第144話 社畜の安寧(2)


 コーヒー自体は、悪いモノではないだろう。

 カフェインは交感神経を刺激し、血行改善や新陳代謝を促進してくれる。


 また、ポリフェノールもふくまれているので、朝コーヒーはサラリーマンのルーティンに組み込むのも悪くない。個人的にはブラックコーヒーをおすすめする。


 疲労の解消や集中力を上げたいのなら、砂糖を入れるのも手だろう。

 ポーションミルクは『トランス脂肪酸』があるのでけたい所だ。


 しかし、一度に使うのは少量である。

 コーヒーの苦みが嫌なら、無理をせずに使った方がいい。


 また、美容や健康を意識しているのであれば、乳製品が入ったラテもいいだろう。

 確かにカロリーは高い。


 しかし、アーモンドミルクなら『若返りのビタミン』であるビタミンEをふくんでいる。


 また、オーツ麦が原料のオーツミルクは低カロリーで食物繊維をることも可能だ。


 豆乳ラテなら、女性に不足しがちな鉄分も摂取できるだろう。

 イソフラボンにマグネシウム、記憶力の改善を助けるレシチンもふくまれている。


 正直、これらを飲んで『脱水症状を引き起こす』と言われても微妙びみょうな所だ。

 恐らくは他の要素と組み合わさることで、危険なのだろう。


 コーヒーに限らず、緑茶やウーロン茶にもカフェインが含まれている。

 それに利尿作用という事なら、カリウムやアルコールも同じだ。


 身近な飲み物なら、ココアや豆乳、牛乳や野菜ジュースにもカリウムは含まれている。


 脱水症に関していうのであれば、体液が汗で失われている状態だ。

 要は汗をくことで、カリウムを必要以上に失ってしまう事が原因である。


 体内の電解質イオンバランスがくずれる事で、体調不良を引き起こす。

 決して、水分の不足だけが原因ではない。


 正解としては、水分と塩分を同時に補給し、日頃から「こまめに水分補給をしろ」という事だろう。


 また、カフェイン自体は『むくみ防止』『デトックス』『高血圧の予防・改善』の効果もある。


 むしろ、寝不足や前日の飲酒、朝食を抜いてしまうなど、夏場はそちらを注意した方がいい。


 場合によっては、スポーツドリンクや野菜ジュースの方が危険だったりもする。

 飲み物で糖分をると『太りやすくなる』からだ。


 加えて、オッサンになると『脂肪肝』にも、気を付けなくてはならない。

 肝臓を悪くするのは、お酒を大量に飲んでしまう事も原因なのだが、糖質のりすぎも要注意である。


 水分と塩分を補給できて、疲労回復にも効果的。運動の後にはいいのだが、やはり糖分を多く含んでいるため、肥満や虫歯の危険もある。


 特に疲れている時は脳から『甘いモノ』を欲する司令が出るため、ついつい飲んでしまう。それは仕方のない事だが――


(問題は空腹時にある……)


 『甘いモノ』を食べると血液中に糖が増え、血糖値が急激に上昇する。

 すると血糖値を下げるためにインスリンが分泌ぶんぴつされるワケだが――


(糖を中性脂肪に変えて体内にたくわえてしまう……)


 また、インスリンの分泌量が過剰になると、今度は『急激に血糖値が下がる』という流れだ。当然、血糖値が下がりすぎると低血糖になる。


 再び空腹感におそわれ『甘いモノ』が欲しくなってしまう。


(まさに『魔の悪循環ループ』……)


 更に途中で煎餅せんべいなどの塩味をはさめば、際限なく食べてしまう結果にもつながる。

 我々人類は魔物モンスターよりも恐ろしいモノを内に飼っているのかもしれない。


 頑張ったご褒美ほうびとしてスイーツを食べるのは構わないが、次からは少し、気を付けた方がいいだろう。


 甘味を欲する時、甘味もまた、こちらを欲しているのだ。

 勿論もちろん、冗談だが――


なにやら、エーテリアには怒られそうな気がする……)


 この話は、女性の前ではしないようにしよう。

 俺は『ミントティー』を飲み終えると見張りの兵士へ合図を送った。


 雰囲気だけで伝わったようだが、魔物モンスターが近くに来ているむねを伝える。

 数が少ないのなら、ただの偵察ていさつの可能性もあるだろう。


 そこまで警戒する必要はないのかもしれないが、俺は相手に気取けどられないように、なるべく静かに兵士を集めるように指示した。


 風のにおいをぐ限り、


(まだ、来るまでは余裕があるな……)


 巨人サイクロプスが一緒ならダークウルフをつかみ、都市の中へと放り投げてくる可能性もあったが、そういった気配はない。


 次に襲撃しゅうげきがあるとすれば、ダークウルフの魔結晶を吸収した巨人による突撃だろう。闇をまとうことで身体からだを隠せば、気付かれずに突撃できる。


 しかし、あの巨体だ。はげしく動けば、それだけで地響じひびきが発生する。

 こちらとしては、すぐに分かるので隠密行動には向かない。


 やはり、トラップを警戒しているのだろう。

 仲間が竹で串刺しにされた事が余程よほどトラウマのようだ。


 あまり好きなり方ではないが、罠があると思わせる事は有効らしい。

 俺はしばらくの間、南西の方角を見張っていたが――


(動きはないようだな……)


 兵士たちが集まってきたので、見張りを交代すると俺は物見台から飛び降りた。

 ガハムと大男の姿を確認したので、俺は着地する。


 女剣士の話だと――俺が予想した通り――仲が悪かったようだが、いつの間にか仲良くなっていた。


 本音でぶつかり合ったからだと思うのだが、女剣士には不思議で仕方がないようだ。俺は、まだ慌てなくていい事を伝えると同時に、


「いつでも出撃できるようにしておいてくれ」


 とだけ頼む。蜥蜴人リザードマンと大男のチームには、昨日の内に役目を与えておいたので問題ないだろう。


蜥蜴トカゲ野郎には負けないぜ!」「アホぬかせ、ゴリラ」


 そう言って互いにこぶしをコツンとぶつける。

 心配しなくても、これなら上手うまくやれそうだ。


 俺としてはれた光景だが、女剣士には二人の態度が理解できないらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る