第147話 プールへ行こう②

 ——— 前回し忘れた皆の水着の紹介だ。

 男共は膝丈迄ある普通の極一般的な水着だ。廉斗君だけビキニパンツだ。お尻がプリッとしている。

 ついでに俺と流星がビキニパンツを履くと、ナニが上なり下なり「コンニチワ」するので履けないのである。


 女性陣だが、妹達は胸元とお尻にフリルが沢山ついてる可愛らしい色違いの水着だ。

 奈々菜は以前、翔馬君に「エロい水着を準備する」と言っていたが、不特定多数に見られる事に気付いてやめたようだ。


 深川さんは慎ましくビキニだ。腰にはパレオを巻いている。今迄パレオは邪魔だと思っていたが、なかなかどうして、何気にチラリズムがあって実はエロい事に気付いた。


 翠は相変わらず紐だ。ただ今回は胸元にフリフリが付いてて若干胸を大きく見せようという作戦か? 俺は小さめの方が好きなんだが……ラッシュパーカーを羽織ってるが前は閉めていない。それが妙なエロさを出してる。


 そして最後に江藤さんだが……彼女の水着はちょっと面積が小さめじゃない? って感じのビキニだが、それ以前に肉体美の美しさと言うかカッコ良さとでも言うのか、『女性ならではの曲線美の究極を見た』という感じだ。


 さっきのちょっとした騒ぎで気付かなかったが、今、改めて周りに気を配ると、普段、俺と翠に集まる視線が全く感じられなかった。

 気付けば皆、江藤さんを見ていた。

 彼女を目の当たりにした者は全て彼女に魅入る。

 今、このエリアは彼女が完全にこの場のヒロインだ。

 そんな俺達も江藤さんから目が離せないでいた。


「初めてだよ、私に視線来ないの」

「俺も。すげぇよこれ……」

「江藤もとんでもねぇもん隠してたな」

「『硬さ』とは違う筋肉の『柔らかさ』と『張り』を感じるね」


 俺達は江藤さんの体……いや、bodyをマジマジと見る。エロい目線では無い。決してエロ目線では無い。そう! エロ目線では無いのだ。


「あんまり褒めないでよ。でも今日くらいしかお披露目で出来ないからじっくり見てって気分でもあるんだけどね……うふ♡」


 見られてる満更でも無い…と言うより見せるために鍛えているので、惜しげもなく肢体を曝け出す。

 実際、江藤さんが熱中している『サマースタイルアワード』は筋肉を鍛え競うのでは無く、見た目の美しさと言うのか、『自然な筋肉の美』を競うものだ。

 なので実際触ってみると、見た目に反して柔らかくそして張りがある……と、翠は語る。俺も触ってみたい。

 深川さんは自分の腕を摩り、そして江藤さんの腕も摩って自分の腕と比較している。


「腕とか足とか程よく細いのにただ細いだけじゃなくてバランス良く括れとかもあって力強くもあり……ホント綺麗だよ」


 そして江藤さんは常に爪先立ちというか踵を地面にに触れないような立ち方をしている。

 そうする事により、脹脛の筋肉がいい感じで張りつつも、足の細さと『ツン』とした躍動感を醸し出す。


 ——— 彼女の独壇場は暫く続いた。



 ※  ※  ※



 俺達中等部組は宗介さん達と別れ、四人で遊んでいた。ウォータースライダーで後ろから抱きつかれ、二回目は俺が後ろに乗ると寄り掛かられ、波の出るプールで上がったり下がったりして、ボディーボードのコーナーで、流れに乗れず後ろに吹っ飛ばされ……ポロリは無かったが……そして最後に浮き輪をレンタルして流れるプールで四人仲良く静かに流されていた。

 奈々菜と藍ちゃんは浮き輪にお尻を入れ、俺と廉斗はそれぞれ浮き輪にしがみついてる。

 因みに足は下に着くので、ラッコみたいな感じでしがみついてるんだけど……奈々菜のお尻がお腹に乗っててなんか……いい。



 ※  ※  ※



 ——— 今日は素肌の触れ合いが多くて正直ドキドキだ。抱きつかれるのとは全く別物である。正直俺の『翔馬』が何度起立し掛けたか……廉斗、お前の海パン大丈夫か?


 一通り遊んだ俺達は取り敢えず休憩に入った。

 偶々パラソル付きのテーブルが空いていたのでそこに腰を掛け休憩していると、「成宮君?」と聞きなれない男の声で俺を名を呼ぶ声がした。

 俺達四人は顔を合わせ「!」っと学園の奴かと顔に緊張が走った。声を掛けてくるなら同クラか元同クラだ。それからテニス部。

 違うクラス、学年であれば声は流石に掛けてこない。

 ここでは写真も御法度だ。見られて噂を流されても証拠は残らない……筈だ。

 俺達四人は声のする方に目を向けると、そこには見慣れない、でも何処かで見た事があるイケメンな男が立っていた。そしてその両隣には可愛い感じの女の子二人いる。誰だコイツら?


「『ばんり』、この子誰?」

「新山学園の子。ここ前のテニス大会で知り合ったんだ」

「わぁ、可愛い♪ 双子だぁ」


 しかし突然声掛けたと思ったら急に騒ぎ出しやがった。俺らは静かにしていたいのに鬱陶しい。

 『ばんり』で思い出したが、県大会で顔だけ合わせた『……バンリ……』……すまん。苗字を思い出せない。コイツの中学も同じ市内だ。この街は大きいので中総体の地区予選は六地区分られている。


「大会ではゴメンよ。勝負以前に僕の調子が悪くて初戦で負けてしまったよ。相棒も僕のプレーをカバーしきれなくて実力も出させず悪い事をした」


 ——— そういえば今日は相棒……いた!


 コイツの後ろに目をやると、数歩下がったところでテニスの大会で東堂と一緒にいた男がデジャブの如く、気取って立っていた。名前は確か『藤村兼一郎』だ。

 そしてコイツの水着はスクール水着だ。パッと見、水泳ガチ勢に見えなくも無いが、体付きが……うん、見えないな。


「まぁ、僕達は一回戦で負けてしまった訳なんだが、君達の結果はどうだったんだい?」


 ——— ん? コイツ、俺ら優勝した事知ら無いのか? まぁ、初戦で負ければすぐ帰るか……。


「まぁ、それなりに善戦したよ」

「そうかい。聞けば優勝したペアは、1ゲームも取られ無かったらしいじゃ無いか。とんでも無い奴らがいたもんだよ」


 ——— しかしこの男、ホントにテニス上手いのか? まぁ、地区予選で優勝するくらいの実力はあるんだろうけどな。


「ところで、この前聞きそびれたんだけど、彼女達の名前、教えて貰えないかな?」


 ——— どうやら声を掛けてきた目的はそっちだったらしい。

 っていうか、この前の大会のトーナメント表見れば分かったんじゃ無いのか?

 ただ、奈々菜も冷たく遇らう。


「あら? 可愛らしい女の子二人も連れて他の子に目移りなんて、彼女達に失礼なんじゃ無い?」

「そうだよもう! 万里は可愛い子見るとすぐ声掛けるんだからぁ」

「今日は私達とデートなんだからちょっとは自制してよね」

「ははは、ゴメンゴメン」


 ——— おいおい、コイツの振る舞いってこれがデフォなの? 二人共容認しちゃってるよ。奈々菜には近付けたくなタイプだ。

 しかし、お前らダブルデートじゃ無いのか? 後ろの相棒はどうした? 女共はノー眼中か? ……まぁ、相棒があの格好じゃ……隣に立ちたくも無いか……。

 相棒に目を向けると、目減めげる事なく気取って立っていた。見ている分には結構好きなタイプだ。


「それに、来年学園入るんでしょ? 入れば嫌でも私達の名前知るからその時までは内緒ね」


 ——— 確かに学園に入ったら奈々菜と藍ちゃんの名前は嫌でも知る……っていうか今日一緒に来たメンバー、学園の有名人ばっかじゃん! 知らない人居ないよ。

 宗介さんも翠ちゃんも、『謎の』で有名だし、改めて思うに、俺と廉斗、とんでもない人達と遊んでるよ。


「あはは、これは手厳しいね。それじゃあ、来年までのお楽しみに取っとくとして、それとは別に成宮君、君は僕が認めたライバルなんだ。高校入ってもテニスは続けてくれよ」


 ——— うーん、何を基準にライバル設定? ライバルって競ってナンボだと思うんだが……俺ら一度もった事ないじゃん!


「じゃ、僕達はこの辺で去るよ。それじゃあ」


 そう言って四人は去っていった。

 後ろの男……最後までスタイルを崩さずにいた。アイツ、自分はモテてるって勘違いしてる。明らかにしている。100%してる。なんだろう……何故か目が離せない奴だ。ただ、友達にはなれないな。



 ※  ※  ※



 翠は今、借りた浮き輪にお尻を入れてプカプカ浮いている。

 俺はその浮き輪に頭を乗せてプカプカ浮いてる。

 翠の隣に頭を置いてる感じだ。

 そして流れに逆らわずプカプカ流される。


「平和だな」

「平和だね」


 俺達の耳には周りの喧騒が心地よく聞こえていた。

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