや、そこは」

「食わせるのか食わせないのか」


「食べさせますぅ」


 そして夕飯に招き、そのまま家に泊める事にもなった。

 ユラが許したのと、ハンナも許可したから。


 そして何よりも、白い、ユラと同じ位に真っ直ぐで良い人。

 しかも嘘が言えないのは本当みたいで、言おうとすると本気でフリーズしてた。


 アレちょっと不便そうだなと思う、無いだろうけど、戦闘中に起きたら困るだろうし。




「はぁ、すき焼き食えると思わなかったわぁ、最高かよ」

「お米の存在がチートですよねコレ」


「それな、やった事無いけどココって何かゲームの世界に似てるよね」

「あー、ゲームしなかったんですよね、不器用だし、声が有るの苦手でアニメもダメで」


 凄い和気藹々としちゃってる、警戒しない理由は分かるんだけど。

 何か、解せない。


「でも結構知ってるよね?」


「年取ってから、本と、ネットで」

「成程ね、じゃあ転移転生のプロじゃん」


「いや、でもユラが転生令嬢だとは思わなかったんですよねぇ」

「ユラちゃんが徐々なのも分かる、アレ絶対に一気に思い出したら脳が爆発しそうだし、知恵熱出そう」


 それはそう、うん、一定量超えると本当に熱出ちゃってたし。


「知恵熱って本当に有るんですかね?」


 あぁ、知らないんだ。

 そっか、部屋に来れなかったんだもんね、私がイジメられない様にって。


「知り合いの知り合いが16過ぎてもなってたって聞いたけど、周りには居なかったなぁ」

「じゃあユラが16までは気を付けないと」

《ココでは多いんですけどね、熱を出す原因が多いので》


「あ、キョウさん知りません?万能薬的な何か」

「それ俺も探したんだけど、表で聞かないんだよね。まぁ、有ったら世界を動かせそうだよねぇ」


「あー、そうなっちゃいますよねぇ」


「つかそんなに娼館行きたい?」

『アヤト』

「違う違う、確かに思い付いたのはそこだけど、本当に違うんだって」


 やっぱりハーレムしたいんじゃない、他としたいんじゃない。

 コレだから男は。


『う゛ー』

「だから違うんだってば」

「ユラちゃん犬みたいで可愛いねぇ」

《ユラの体の事も考え、万能薬は手に入れた方が良いかも知れませんね》


「え、有るの?」

「マジでゲームじゃん」

《ダンジョンの最深部に、存在しているそうです》


「絶対に強敵が出、あれ?」

「でもココでは」

《夜の女神に加護された国のダンジョン、だそうで》


「えー、魔獣地帯避けると竜が居るか、朝の女神の国か。俺でも竜から逃げるの流石に無理だよぉ」


「そこ、僕が加護を得ると、魔獣を聖獣に変化させられるんだよね」


「何で加護受けて無いの?」


「魅了系の加護なので、ハーレム化しそうなんで、先ず、制御出来る魔道具が無いかな、と」

《並行して探している最中なんです》

「加護を制御って、有るのかね?」


「最悪は、作ろうかと」

「そんな能力有るの?」


「いえ、僕には無いです」

「あぁ、錬金術師か魔道具職人を、落とす?」


「やっぱりそうなんですかね?」

「明らかにチュートリアルじゃん、必須って言うか得るのが大前提って感じ」


「けど嫌なんですよ、ハーレムとか絶対に揉めるじゃないですか」

「揉めないなら良いの?」


「それ屁理屈って言うんですからね?」

「いやでもだって揉めないなら良さそうな言い方だったじゃんか」


 うん、私にもそう聞こえた。


「いや、そこ、それで世界が完全に救えるなら良いですけど。兄が王になっても結局は悪者扱いされて殺されてるし、歴史って繰り返すし、相当のメリットが無いと」


「えー?聖獣にユラちゃん守って貰えて、他の女と試せるのに?」

「だーかーらー、他を試したいんじゃなくて、ハンナに良くなっ」

 

 その理由だけなら、そこは良い事なんだけど。


《あの、私に何か問題でも》

「え、話し続けるの?!」


《その、ソチラでは適正年齢か何かが存在しているのでしょうか?》

「あー、えー」

「女の子は月経が来る頃にって、けどココでは違うんだよね?」


《本人が理解出来るであろう時期に。襲われないとも限りませんので、そうした場合の対処も教えなければいけませんから》


「ユラ、意味は分かってる?」

『誰とでもしちゃいけない事の話』

「うん、分かってるね。で?」


「いや、僕としては何も問題は無いけど、問題が有っても気付けないから、そこ、問題が無いって確証が欲しい、知りたいだけで、ハンナ以外が良いとかじゃないんだ、本当」


《男性は雄しべと同じ、複数に種を撒く、花粉を撒く存在なんですが》

「そこからかぁ」

「ぅう、違うのに、本当」


 やっぱりハンナは環境もだろうけど、頭が良いと思う。

 私は漠然と結婚したいって思ってただけで、ココまで説明出来無かっただろうし。


 なのに、こんなアホに迫られたら嫌になるよね。

 何でも嫌って言う前に考える人だったし、きっと、多分そこまで考えて嫌になったのかもだし。


『男は、孕まないもんね』


「ユラ、だからじゃなくてね?」

『アヤトには王になる権利が有る』

「あ、そうだったわ、王太子様」

《ですので得ても良いとは思うんです、忠実な部下は必要でしょうから》


「もー、嫌だよ王様とか、絶対に嫌なんだってば」

「でも平和になるってなったら?」


「どうせ50年も続かないよ、教育からテコ入れしなきゃならないんだし」

「あー、確かに、読み書き出来無いの本当に不便」


「え?」

「あ、ココの文字ね、読めないし書けない」


「あー、言ってくれれば良かったのに、そっか、だからギルドに所属してないのか」

「覚える気が殆ど無いし、つるんで面倒が有っても嫌だなと思って」


「あー、帰るってなるとそうだよね、その分稼がないとだし」

「そうそう」


 じゃあ、教育さえ行き届いて、50年以上平和が続くなら。




『凄い平和が、ずっと続くなら、仕方無いと、思う』

「ユラぁ」

「賢い子だなぁ、よしよし」

《こう言ってらっしゃるんですし、少しは考えて頂いても良いのでは?》


「でも制御方法が出るまでは得ないからね」

「じゃあさ、期間を決めようよ」

『うん』


「うん?!お兄ちゃんの事がそんなに信用ならない?!」

『半分』

《お父上がハーレム形成者でしたからね》

「まぁ、半分っちゃ半分かぁ。じゃあ、よし、半年、春が明けたら移動するのはどう?」


『うん』

《では、そうしましょう》

「本当に、協力してよね?」

「するする、頑張ろ」


 彼は帰還とお金の為、アヤトは私とユラの為。

 このまま上手く行けば、アヤトが王位を継ぐとなれば、平和が叶う可能性は高いんですが。


『無理はしないでね』

「うん、安全第一」


「あ、避妊方法って」

《奴隷紋が健在ですので妊娠はしません》

『「えっ?」』


《ご案内が無かったですか?》

「無い無い、無かったよ」

「え、それでしてたの?」


「だってほら、子供が欲しくないのにするのって変じゃない?」


『アヤト、えらい』

「ユラ、信じてくれる?」


『うん』


 コレはちょっと、想定外と言うか。

 コレは、どう、すべきなんでしょうか。

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