猫と金魚
文重
猫と金魚
猫は優美に泳ぐ金魚に恋い焦がれていました。その背びれに、胸びれに触れてみたくて、何度も水の中に手を突っ込みましたが、そのたびに金魚はぴくんと体を震わせて遠くへ泳いでいってしまうのでした。
飼い主夫婦の幼い娘が金魚を飼いたいと言い出した時、夫婦はもちろん反対しました。一家にはすでに1匹の猫がいたからです。けれども水槽がある部屋を閉め切りにするならばと、ついに両親は娘の懇願に根負けしたのでした。
人間は猫の知能と身体能力を甘く見ていました。家族が留守の時、猫はノブに飛びついてドアを開け、水槽の金魚に熱い視線を送っていたのです。
床に放り出された金魚を見て、やっと会えたと猫は喜びました。数日にわたる練習が実り、棚の上からジャンプして水槽を横倒しにした成果でしたが、予想に反して金魚はこの邂逅を全く歓迎していないようでした。
帰宅した家族の悲鳴が響き渡る中、その場に残されていたのは猫の空虚な恋心だけでした。
猫と金魚 文重 @fumie0107
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます