第4話 自分のミライ

父の死から5年経った。今、高校2年生の11月、進路面談の真っ最中だ。高1からずっと担任の先生がわたしの進路調査書を見ている。わたしは緊張しながら先生の前に座り、反応を待っている。「理由が適当すぎる」最初にそう言われて、わたしは何かを見透かされたような気がした。わたしは料理の専門学校を第一希望にしていて、理由は料理が好きだから。自分でも適当すぎると薄々気づいていたし、専門学校に入学したからって具体的な人生プランができているわけでもなかった。「もう一度しっかり考えなさい」と言われ、その場をさり、家まで帰った。机に調査書を広げ、それらしい理由を考えていた。でも、何も浮かばない。なにか使えそうなエピソードがないか探してみる。きっかけはなんだっただろうか?考えていたとき、とっさに手が動いた。わたしはフルートをしまっている引き出しを開けていた。最後にフルートを吹いたのはいつだろう、葵さんが出張に行った半年前だろうか。学校の吹奏楽部と音楽教室には父が死んでしまうまで入っていたが、転校をきっかけにすべて辞めてしまい、家では葵さんが夜遅くまで仕事をしているので邪魔をしたくなくて葵さんが家にいない日に吹いている。

でも、いつのまにか勉強に疲れたらフルートを磨いてしまうという癖がつき、無駄に綺麗だった。それを見てなんとも言えない気持ちになった。

フルートの輝きが眩しすぎて…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る