第18話

焦った。ここ最近で一番焦った。屋敷が荒らされていたからだ。

屋敷の中に血の跡がないのを安心して、俺は思い出す。


(今回は、青か。)


赤、青、黄色、緑。

俺たち家族はこう呼んでいる隠れ家がある。

基本4つとも地下にあるが。

非常事態の場合、事前にどこの隠れ家に避難するか決めている。

転移の魔石をみんなに持たせているので、使って避難したのだろう。


俺は数時間かけて、青の隠れ家につき、近場の石をノックする。


「おっぱい、飲みたい、触りたい。バブー、バブー。」


(合言葉を話すと)


ガコン!!


近場の地面が少し浮く、俺はこれを持ち上げて中に入る。

俺は蝋燭による薄暗い暗闇の中,階段を降りる。

だんだん、明るい場所が近づいてきた。


「エド君!!」


「うおっ!」


ミーサにすごい勢いで抱きつかれて、転びそうになる。


「大丈夫か、ミーサ?」


いつもは、色気たっぷり大人のお姉さんなミーサは俺の名前を連呼しながら泣くばかりだ。


「とりあえず、座ろう。」


俺は他3人が座っている、ベッドにミーサをお姫様抱っこして、運ぶ。


「ミーサがこんなになるってことは、夜に襲われたのか?」


「そうね。寝てる時だったわ。」


ミーサは、昔、リーサを産んですぐ、夫が亡くなった。

ミーサによると、夫は村長の息子に殺されたらしい。村長の息子に求婚されていたが、断り続けて幼馴染と結婚したのだ。

それで恨みを買ったと。


そして、夫が亡くなってから、ある日の夜。

村長の息子は男数人を引き連れて、ミーサを襲いにきた。

ミーサはこれを覚悟していたらしく、大人しく犯されようとした。

しかし、村長の息子は赤ん坊のリーサの存在を許せなかったのか、リーサを殺そうとした。

これが、ミーサにとっては耐え難かった。リーサを失った時の自分の心がどうなるか恐ろしくなって、ミーサを必死に守った。


その時に運よく、ゴブリンの群れが現れて、男たちが戦っている間にリーサを連れて逃げた。

イリオスの街にやっとの思いで、到着して、自分とリーサを奴隷として売った。

自分と娘を一緒に買い上げることを条件にして。

ミーサ走っていたのだ。赤ん坊がいる田舎者の女が都会に来てつける仕事の過酷さと。その仕事に自分が就いた時のリーサの将来を。

だから、賭けた。期限は1年、自分の値段を高く設定し、まともな奴隷主に出会うように。


だから、ミーサは夜に襲われるのが怖くてしょうがない。


「そうか、とりあず、ミーサが落ち着くまで待つか。」


「そうね。」


しばらく待つと、ミーサは泣き疲れて、寝てしまった。


「精霊の雫か?」


「多分ね。詳しいことはザングラッド侯爵に聞いてみるしかないわ。」


「そうだな。とりあえず、事態が収集するまでここにいてくれないか。」


「長くなりそうね。」


「悪いな。」


「しょうがないわよ。」


「それと、怖い思いをさせたな。」


「うん。」


すでにリッカと、リーサは寝ていたから、俺は、エリシアが寝るまで頭を撫でた。


ーーーーー翌朝


俺は一番最初に目を覚まし、出発の準備をしていた。


「エド君、行っちゃうの?」


「起きたのか、ミーサ。なるべく、早く終わらせたいからな。」


「もうちょっとそばにいてほしいな。」


「いいよ。」


俺はミーサの隣に座る。ミーサは俺に体重を預けてきた。

俺はミーサに長い紫色の入った黒髪を撫でる。


「私ね、エド君のこと弟だと思ってたの。」


「確かに、そういう節はあったな。」


「女の子みたいな顔してるし、甘えん坊だから。」


「そうだな。よく言われる。」


「でもね、昨日エド君が帰ってきて、すごく安心したの。その時、思ったんだ。

もう私にとって、エド君は頼る相手なんだって。」


「うん。」


「身長大きくなったね。」


「ミーサと同じくらいか?」


「顔もカッコ良くなったね。」


「それは、リッカからよく言われる。」


「体も筋肉質になったね。」


「鍛えてるからな。」


「エド君、私怖いの。怖くてしょうがないの。」


「知ってる。」


「だから────」


俺はミーサに手を引かれて、俺の手はミーサの頭の横に置かれ、俺がミーサを押し倒した形となった。


「───優しくして。」


ミーサが俺に初めて見せる女の顔。


「任せろ。」


抱いた。無茶苦茶抱いた。途中で起きてきたリッカとエリシアも含めて、気絶するまで抱いた。


ーーーーー


「パパ行っちゃうの?」


「ごめんなリーサ。またお留守番させちゃって。」


「うん。」


「ママ達のいうことちゃんと聞くんだぞ。」


「うん。」



「ママ達は騎士ごっこして疲れてるから、起こしちゃダメだぞ。」


「うん。」


「今度、一緒に絵本買いに行こうな」


「うん!!!」


「行ってきます。」


「行ってらっしゃい!!」


俺は出発した。コソ泥を皆殺しにするため。




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