メリケンに上陸!

こんな船が作れるメリケンとは、いったいどんな国なのか。

そして、もっともっと異国の言葉を話せるようになりたい!


俺は、うぃりあん船長に、片言の英語えんげるすでお願いした。

メリケンに行きたいと。



俺の願いは船長に通じた。


俺は4人の仲間と別れ、引き続き船に残り、異国であるメリケンに向かう人生を選んだ。


船長は、英語えんげるすを一生懸命覚えようとする俺のことを気に入ってくれた。

俺は、そんな船長から言葉だけではなく、クジラの捕まえ方や、船の動かし方も教えてもらった。


* * * * * * *


船はマサチューセッツの港に着いた。


俺はメリケンに上陸を果たした。

そして、異国の地での生活が始まった。


船長は、俺を養子にしてくれた。

そして、学校にも通わせてくれた。

そのおかげで、俺はだいぶん、英語えんげるすを話せるようになった。

日本にいたときは、ろくに寺子屋にも通っていなかったので、読み書きもたいしてできなかった俺だったが、今では異国の言葉を読んだり書いたりできるようになった。

そして、俺が学んだのは、英語だけではない。


学校では、いろんなことを教えてくれた。

数学、測量、航海術、造船技術……

俺は勉強が楽しくて楽しくて仕方がなかった。

船長も、そんな俺の頑張りを見て、いつも喜んでくれていた。

俺は、ついにアカデミーの主席となった。


東洋から来た黄色い猿ヤロマンキが学校で一番の成績を収めた。

これは、メリケンの子どもたちから見れば、とても悔しいことのようだった。


俺はいつも、その容姿をバカにされ続けてきた。


しかし、船長とその家族は、いつも俺を守ってくれた。


メリケンでの生活は充実していた。

ずっとこのまま、異国の地で暮らしてもよい、とも思った。


しかし、ハワイで別れた仲間たちのことも気になってきた。

いつか、ハワイに行って仲間と再会したい。

そう思ったが、さすがに私情でハワイに行かせてもらうわけにも行かなかった。

海を渡るにはお金が必要だ。

俺は、金が掘れるというサンフランシスコへと向かった。

ゴールドラッシュと言って、多くの若者が金山で働いていたのだった。

俺も、その中に混じって、数カ月間、金を掘る仕事をした。


なんとか、お金を貯めることができた俺は、養父である船長と別れ、仲間と再会するためにハワイに渡った。

太平洋で拾ってきた異国人である俺を養子にし、高度な教育を受けさせたうぃりあん船長は、マサチューセッツの名士となった。

そして、うぃりあん船長はなんと、州の議員となったのだった。


俺は稼いだ金でハワイに渡り、かつての漁師仲間との再会を果たした。

しかし、残念なことに1人は病で亡くなっていた。


日本に帰ろう。


俺たち4人は、日本への帰国を考えた。

しかし、1人は日本に帰らず、ハワイに残ると言い出した。

さみしい気もするが、やつにはやつの人生がある。

メリケンは一人一人の思いがたいせつにされる国だ。

それに習い、俺たちもやつの気持ちを尊重することにした。


日本への帰国作戦は、3人で行うことにした。


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