第146話 プールに行こう①

『ははははは、マジかよ。三日で店仕舞いさせるなんて、聞いた事ねーぞ』


 俺は流星と電話中だ。


「ついでに言うと、店員全員の給料三ヶ月分稼いだらしい」

『はー! すげぇなー』

「折角だから店閉めて、みんなで海外旅行に行ったそうだ」

『羨ましいな』

「それで、電話の要件は何だ?」

『プール行こうぜ』

「いつ?」

『今から』

「はぁ?!」

『ダメか?』

「いや、俺はいいけど、俺達だけか?」

『まっさかー。男達だけで行って何が楽しい? ナンパ出来るわけでもねーのに』

「彼女居なくても、ナンパなんてしないけどさぁ、深川さんは大丈夫なのか?」

『今、隣にいる』

「んじゃ行くか?」

『あれ?桜木は?』

「大丈夫。もう間も無k “ガチャ” 「宗介、プール行こう!」

『………』

「ほらな」

『お前、凄いな』

「愛だな」

「愛だ……へ?」

『愛か……』



 ※  ※  ※



 バイトが打ち切られた翌日、連日外を歩いたせいと、今までの抑圧から解放されたせいか、何故だか無性にプールに行きたくなった。

 実はケ・ベッロに水着が置いてあっので、宗介に内緒で買っていたのだ。

 早く宗介に水着を見せたい。

 まずは行動だ! 宗介を誘おう!

 私は宗介の部屋に行き、徐に扉を開けた。


 ——— “ガチャ”


「宗介プール行こう!」

「ほらな」

『………』

「愛だな」

「愛だ……へ?」

『………』


 宗介に合わせて相づち打ってみたけど何の話だろ?



 ※  ※  ※



 俺達九人は最寄りの駅で降りて、歩いてプールに向かった。

 メンバーは……高等部二組のカップルズに江藤さん。それと中等部のカップルズだ。

 妹達は其々彼氏彼女で歩いているが、俺達は男女別に歩いていた。

 皆、『ザ・夏!』って格好で歩いている。

 奈々菜と藍ちゃんは顔が見えないようにツバが広めの帽子を深く被っていた。


「なんだかんだで大所帯になったな」

「学園の奴に会わないか?」

「まぁ、見られて流星が言われる事は『謎のカップルと何で知り合いだ?』だな」

「ツインズは?」

「偶々会ったでいいだろ?」

「結構あっさりだな」

「うん、それで大丈夫だと思うよ」


 奈々菜が後ろから答える。


「寧ろお兄ちゃん達と知り合いって方が理由に苦しいよ」

「だな」



 ※  ※  ※



 プールに着いた俺達は着替えた後、プールサイドで待ち合わせをした。


「やっぱ女性陣は時間がかかるか……」

「そのうち来るだろ。」

「しかし、以前のお風呂でも思いましたけど宗介さんも流星君もいい体してますよね」

「筋肉がほとばしってる……」

「ははは、すごい表現だな。翔馬君もそれなりだぞ? 廉斗君に至っちゃ……江藤さん食いつくかな?」

「あぁ、ちょっと藍ちゃんヤキモチ妬くかもな」

「どういう事ですか?」

「江藤さん、筋肉フェチなんだよ」

「そうなんですか? 人は見掛けに依らないですね」

「俺らの筋肉で『足りない』って言ってるからな」

「どんだけですか」

「しかも彼女自身スゲェプロポーションだからビックリしろ」

「マジですか!」


 合宿中、夜は彼女は短パン半袖で居たのだが、服の上からでも分かる肉体美を晒していた。

 そのエロいパーツの名称も、「お尻とおっぱい」という表現より「ヒップとバスト」とカタカナで表現するのが相応しい、そんなバディーだ。


 俺達男四人が一カ所で集まってる中、遠巻きに女達がこっちを見ている。

 細やかにキャーキャー言ってるのが聞こえるが、流石にここで写真を撮る奴はいないようだ。


「宗介さん注目の浴び方半端ないですね」

「まぁ、これが俺と翠の当たり前だな。っていうより奈々菜達もこんなもんだろ?」

「確かにそうですけど、奈々菜達の場合直ぐ解散ですよ。皆見惚れほおけますけどそれで終わりです。こんな居続けて人集りになった事は無いです」


 すると、三人の女性が俺達の元に歩み寄ってきた。


「ねぇねぇ、お兄さん達今来たトコ?」


 大学生だろうか? 俺達よりは年上な感じがする。


「ん、そうだが?」


 流星がちょっと面倒臭そうに返事をする。


「良かったら私たちと一緒に遊ばない?」

「あぁ? ダメダメ……だって俺達……その……なんて言うかさ」


 そう言いながら流星は俺の背後に回り込み、後ろから左腕を俺の首に回し抱え込むように抱きしめてきた。

 コイツ、悪ふざけモードに入ったようだ。

 右手は俺のお腹の辺りをまさぐる。

 そして、自らの顔を俺の右頬へ寄せて来た。殆ど頬と頬がくっついている。ちょっと “ジョリ„ ってる。痛い。

 俺もその悪ふざけに乗り、右手は流星の右手に添え、左手は流星の後頭部へ回し、流星の頬へ口づけをするように顔を近づけ、目線は彼女達へ送った。


「……俺らこういう関係だから」


 蕩けた眼付きで女達を見つめる。女達はなんかモジモジしている。遠くの方では「きゃゃゃぁぁぁぁ♡」という歓喜の声が上がっている。

 一部に「昂まるー♡」とか「頂きましたー♡」と言う声も聞こえる。地べたに座り込む子も。なんかモジモジしてんな。

 目の前の女性達は、モジモジしながら顔を真っ赤にして目線を逸らしいる。俺達を直視出来ないらしい。


 次の瞬間! ”スパーンッ!”


「痛ってー!!」


 っと、気持ちいい音と流星の悲鳴が響き渡った。


「バカァ! なーにやってんのぉ ——— !」


 江藤さんだ。その隣で「あはは」と呆れた笑いと顔で俺達を見る深川さんが立っていた。

 翠はジト目でこっちを見ている。口が呆れの半開きだ。


「ふーん。宗介って、そっちも行けたんだ? ふーん」

「いやいや、ちょっと悪ふざけだよ。俺は翠一筋だから」

「あらそう? なんか、キスでもしそうな雰囲気だったけど?」


 翠はジト目継続中だ。


「お兄ちゃん、最低ぇ!」


 奈々菜も翔馬君の腕にしがみつきながら軽蔑の眼差しだ。


「そっかー、流星君との婚約もちょっと考えないとダメかな?」


 俺らをナンパしてきた女共のせいで俺と流星は散々な目にあった。だから女は嫌いなんだ!



 ※  ※  ※



 ——— 私達三人は正直モテる。

 街を歩けばナンパは日常。飲みに行けば意中の人にお持ち帰られるのは当たり前。逆ナンすれば外す事なく漏れなくゲッツだ。

 そして今、ナンパされるのを期待してプールサイドを歩いていたら、なんか人集ひとだかりが出来てた。

 人集りは皆同じところを見ている。

 視線の方に目を向けると、イケメンが二人が立っていた。

 しかも一人はメッチャ『美人』だ。

 男で『美人』っていうのも可笑しな感じだけど、数ある形容詞の中で『美人』が一番しっくり来た。ま、実際それでも足りないくらいなんだけど。

 皆、遠巻きに見ているだけで近付こうとしない。行動に起こそうとする子はいないようだ。

 誰も手を出さないなら手を出さない道理は無い!

 私達三人は迷う事なく彼らの元へ近づいた。

 メンズ達の前に立つ……近くに寄って気付いたけど、この子達高校生? 背が大きいから遠目に感じなかったけど、何となく幼さがちょっぴり感じられる。一緒にいる小さい子は完全に中学生だ。

 でも、可愛い。なんか初々しくて食べちゃいたい気分だ。うん、頂いちゃおう♡

 すると目の前のイケメンズは急に目の前で絡み始めた。

 ちょっとなまめかしくて、エロいんだけど!

ご馳走様過ぎてお腹一杯で見てらんない。

 眼福で昂まり過ぎてるところに、今度は美少女軍団が登場って……ハァ? 何この子達、一人は『美人なメンズ』と同じレベルの超絶美少女。

 そしてモデルとしか言いようのないスレンダー美少女。おっぱいは勝った♪

 双子の美少女に、最後は…… NICE BODY なインテリ系美少女……この子の体はBODYだ。そう表現するのが正しい。ギャップ萌えもいいところだ。

 目の前で繰り広げられる内輪揉め……あれ? 私達の存在忘れられてない? 忘れられて途中から文章にされて無かったよね?

 双子ちゃん達、あんまりカッコよくもない中坊メンズに寄り添ってるけど……ええ! この子らの彼氏? 全然イケてないじゃん! 

 でも笑顔は凄く幸せそう……。

 その笑顔を見た私は思わず呟いた。





「彼氏欲し……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る