自救行為の禁止

俺にはまったく意味が分からなかった。

俺は窃盗の被害者なのだ。

なのに、なぜ俺が窃盗罪になるんだ?


警察官は言った。


「盗まれたものを自分で取り返すと、取り返した方も窃盗罪になるんだよ」


「これは俺の自転車です。取り返して何が悪いんですか? 悪いのは盗んだ方でしょ?!」


俺はムキになって言い返した。


「まあ、そうなんだけどね。もちろん、盗んだ人は窃盗罪だ。でもね、盗まれたものを自分で取り返すと、それも窃盗罪になるんだよ」


「そんなわけないじゃないですか!」


「あのね、あなたがやっていることは自救行為といってね、認められない行為なんだよ」


「じゃあ、どうすればいいんですか?」


「物が盗まれたときは、警察に被害届を出すんだよ。盗まれた物は、警察の力で取り返せば問題ない」


「なんだよ、それ! 理不尽だろ!!」


「まあ、ともかく、このままではキミを逮捕しないといけない。大人しく、その自転車を元あった場所に戻してください」



俺は腹が立った。

が、この面倒くさい警察官に何をどう言ったところで、融通をきかせてくれることはなさそうだ。

不本意ながらも、俺は自分の自転車を、犯人のアパートの駐輪場に戻した。


まぁ、実を言うと次の日、近くに警察官がいないのを見計らい、自分の自転車をこっそり取り返したんだけどね。


しっかし、日本の警察はいったいどうなってんだ?

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