第五章 真壁宗介と桜木翠
第167話 バスケ部①
―――ホームルームが終わり、下校時間になった。
「翠ー、帰るぞー」
初めて宗介がCクラスの教室に顔を出した。
いつもなら、晴れてるなら校門で、雨がふってるなら昇降口で待ち合わせしている。
今日は、教室に直接迎えに来てくれた。当然だが教室内が騒然となった。
―――宗介は教室に入ってきた。
「宗介どうしたの?」
「翠の彼氏アピールにきた」
「何それ」
宗介の後ろから江藤さんの声がした。何故か江藤さんも一緒に教室に入って来た。
「芹葉ー」
「あれ? 流星君までどうしたの? 珍しい」
「芹葉の彼氏アピール」
「何、真似してんの!」
私達の会話を周りの人達は刮目している感じだ。
私達五人は教室を後にした。今日は部活が無い。このまま駅まで皆で歩いた。
こうして五人で歩くのは初めてだ。
日もまだ高く、かなり注目を浴びている。
「しかし、アイツらのせいで宗介が顔出す事になるとは思わなかったぞ」
「俺も。まさかお前の後輩の事でキレるとは思わなかった」
「あれは誰でも怒るよ」
「そうだね。私も怒ったもん」
「正直、聞いてて反吐出たわ。アレは外出しちゃダメだ。学園の品性問われるわ」
「しかしお前のその形も意味成さなくなったな」
「いや、そうでも無いぞ。少なくとも見惚れる奴は居ない」
※ ※ ※
――― 私達はマンションに着いた。
私は、宗介の部屋に居る。
「宗介、髪、切ったら?」
「えぇ? 何で?」
「前から思ってたけど、顔隠れれば良いんだよね?」
「あぁ」
「襟足まで伸ばす必要ってある?」
「…………無い」
「前髪だけ目元らへんまであれば十分でしょ?」
「確かに」
「で、いざとなればカチューシャで止めればいいし、運動する時はジョギングと一緒でヘアバンドでオールオッケー」
「そうだよな? 何で今迄後ろも伸ばしてたんだ?」
「…………バカだから?」
「…………そうだな」
「それじゃあ切ってやるよ」
「お前が?」
「おう! 一応、自分のも自分で切ってたりするんだよ」
「器用だな……」
「お父さんのも私が切ってる」
「んじゃ頼むかな」
「毎度ありぃ!」
「え? 金取んの?」
「んーん、体で払って貰う」
「…………先払いでダメか?」
「…………そだね。誰も居ないし……」
——— まぁ、そんな感じで結構頻繁にシッポリやってたりする訳で……事が済んで私は一旦、自分の部屋に戻り、散髪用のハサミと櫛を持ってきた。
足下に新聞紙を敷き、首にタオルを巻いて、髪の毛を切っていった。
「―――どう?」
「いいね。 最初、ワンレン風前下がりボブにされた時はちょっと焦ったぞ」
「結構似合ってたね。なんか美人だった」
「ちょっと翠っぽいなって思ったりしたな」
「やっぱ私ら似てんだね」
「二卵性の男女の双子って感じか?」
「実は双子?」
「誕生日同じだし……まさか!」
「って、親の血液型で違うって分かったじゃん」
「どれ。んじゃ髪洗って来るわ」
「そのままシャワー浴びたら?」
「一緒に入るか?」
「んー……うん♡」
奈々菜ちゃんは翔馬君の家に行ってるし、時間もまだまだ余裕があったので手短にシャワー浴びながら第二ラウンド開始だ。
細かい描写は割愛だよ。生々しくなり過ぎるから自主規制掛けてるって誰かが言ってた。
※ ※ ※
――― 一夜明けて。
「お兄ちゃんサッパリしたよね。サッパリしたお兄ちゃん久々に見るよ」
「―――頭が軽い」
「昨日、中等部でもちょっとした騒ぎになってたよ」
「なんて?」
「『イケメンが正体隠して学校に潜入してた』って」
「―――何だその『潜入』って」
「そういや、俺と翠、廉斗君のお姉さんと接触したぞ」
「そうなの?」
「勿論、素性は教えてないけどな。翠は仲良くなったみたいだな」
「そのうち……かな?」
「だな」
——— 駅のホームに立つ。朝から俺に注目が集まる。視線をくれるのは専ら学園の生徒だけだ。俺は前髪で顔は隠している。なので見惚れたりはされないが、隠したものは見たくなるって心理が働いてるようだ。皆結構ジロジロ見てくる。
出せば見惚れられ……八方塞がりだな。
――― 電車を降りて翠と二人で改札口付近に立ち、流星達の到着を待つ。
流星達が乗っている電車が到着した。
降りて来た乗客の学園の生徒は俺達の前を通る時、結構な奴が俺に視線を送ってから通り過ぎていった。
「お待たせー」
「うーっす」
翠はいつものように、三人で歩き始めた。俺は流星と二人で歩く。
―――しかし、改めて思うが、俺と流星は背がでかい。目立つ。しかも流星はイケメンだ。尚のこと目立つ。
そのせいか、前を歩く女子がチョイチョイ振り返っては渦中の俺と流星を見る。
時折「キャッ!」って悲鳴が上がる。どうやら振り返って、誰かとぶつかったり、転んだリしている子がいるようだ。気をつけて欲しい。
「髪、サッパリしたな」
「後ろだけな」
「美容院か」
「翠だ」
「マジか。アイツ料理だけじゃなくて三発も出来んのか?」
「お前、漢字間違ってるし、打つ奴も間違ってるぞ。しかも珍しく下ネタ言ったと思ったら朝からなんてダイナミックだな」
「偶には言いたくもなる」
「何だ? やったか?」
「あぁ……」
「マジか!」
「……腕組んだ」
「あらっ何だよ腕かよ」
「お前舐めんなよ。いいか? 肘だ。肘がぽよよんって感触で妊娠すんだぞ!」
「だから話飛びすぎだって。大体ゴムすりゃ大丈夫だろ」
「バカヤロー。ゴムする間も無くこう……ガバッとだな……」
「お前、どんだけ飢えてんだ? 大丈夫だって。付ける余裕なんて全然あるから」
「何だ? お前随分とこう……説得力が……あー! お前まさか!」
「『まさか』なんだ?」
「や、や……」
「フッ……」
「スゲー……何その余裕」
「お前だって彼女いるんだ。居ない奴よりは全然こっち側に立ってるだろ」
「いや、そうかも知んないけどさ、でもその一線って……」
「この道を行けばどうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし 踏み出せばその一足が道となり その一足が道となる 迷わず行けよ 行けばわかるさ」
「一休禅師か……よし! 俺も迷わず行くぞ!」
「その前にゴム買えよ」
「おう!」
朝から変なテンションになった。
※ ※ ※
――― 教室に入った。
「うーっす」
江藤さんが先に教室に入り、流星はいつものように誰とは無い挨拶をして教室に入る。そしてその後に俺が入った。
すると、クラス中の視線が俺に集まった。俺はそのまま自分の席へ移動するが、目線が俺を追いかけてくる。
前髪で顔を隠しているが、それが余計に気になるようだ。ま、体育の時は上げるけどな。
席に座ると女子が俺に話しかけて来た。
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