第141話 柳生流星も……
——— まだ深川さんの家のリビングで談話中だ。
俺は、流星と深川さんが付き合ってる事で一つ気になる事があった。
ただ、この場で聞いて答えてくれるか……。
「前から気になってたんだがいいか?」
「何だ?」
「深川さんって社長令嬢だろ?」
「あぁ」
「将来結婚する相手って、自分で選べるもんなのか?」
「と言うと?」
「もしかして私の政略結婚的なやつ気にしてます?」
「ストレートに言えばそれ。一応、フカガワ電気は一族経営だってのは世間の常識だ。そういう経営の仕方だと、政略結婚みたいなのってあるんじゃ無いかなって」
「ふふふ、まずは何処からお話ししましょう……えっとですね、皆さん勘違いしてますけど、うちの会社って、一族経営に見えますけど、実は全然違うんです」
「はい? だって、先代の社長の息子さんが今の社長でしょ?」
「はい。但し、『息子』では無く『義息』ですけどね」
「え? 養子なの?」
「はい。歴代社長全員婿養子です」
「えー! 新事実! 歴代の社長全員って……何で?」
「うちの家系、女系家系で、何故か女しか生まれないんです」
「じゃあ……」
「はい、時期社長候補は既に決まっていて、私の姉が結婚する事になっています」
「……ある意味それも酷だな」
「そうでも無いですよ。聞いてみると、先代も先先代も、恋愛結婚だったそうで、実際、姉も結婚予定の彼氏とはラブラブだそうです」
「それって……」
「はい。彼氏、結婚が先で、社長がおまけで付いて来たってやつです」
「うわー、それも凄いな。プレッシャー半端ねぇ」
「ただ、父を含めた歴代の彼氏さん、皆、お仕事出来る人ばかりみたいで、その辺は全く気にしてないようです」
「ははは、言葉が出ねぇ」
「で、私と流星君ですけど、実は、私達のお付き合いは、政略結婚の範疇に入ってます」
「ん? 付き合うキッカケはお見合いじゃ無くて、普通に、相思相愛的な流星からの告白からだよね? でも政略って……ん? 流星の家ってそういう家なの?」
「実はそうなんです」
深川さんはニコニコしながらこちらを見ている。この事で、なんか良いことあったような感じだ。
流星は「俺の話を俺の目の前ですんなよ」って表情だ。
そして深川さんは流星を見て「いいよね?」って表情で伺う。流星も「好きにしろ」と表情で返す。ツウカアだな。
「では、順を追って説明しますね」
「よろしく」
「彼の……流星君のご両親のお仕事ってご存知ですか?」
「いや、一度も聞いた事は無い」
「ですよね? まぁ、ちょっと大きい会社ですけど、お父様は普通のサラリーマンです。因みに深川の関わりはない会社です。で、今彼が住んでいる家は、母方のご実家になります」
「そうだったの?」
「母方のお父様は会社を経営してるんですが、以前からお子さんが居なく、跡取り問題が有ったそうです。そして、彼が中学三年生の時にお父様の転勤の話しが出ました。ただ、行き先は海外だったんです。その転勤をきっかけに、流星君はお祖父様の跡取りとして、こちらに残ったんです」
「ん? 母方って事は……姓が違うよな?」
一応、中総体で流星のフルネームは覚えていた。今も変わらず『柳生』だ。
「はい。母方の姓は『
「なんかどっかで聞いた事があるような」
「偶に……年一回くらいはニュースで名前聞きますね」
「あ、『勅使河原貿易』か!」
「そうです」
流星も、なんかとんでもないもの背負ってたな。
「勅使河原家では跡取りがいないと言う事で、流星君を養子にと考えているんですが、今はその素質の見極めの為、養子に入れずにいるとの事です」
「深川さんとのお付き合い以前に、流星みたいな男がなんで進学校に通っているのか疑問に思ってたけど、なんとなく見えてきたよ」
「俺みたいなので悪かったな」
「悪い意味じゃねぇよ。お前、何もなければ、バスケの名門校とか行ってただろ?」
「まぁな。実際、何校か声は掛かってたな」
「そして、私が登場します。私達はお付き合いを始めるに当たって、『家』の都合があるので、お付き合いとほぼ同時に私の両親に紹介しました。流星君はそこで始めて私の『家』……を知った訳なんですが……」
「ビックリしただろうな」
「ビックリ……というよりは、『普段着で来ちゃったよ!』ってそっちで慌ててました」
「キモが座ってんだか、大物なんだか……」
「そして紹介した時に、私の両親は、彼に親の仕事について質問しました。イヤらしい話しですが、両親の立場を考えれば、当然の事だと思います」
「そこで深川さんも流星の『家』を始めて知った訳か」
「そうです。私も驚きました。そして両親にとっては凄く都合のいい話でした。うちのグループ、貿易関係が若干弱く、特に中東方面を盤石にしたいと思っていたところに『勅使河原貿易』の跡取り候補が登場です。しかも娘の私が『交際』という事で連れて来たんですから願ったり叶ったりです。両親はこれはチャンスだと、さっそく婚約の話しを申し出たんですが……」
「流星の『素質見極め期間』で話しが頓挫した」
「端的に言えばそうです。うちの両親は『是非に』と申し出て、勅使河原の家からは『まだだ』と言われ、流星君は板挟みに遭っていました」
「そうか。それで中間テストだったわけか」
「正解です。流星君は、素質の提示方法の一つに『成績』という、結果が目に見えて分かりやすい手段を選びました。そして、あの結果です。やっと勅使河原から跡取りとして認められました」
「もしかしてこの祝賀会って?」
「それも含みですね。ふふふ……両家公認で私達は晴れて婚約者になったんです」
深川さんの声のトーンが一つ上がった。
「おー! それはおめでとう」
皆、「おめでとう」って声を掛ける。
「流星そのうち改姓するのか?」
「あぁ、高校卒業のタイミングだな」
「ところで、お前の素性を知ると俺達にデメリットがあるって言ってなかったか?」
「あぁ、お前ら、俺らが婚約発表なり結婚発表があるまで、それか企業の締結報道あるまでうちらの企業の株買えねぇぞ」
「株って……そんな……ん? インサイダーか!」
企業が合併したり企業間で何かしらの締結がされると株は上がって利益を産む。
なので、事前にそれらに関係する関係者が有益な情報を得た場合、株は買っちゃならんっていう法律がある。
この場合、俺らは関係者じゃ無いが、関係者から情報を得たので俺達も関係者になってしまった。俺が事前に株を買って得た利益を流星に流すという不正が出来るからな。
因み、株を買ったタイミングで疑われそして大抵バレる。偶にニュースで取り上げられる。
詳しくは『インサイダー取引』で検索だ。
——— 流星の秘密も明らかになり、朝を迎えた。
ま、日曜日の話は大して面白くも無いからダイジェストだ。
朝起きて、いつもどおり、男性陣と翠と吉田さんでジョギングして、江藤さんと奈々菜は朝食を作り、深川さんと藍ちゃんが寝ぼけながら起きてきて、少し遊んでリムジンで帰った。
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