第170話 ウィンターカップ予選①
中間テストが終わり、早速、
時間的には学園祭の準備が先に始まるが、学園祭の話が途中で途切れるので、最初にウィンターカップ予選の話をする。
予選は、金曜日から日曜日までの三日間行われる。
出場校は全部で十六校だ。
初日は一回戦のみ。
二日目で準々決勝。
三日目で準決勝と決勝が行われる。
俺達は大会会場に来ていた。
会場は三カ所あるが、開会式は一カ所で行われる。
俺達は、男子と女子共に同じ会場にいた。
「みんな大きい……」
「俺の背が標準的な部類だな」
周りを見渡していると、後輩が俺に話しかけてきた。
「真壁先輩、皆の……特に女子の注目浴びてるっすね」
「そうだな。俺の日常はこんな感じだ。これが嫌で顔隠してたんだけどな」
「流石にきついっすね」
翠が、俺の腕に絡みついてきた。
「宗介は私のものー。誰にもあげないよ!」
「桜木先輩、ここでイチャつくのはちょっと……」
「うるさい。今、マーキング中!」
「ははは……」
※ ※ ※
開会式が終わり、私達は第三会場となる体育館へ移動した。
私は男子バスケの方に同行だ。この会場は男子のみの試合しか行わない。なので女の子はマネージャーしかいないようだ。
「男しか居ないと楽だな」
「折角マーキングしたのに……」
コートは二面あり、二試合同時に行われる。
「第一試合は何処とだ?」
「森宮第一だって」
「どんなチームだ?」
宗介に聞かれ私はノートをパラパラ捲った。各学校の基本情報が載っているノートだ。
攻守の型とか特徴など、学校毎にスタイルがあるけど、そのスタイルは昔からあまり変わらなかったりする。なので、このノートは代々受け継がれて来たファイルだったりするのだ。結構年期が入ってる。
因みにうちの学校は、守りに重点を置くスタイルだったんだけど、せいぜい二回戦進出が関の山の弱小校だったのだが、昨年からスタイルを変え、全国区のチームにのし上がった。
今回の大会は夏の成績がマグレと思われない為にも大事な大会でもあった。
「森宮第一は……パス&ラン……スピード重視の学校みたいだね。去年は…ベスト8か……」
「強そうだな。うちはゾーンで守るのかな?」
試合前のミーティングで部長から作戦が伝えられた。
因みに監督は名ばかりの監督なので、あまり当てにはしていない。単なる引率の先生だね。
「流星、ボール持ったら自由な」
「へ?」
「好きにやれ」
「はぁ…」
「ディフェンスは、2-3のゾーンがベースな。ボールカットしたら真壁にボール出せ。真壁は走れ」
「「「うっす」」」
この作戦、宗介の負担大き過ぎない?
「あと、真壁、初っ端ダンクで威嚇宜しく」
「マジすか? まぁ、やるだけやってみます」
宗介は困ったような返事をしているが、目はギラギラしている。
初っ端、全力でカマすつもりだ。
選手が整列だ。
身長差はほぼ無し。
相手は何となく余裕の表情だ。
ジャンプボール、ジャンパーは柳生君だ。
ボールは早速、宗介の元へ渡った。
ボールを持った宗介は、ロールターンで後ろにいたマークを交わすと、そのまま走り込み、フリースローラインを一歩越えたところからジャンプした。
——— “ガジャン!”
部長の指示通りダンクを決めた。
「「「おおおおぉぉぉぉぉーーー!」」」
「何だ今の!」
「めちゃくちゃ飛んでたぞ!」
「エアウォークか?」
「しかもイケメンだぞ!」
試合は序盤から、
「4番にボール持たせるな! 読めない場所にパスが来るぞ!」
「7番、ダブルで当たれ! 他をフリーにしてもいい! 兎に角止めろ!」
一人がフリーになれば、そこは見逃さない柳生君。
そこにパスを出せば、受けた者はゆっくりシュートが出来る。
そして柳生君は、ダブルチームもお構い無しに宗介にパスを出してくる。
受けた宗介も、マークお構い無しで、あらゆるドリブルの技を駆使して、マークを躱して中に切れ込む。
——— 終わってみれば、112対42のダブルスコアで勝利した。
「お疲れ宗介。はい、タオル」
「桜木ぃ、真壁専属はダメだって言ったろぉ」
「あ、そうだった」
「部長、桜木先輩は真壁先輩のやる気スイッチらしいっすから良いんじゃないすか」
「後輩君分かってるね」
「ま、今に始まった事じゃねぇからいっか」
「何だ? 森宮第一はこんなチャラチャラしたチームに負けたのかよ」
頭の上から声がしたのでそのまま上を見て仰け反った。
身長2mはありそうな大きな男が二人後ろに立っていた。
少し離れたところに数人立っていたが、その人達も、一番身長が低い人で柳生君と同じ位か?
どうやら、次の対戦校「
※ ※ ※
——— 大会二日目。
今日の会場は第二会場だ。
女子の試合も行われる。
昨日は女子も勝ち上がった。
女子バスケ部も今日は同じ会場だから、芹葉も一緒に行動している。
会場迄は学校のバスで来ているのだが、バスから降りると、宗介に気が付いた子がキャーキャー言い始め、会場の入り口に着く頃には、女の子ほぼ全員が宗介に目を奪われていた。
流石に我が新川学園の子は、もう見慣れたので誰も魅入っていない。
私が宗介にベタついているのも、既に見慣れた光景だ。
私は「私が彼女だ」ってみんなにアピールしながら移動した。
「おいおい、そんなにくっついて歩かれるとちょっと歩きにくいぞ」
「いいじゃん。一応、宗介の彼女アピール」
「いやいや、誰も俺んとこに声掛けに来たりしないって」
「分かんないよ? 過去に何回声掛けられた?」
「……二回?」
「正解。プールと銅像前ね。積極的な子は積極的だから積極的に声掛けてくるの。だから黙って腕掴ませろ」
「はは、分かったよ」
会場に荷物を置くと宗介は柳生君とトイレに行った。
※ ※ ※
「しかし、プールといい祭りといい、相変わらずお前に集まる視線はひでぇな」
「まぁ、通常運転だな」
「随分と余裕あるな」
「翠のお陰……かな? 前向きってやつだ」
俺と流星は用を済ませて手を洗う。
「そう言えば次の対戦相手の『
「一言で『デカい』だな」
「まんまだな」
「まんまだ。欠点は動きが少し遅め。って位か?」
「何その『少し』ってなんだ?」
「デカいから遅そうに見えるってだけで、実はそうでもないって感じだな」
「去年の成績は?」
流星は無言で、指を四本立てた。
スポーツ系の物語の基本は、トイレに行くと対戦相手がいて、主人公と対戦相手のエースっぽいのが、互いに火花を散らすというイベントが発生するもんだが、この物語は『イケメンと美少女が……』って話だ。
そんなイベントあるわけが無い。
トイレで用を済ませた俺達が会場に戻ると、主人公じゃなくて、部長がイベントを発生させていた。
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