第175話 学園祭 その2①

 話はウィンターカップの予選前に戻る ——— 。


 期末テスト(十月期)が終わると学園祭の準備が始まる。

 2クラスで一つの出し物をする。よってCクラスとDクラスが合同だ。

 そして今、HRで一つの教室に集まりクラスの出し物を決めている。

 実行委員は、Cクラスからは男子が。Dクラスからは来羅が引き受けた。

 最初に立候補したのは来羅だ。クラスマッチの時も実行委員になったって言ってたけど、彼女は結構こういう行事に率先して参加するのが好きなようだ。

 Cクラスの男子は、来羅が委員に決った直後、下心有り有りで自ら立候補してきた。尤も、筋肉が無いので来羅は見向きもしない。

 私と芹葉は来羅の手伝いをしようと思ったが、文化祭の前の週にはバスケットボールのウィンターカップ予選大会がある。なので大会が終わったら集中して手伝おうと考えていた。

 そしてクラスの出し物についてだが、進行は来羅がメインで進めていた。


「他、何かある?」


 既に幾つか案が出ている。

 出た案は次のとおりだ。


 ・ただの喫茶店

 ・メイドカフェ

 ・執事カフェ

 ・BL漫画喫茶(一部ギャルズ達も推すが却下)

 ・カレー屋(レトルト)

 ・絵画展(集まれ画伯)

 ・お化け屋敷

 ・ゾンビ屋敷

 ・劇(体育館)

 ・動画上映(短編で何か作る)

 ・漫才小屋

 ・占いの館

 ・コスプレカフェ


「この中から、案を3つ出してね。ここで決った案を、実行委員会で各クラスの案を確認します。出し物の被りは二つまでってルールだから、どっかのクラスと出し物が三つ被ったらくじ引き。本命が駄目だったら二案目が採用ね。でも、二案目も被る可能性有るから、念のため三案準備します。宜しく」


 開口一番、ギャル子(黒髪系)が口を開いた。


「やっぱ、うちのクラス、学校一、二を争う美少女二人とイケメン二人いるわけじゃん。この四人全面に出してなんかしたいよね」

「だよねー。深川さん、江藤さん、いいよね?」

「え? 私達なの?」

「他に誰がいるの?」


 芹葉はビックリしている。来羅は呆れ顔だ。

 皆散々美少女って言ってきたのに、芹葉はまだ受け入れて無いようだ。


「私達を全面に出すなら、翠も出さないと」


 芹葉は私の方を見る。

 私はまだウィッグ付けてる事を忘れてるようだ。


「深川さん……いくら最近仲良しだからって冗談は言わないで。桜木が美少女なわけ無いし!」


 私に敬称は付かないらしい。彼女らの名前の呼び方の基準は自分らより可愛いか否かって事かな?


「私もそう思うよ。うん」


 私も同意しながら、芹葉に向けてメッセージを送った。

 芹葉は「あっ!」って顔をして、口に手を当てた。

 相変わらずうっかりさんだ。


「いいんじゃない? 桜木も一緒で」


 ギャル子の一人がニヤニヤしながら、なんか話し始めた。


「最近、この三人仲いいじゃん。深川さんと江藤さんはともかく、桜木もイケてる女の子なんでしょ? いいんじゃない? 三人全面に出して。あと、私達もフォローするからさ」


 そう言いながら、他のギャル子達に目配せをし始めニヤニヤしている。

 他のギャル子達も意図する事が伝わったらしい。

 最初のギャル子に同意し始めた。


「そうだね、桜木も深川さん達と一緒にやれば良いじゃん」


 やれば良いじゃんって、何やんの?

 ギャル子達はニヤニヤしている。

 私を嵌めた気でいるのかな?

 取り敢えずここは同意しといた。


「なんか気乗りしないなぁ……うーん……分かった。いいよ、芹葉と来羅が一緒なら」

「いいの翠?」


 来羅は頭を触りながら私に

 私も、に答えた。


「うん、かな?って」

「翠がそう言うなら……で、みんな何やるの?」

「「「「 メイドカフェ! 」」」」


 結局、保健所の許可の関係や、仕入れの都合、火の取り扱いの制約から、「執事&メイドカフェ(カレー屋さん)」を本命に、「劇」「お化け屋敷」となった。

 結果、「カレー屋さん」なら、被り無しという事で、C、Dクラスの出し物が決った。


 出し物が決定した後日、「衣装は私が準備するよ」とギャル子の一人が申し出てきた。

 完全に何かを企んでいるのが伝わっ来たが、ま、どうでもいいや。

 せいぜい、ダサダサな衣装を選んでくるか、衣装に何か細工するか程度でしょ。



 ※  ※  ※



 ——— 夜、宗介の部屋。

 言わなずも普通にまったり中だ。


「カレー屋さんで執事とメイドって、ただのウェイターでいいじゃんって思うんだけど……」

「今更メイドカフェか……需要あんの?」

「普通にギャルソンエプロン腰に付けただけで皆カッコよくなると思うんだけどな」

「内容決めたあのギャル子グループのセンスなんだろ」

「私も前面に出すって言ってたけど、ウィッグ外すきっかけにはいいかな?」

「大丈夫なのか?」

「うん。病気の方はもう完治って先生に言われてるから、あとはタイミングかな? 実は校長先生達にも話しはしてる」

「いつに間に……」

「最近、宗介が顔出してもう一ヶ月になるじゃない?

 私と宗介の関係って、テストの一位とかもあって、学校で知らない人いないらしいんだよ」

「確かにそんな話しを流星もしてたな」

「だから、もう隠す意味とかも無いかなって。元々、病気あっての『目立たないように』だったしね。でも、今じゃ目立ちまくってるからね。素顔の写真も、お祭り以外でもちょっと出回ってるし」

「確かに、制服姿の素顔で、何回か出歩いてるもんな。スマホ向けられる度にポーズ取るのはどうかと思ってたけど」

「ふふふ、ファンサービス? 黙ってても拡散されるなら可愛いの拡散されたいじゃん? ま、その度に、宗介の隣の女の子誰? って私に聞いて来る子が結構いるから、ちょっと嘘吐くのも申し訳無いなって思い始めた今日この頃だったりするんだけどね」

「翠がそう考えてるなら、俺は止めないよ」

「ありがと」


 ——— そしてギャル子達が本格的の私に絡んで来た。

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