第3話 葵さん

入院をきっかけにわたしは葵さんの家に住むことになった。葵さんは仕事人間で結婚もしていなかったが、迷わずわたしを引き取ることを承諾してくれた。お弁当もできる限り作ってくれたり、体調が悪くなった時は早く仕事を切り上げてくれたり、わたしの人生をもってしても感謝しきれないぐらいの恩ができてしまった。

毎週土曜日、葵さんはわたしを母のいる病院に連れてってくれた。母はとてもやせ細り、手の骨がはっきりと見えるほど衰えていた。わたしが訪れると一瞬だけわたしを見て、目をそらす。わたしが大好きだった母の面影も笑顔ももうない。

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