第177話 学園祭 その2③
毎週月曜日に開かれる全校集会。
翠から電話で聞いてたけど、バスケ部が男女揃って地区大会で優勝した。ステージ上にはバスケ部員が男女勢揃いしている。
しかし皆大きい。真壁君は前髪を下ろしているからインパクトは薄いがそれでもカッコよさは滲み出ている。柳生君もそれなりだし……ま、残念ながら誰の筋肉も私に語りかけては来なかった。
——— 学園長が労いの言葉をかけている。
“パチパチパチパチパチパチ……
校長の長い話しが終わったようだ。
体育館に拍手が響く。
ステージにいるイケメン二人を見てだろうか。
女子が小声でキャッキャ言ってるけど、真壁君は翠の
集会が終わって教室へ移動中だ。
私は一人で歩いていた。常に翠と芹葉が一緒というわけでは無い。
翠と芹葉は少し離れたところを歩いている。
周りから色んな話声が聞こえてくるが、一つ気になる話が聞こえて来た。
「あの後ろに並んでた、メガネかけた子が真壁君の彼女なんでしょ?」
「らしいね」
「通学の電車一緒だけど、毎朝ベッタリだよ」
「真壁君、付き纏われてんじゃ無いの?」
「どうだろう? 嫌がってはいないみたいだけど」
「でも、不釣り合いだよね」
「あ、そうだ! そういえば噂聞いた? なんか、その彼女、ミスコンに出るらしいよ」
「マジで? 身の程知らずにも程があるって」
「優勝出来なかったら、真壁君と別れるって言ってるみたい」
ん? 噂に尾鰭は付きものだけど、そっちに尾鰭が付いたのね?
「何、その話」
「なんか、2-Cのあの『
「あー、完全に終わったね」
「それじゃあ、別れるの確定じゃん!」
「彼女ら学園一のオシャレさん達だもんなぁ」
彼女ら学園一のオシャレさんって、そんなポジションだったの?
しかし、『三崎一派』って……ウケるわ。
確かに、
その価値観、持ち合わせていない私には無駄な努力にしか見えないけど……。
やっぱ、向ける努力は筋肉よ。
私も
※ ※ ※
今日の放課後から翠と芹葉が、本格的に手伝ってくれる事になっている。
と言っても、先週はまだ企画の詳細を決めたり、仕入れの手続きとか、事務的な仕事がメインだったから、一部の人にしか、仕事、お願いしてなかったんだよね。
でも、今日からクラス総出で本格的に準備開始だ。
——— その前に……
「翠に別件でお願いしたい事あるんだけど、前バイトした店の店長にさ ———」
私はちょっと懸念していた事があったので、その解消の為、翠にしか出来ない事をお願いした。
「——— 分かった、確認してみるよ。確かに不安だね」
※ ※ ※
——— 放課後。
「桜木さんはこれお願い」
「オッケー」
文化祭の準備で皆それぞれ担当になった仕事をしている。
私は一人でカレー屋の内装を飾る装飾品を作っていた。宗介は流星君と別のところで作業中だ。
最近、宗介との関係で、周りから色々噂されるようになっているのは知っている。
態々、私に聞こえるように話している人もいるしね。
噂の内容は、宗介との関係についてだ。
「何で付き合えてるんだ?」「不釣り合いだ」
この程度の声であれば個人の感想だ。正直、どうでも良い。
「宗介が嫌がっている」なんて、根も葉も無いものも有る。
これはちょっと頂けない。
そんな噂を聞いて心配になったのか、滝沢さんが私のところに来た。
「桜木さん大丈夫なの? なんか色々噂されてるけど……ミスコンだって、深川さんと江藤さんも煽ってたし……」
「大丈夫。それは心配無いよ。ありがと」
「負けたら彼氏と別れるまで言われてるんでしょ?」
すると芹葉がやって来た。
「何の話ししてんの?」
「滝沢さんが私の事心配してくれて……」
「だったら写真見せたら? 滝沢さんには教えないと……ね?」
「…………そだね」
私は周りを見て、誰もこっちを見ていない事を確認した。
「えーっと……今から話す事と見せる事は絶対内緒でお願いします。まずは両手で口を押さえて下さい」
「押さえるの?」
「うん。絶対声出ちゃうから」
「分かった」
彼女は両手で声が出ないように抑えた。
「まずは妹がお世話になってます」
私は頭を深く下げた。
「?」
当然、気付いて無い。
「桜木藍。私の妹ね」
「…………ン——— !」
少し間があってやっぱり声が出た。
「え? マジ?」
「うん。ほら写真もあるよ」
私は皆で撮った写真を見せた。勿論、廉斗君も写ってる。
「…………ホントだ。弟もいるし藍ちゃんもいる……あれ? 奈々菜ちゃんと……謎のカップルって、真壁君と……ん? 真壁?」
「両手口で押さえて」
「……ん」
「奈々菜ちゃんのお兄ちゃんが真壁宗介ね」
「…………ン——— !」
再び声が出た。
「御免なさい。色々訳あって内緒にしてたの。理由は藍と廉斗君に聞いて」
「うん。分かったけど……さっきの写真、もう一回見せて」
「はい」
「真壁君は分かった。で、この真壁君とよく目撃されてる女の子もいるけど……」
「両手口で押さえて」
「……ん」
「それが私」
「……………」
あれ? 声が出なかった。
滝沢さんは手を離してちょっと怒り気味だ。
「ちょっと、全然違うでしょ。髪も違うし……」
そう言って彼女は私の顔を覗き込む。
私は少し前髪を上げた。すると、
「!」
滝沢さんは目を大きく見開いた。
「え? 何? なんで?」
「えへへ、理由は藍から聞いてね。廉斗君も知ってるから」
そして小声で話し始めた。
滝沢さんは何か考え事をしている。
私は無言で自分を指差す。
私は無言で頷く。そして私は滝沢さんに感謝した。
「色々、心配してくれて有難う」
「深川さんと江藤さんが自信満々なのも分かったよ。って言うか、これ出しちゃうんだね?」
滝沢さんは私の写真を指差す。
「目立たない事が目的で変装してたけど、今、目立ちまくってるし、病気も克服出来たから隠す必要無くなったんだよ。だからもう、変装いらないなって」
滝沢さんは芹葉を見た。
「江藤さんが、三崎さんとのやりとりで、土下座してまで絶対出場しないって全力で拒んだ理由も分かったよ。これ、今度は三崎さん達が心配になって来た」
「分かった? 出るだけ無駄でしょ。って言うより、翠がコンテスト出たら、全員公開処刑だからね」
「酷いなー、その言い方」
「クィーン取ったら次回以降の出場権無しってルールあって良かったね。じゃなきゃ来年のコンテスト翠が出ても出なくても出た人道化確定だったよ」
「でも滝沢さん優しいね。あの子達の事まで心配するなんて」
「だってこのままじゃ大事故でしょ。私多分、居た堪れなくなって、彼女達の事見てらんなくなりそう」
「別にいいんじゃない? 彼女ら翠に赤っ恥掻かせようってんだから、自分ら恥掻けばブーメランだ。文句は言えないよ」
「深川さんって結構怖いね」
「芹葉は怖い」
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