第150話 いざ!野々白へ!③

 ——— 深川さんの別荘に着いた。時間は夕方になろうとしている。何かやるにはちょっと中途半端な時間だ。

 車は俺達と荷物を降ろすと何処かへ走り去っていった。聞けば、近くのフカガワ電気の関連会社の敷地に待機するらしい。運転手さんも一緒に待機なのか?


 今日は俺達四人で此処で過ごす。お手伝いさんもいない。まぁ、家の周りには警護の人が居るんだろうけどな。

 俺らは家の前で立って先ずは家の外観を眺める。『大きからず小さからず』と見ていて安心する大きさだ。


「海の側ってなんか……お爺ちゃんちだ」

「だな」

「あら? あんまり感動無かったか……」


 深川さんは俺達二人の反応が期待していた物と違っていたようで、ちょっとガッカリしている。


「俺らの親父の実家が海沿いなんだよ。なもんで海は馴染み深くてな」

「そうなんだ……」


 深川さん、気分がなんか沈んでる。

 深川さんって結構サプライズ的な喜ばせ方が好きのか? 

 深川さんの案内で別荘の中に入る。

 中はリビングが吹き抜けで、寝室が一階に二部屋、二階に三部屋あった。というより寝室しかない。

 別荘そのものが一つの『何かやる空間』だから、個室に籠って何かする事なんて無い訳だ。

 これ、妹達も連れてきたら、部屋割りちょっと悩んだぞ?


「なんか『ザ・別荘』って感じだな」

「いいね。お爺ちゃんちとはまた違うのんびり感味わえそう」

「喜んで頂いて嬉しいです」


 深川さんは、さっきとは打って変わってニコニコだ。すると流星が提案してきた。

 

「それじゃ、時間もあるし簡単に掃除するか。ちょっと空気が埃っぽい」

「そうだね。掃除機とかけて、窓開ければいいんじゃ無い?」

「それじゃあ、後はテーブルとキッチン拭いて……寝室はどうする?」

「其々にやればいいだろ?」

「廊下の収納棚にシーツ類あるからそこから持ってって」

「了解」


 ——— 俺達は手際良く掃除と寝る準備をして、夕飯の時間を迎え、そして ———



 ※  ※  ※



 ——— “チュンチュン、チュンチュン„


「——— ……い! ………すけ ……きろ……」


 ——— 何だ……煩いな……。


「……う介! 起きろ」

「……ん……何だ?」

「おい、何こんなところで寝てんだ?」

「……んにゃ……あさ……あれ?」


 体の感覚が目覚める。なんか心地よい重みと温もりが体の半身を覆ってる。


「ん……あれ? 何で此処に?」

「おはよう……あれ? 此処どこだ? ……おぉ! 柳生君おはよ」

「おはよじゃねぇよ。何で二人してソファーで寝てんだ?」


 その言葉に俺と翠は顔を合わせ赤面する。

 昨夜あった事は俺も翠もハッキリ覚えている。

 これは正直、流星は元より深川さんにも話せない ———。



 ※  ※  ※



 ——— 夕刻、食事が終わり、まだ空は薄っすら明るかったが風呂に入った。

 当然、男女別だ。最初に男達が入る。

 この別荘の風呂は四人くらいは入れる広さだが、驚くのは温泉で露天風呂がある事だ。

 俺と流星は露天風呂に浸かりながらも腰に手を当て、一糸纏わず仁王立ちで愚息を海風に晒していた。


「最高だなおい!」

「この開放感たまんねぇな!」


 露出狂の気持ちが少し分かった瞬間だった。

 そして女達が入り、まったりしつつも就寝 ———


 ——— そして夜中一時を過ぎた頃、俺は喉の渇きで目が覚める。


「うわぁ……寝汗スゲェな……一っ風呂浴びるか……」


 此処の湯は贅沢にも源泉掛け流しだ。黙っててもお湯が沸き出てる。

 俺は音を立てず、こっそり脱衣所へ向かう。

 窓から差し込む優しい月明かりが煌々と家の中に差し込む。


 ——— おぉ……立待月たちまちづきか……満月過ぎて二日目……これはこれで味のある風情を感じるな……ふむ……露天風呂で月光浴と洒落込みますか……。


 俺はキッチンで冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出しコップに並々注ぎ一気に飲む。そしてそのまま風呂へ向かった。

 脱衣所で服を脱ぎ、着替えは床に幾つか置いてあるカゴの一つに入れ、タオル肩に掛け、明かりを点けず、いざ!露天風呂へ!

 かけ湯して夕刻と同様、腰に手を当て愚息を月明かりに晒す。


 ——— “カラカラカラカラ„  ——— !


 すると間も無く背中から、静かに戸が開く音がした。

 誰かが入って来た。

 やばい。流星なら何も問題ないが、深川さんなら大問題だ。翠だったら……まぁ、いずれは見せるし見るだろう。それが今ってだけだ。問題無い。多分。


「あれ? 誰か……宗……介?」

「翠か……」


 体を捻って振り向くと、体を隠すように胸元でタオルを手で押さえ立つ翠がいた。ちょっと横乳が見えた。

 俺は激しく動揺したが、そんなそぶりを見せないように、体を元姿勢に戻して月光浴を嗜んだ。愚息は反応し掛かっている。やばい。

 

 ——— “ジャババ……チャポ……„


 ——— チャポ? 入って来た? 翠は湯船に入って来たの? それ、やばく無いか? やばいだろ! 流星じゃ無いけど妊娠しちゃうよ?


 かけ湯の音のあと、静かに湯船に入る音が聞こえた。


「えへへ……入っちゃった。何、フルチンで仁王立ちしての?」

「フルチン言うなよ。月光浴。翠もやるか? 開放感、結構気持ちいいぞ」

「あはは、遠慮しとく。それよりも折角だし一緒に入ろ」

「……そうか……」


 俺はそのまま座り、そして後ろ向きのまま翠の隣に移動した。


「俺のセクシーなヒップ見た?」

「えへへ……メガネ無いからよく見えてないんだよ」

「そうか……それはちょっと残念だ」


 ——— よく見えていないという事は、俺の視線もよく見えないという事で……


 俺はこっそり翠のおっぱいに目線を落とした。

 と言うか、胸元以上に頸と鎖骨がエロい。そして微かに見える湯船の中に揺らめく肢体。

 タオルは湯船に入れていない。腕でさり気無く隠しているが、ピンクな突起物も少々見える。俺の愚息は完全に起き上がった。見つかれば完全にアウトだ。


「こんな時間のどうしたんだ?」


 俺は愚息の愚行がバレないように翠に話しかけて誤魔化すが、時折翠から聞こえる鼻から抜ける吐息混じりの溜め息に、愚息はビンビビンでビビンビビンビンだ!


「なんか目が覚めたら寝汗掻いててね。水飲みに起きたら月明かりが綺麗だったし、露天風呂気持ちいいだろうなって……宗介は?」

「同じだな。寝汗……もしかして温泉のせいか?」

「かもね。血行良くする効能でもあるんじゃない?」


 俺は極力動かないようにしていたが、翠はチョイチョイ、肩にお湯を掛けたり姿勢を直したり動く。

 そうこうしてるうちに、翠の太腿が俺の太腿に触れた。触れっぱなしだ。柔らかい。


「いつも思ってたけど、宗介って寄りかかり甲斐のある体だよね……」


 翠はそう言うと手の平を肩に置きチョイチョイっと揉む。そしてゆっくり俺の胸に手をスライドする……次の瞬間 ———


 ——— 俺は理性が飛んだ。


 あとは想像に任せるが、結論から言えば最後まではやってない。次の日……いや、もう今日か……多分、翠が辛くなるだろうからな。そんな話も結構聞く。

 そもそも人の家だ。ちょっと気が引けたのもあったが理性は止まってくれなかった。

 そして互いに手だけで満足したと言うかさせたと言うか……勿論、お湯が汚れないように気は配った。



 ※  ※  ※



 ——— とうとう宗介に触られちゃった♡ 触られまくっちゃった♡ 声出ちゃったけど……聞こえてないよね?

 ただ……初めて生で男の人の『マックスな状態』見たっていうか握ったけど……これ普通なの? こんなの入んないって!



 ※  ※  ※



 一行為終え、一緒にお風呂から上がる。もう互いに体を隠す事はしていない。

 無言で体を拭き、俺は先に脱衣所から出てリビングのソファーに横になった。エアコンが気持ちいい。

 翠は後から来ると、横になる俺の体に自分の体を重ねた……なんてちょっとエロい感じの描写をするが、単に俺の上に寝そべった。


「エロ宗介♡」


 そう呟いて指先で俺の顔を優しく触れる。サラサラした感触が気持ちよく、俺はいつの間にか眠っていた。

 

 ——— そして、「チュンチュン」に戻る。ある意味朝チュンだな。



 ※  ※  ※



「——— おい、走りに行くぞ」

「あぁ」


 俺と翠は流星に起こされそして走りに出た。

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