第143話 中総体県予選②
——— テニスの大会開会式待ち、翔馬に対する私の気持ちに後輩が何となくだけど気付いたっぽい。
「でも、何気に真壁先輩、成宮先輩のお願いとか聞いちゃってますよね?」
「そう?」
「今の俺達への名前呼びだって、『なんで私があんたの言う事一々聞かなきゃダメなの!』って言いそうじゃ無いですか」
「時と場合だね。今の場合は翔馬がイヤイヤ来てくれた君達にご褒美でお願いした事だもん。私が名前呼んだくらいで喜ぶなら幾らでもするよ?」
「真壁先輩優しいです」
「優しいのは翔馬の方だよ。アイツ、なんだかんだ言って、一番周りとの調和を大切にする奴だからね。今も君達のモチベーション考えた結果、私を使った方が効率いいって思ってのお願い。私は翔馬の意図が分かったから協力しただけ」
「へー……そうなんですね? 真壁先輩って口では色々悪態付いてますけどちゃんと成宮先輩の事見てるんですね。実は先輩、成宮先輩の事……ホントは好き……だったりします?」
「うん? うん、さっきみたいなところは嫌いじゃないよ。寧ろ好きかな?」
「それじゃあなんでいつも成宮先輩に対してだけ口が悪いんですか? 所謂ツンデレってやつですか?」
「あはは、バレた? そうなの。とうとう私の気持ちに気付かれちゃったか……」
「えぇ! そんなんですか? ホントに成宮先輩……わぁ♪」
「ふふふ、これ、皆には内緒だよ。実はねぇ……真壁先輩は成宮先輩の事が大好き……な訳ないでしょ! 誰がこんな奴、好きになるかって! いつもいつも『アイラブ奈々菜ー♡』って一々ウザいんだよ!」
女子の後輩は私の言動を見て笑ってる。男子の後輩達は腹を抱えて笑ってる。翔馬に対するいつもの私だからだ。
「今のはちょっとドキッとしました。ホントに成宮先輩のこと好きなのかなって思っちゃいましたよ。あはは……先輩もそういう冗談言うんですね。ちょっと新鮮です。でも良く考えたら、それ以前に真壁先輩、彼氏いるって話でしたよね?」
最近、翔馬とのこのやり取りも、私が『彼氏います宣言』したせいで、勢いが無くなったところもある。なので今日は頑張ってみたけど、もう疲れたって感じだ。
正直、普通に「もう♡」なんて返しをしたい気分だ。ついでに言っちゃうけど、「好き♡」の勢いは全く衰えていないどころか、未だ宇宙の膨張速度で拡大中なので悪しからず。
そんな感じで開会式を待っていると、突然私達に向けて声がした。
「新山学園の人達ですよね?」
声のする方を振り向くと、そこにはエメラルドグリーンと黒のツートンカラーのユニフォームを着た、多分イケメンな爽やかな感じの男の子が立っていた。
後輩女子の二人を見ると、なんか浮かれた感じに小さい声でキャーキャー騒いでる。この反応を見るにこの人はカッコいい部類の人らしい。
でも何だろう? 用事があるから話しかけたんだろうけど、この男の子からはいつもナンパしてくる人と同じ空気を感じる。多分、十中八九ナンパだ。
藍も同じ空気を感じたようだ。『警戒心』というバリアを張ったのを感じた。
「あ、僕、七十七南中学の『
「ドモ」
その後ろに普通ぽい男の子が立っているけど……この人、なんか仕草が一々気取った感じだ。
彼の紹介に後ろの子は会釈するが、明らかにカッコつけてると分かる仕草だ。
後輩二人は後ろの人への反応は淡白だ。イケメンの部類じゃ無いらしい。
「で、何?」
翔馬が面倒そうに返事をする。
「いや、来年、新山学園受験しようと思っててね。折角だしご挨拶と思って声を掛けたら、双子の美少女でちょっとドキドキしちゃって何話すか忘れちゃったよ」
「そうか……合格したら来年から宜しくな」
「うん、君の名は……」
「成宮翔馬。こいつの彼氏だ。こっちが滝沢廉斗。そっちの子の彼氏だ」
「彼……氏?」
彼氏とかどうでもいい情報を初対面人に話すなんて、翔馬はこの男が話し掛けてきた理由は私達だと思ったようだ。
私達を守る為に後輩の前だけど敢えて『彼氏』宣言をした。でも、悲しいかな、翔馬は翔馬自身が私の彼氏である事をまだ認めていない。早よ認めろ!
私と藍は面倒なので何も言わず、ニコニコしてるだけだ。因みに私達の名前は教えていない。
後輩達はさっきの私と翔馬の事もあり、ニコニコというより、ニヤニヤしている。
「あー、後輩共、これ学校戻っても皆には内緒だぞ」
「……プッ……はい……ププッ」
「はは、なんだ冗談か……ま……フッ……だよねぇ……」
翔馬が後輩に声を掛けたせいで、後輩も笑いを
しかし、この男、私と翔馬を見て、何で鼻で笑った? 不釣り合いとでも言いたいのか? 失礼な奴だ。
「じゃあ、来年、宜しくね……あー、そうだ! ここで会ったのも何かの縁だし……彼らに勝ったら、君達とデートの権利とか……貰ってもいいかな?」
——— やっぱりナンパだったか。しかも唐突だ。そして翔馬と私の彼氏彼女の関係を冗談としながらも、何で彼の勝敗が私に影響してくるのか……意味が分からない。ただ、私は翔馬の実力の凄さを知っている。
「いいよ。翔馬いいでしょ?」
私はその申し出を安易に受けた。
「お前がいいならいいぞ。廉斗は?」
「うん。彼女さえ良ければ」
「全然全然オッケーオッケー」
「あっさり受けちゃった……そんなに僕と……じゃあ僕達が負けたら……」
「いらんいらん。一々その為に時間割くのも面倒だ」
さっきから翔馬が昔貼られたレッテル『いい加減な奴』『適当な奴』が顔を出している。
「それじゃあ、僕が入学したら友達になるってのはどう?」
「あー、まぁ、それでいいや」
翔馬も相当面倒になってきたようだ。
しかし『友達になってやる』ってどんだけ上から目線なの? この東堂って人の後ろにいる……ま……ま……名前……「ま」何だっけ? 名前忘れてちゃったけど、その人の態度と後輩達の反応から見るに……『自分と友達になれば漏れ無く女の子が付いてきますよ』って感じなんだろうか? うわー……もしそうならこの男最低だ。
※ ※ ※
——— 結果、私達ツインズは優勝。翔馬達も優勝した。しかも、また1ゲームも与えずにだ。彼ら、何試合連続0ゲームなの? レベルが中学生じゃない。ちょっと凄すぎる。
ま、内容はどうあれ、これで四人で全国大会に行ける♪
そう言えば、朝、声掛けてきた……何君だっけ? あの男子……試合いつやってたんだろ? そもそも何回戦で当たるかすら気にも留めてなかった。
※ ※ ※
同日行われた高校バスケの
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