第67話 竜殺花(1)


 ミリアムの話によると、遺跡の中には祭壇さいだんがあるらしい。

 遺跡を侵食している植物の種は『そこにそなえられていた』と彼女は語る。


 蜥蜴人リザードマンたちの風習で、外から持ち込まれたモノは一度、神におうかがいを立てる決まりらしい。


 人間の頭ほどの大きさだった――という巨大な種。

 『椰子やしの実』を想像イメージするといいのだろうか?


 それが、いつの間にか祭壇に供えられていたようだ。仲間の誰かが持ち込んだモノだと思い『その時は誰も気に掛けてはいなかった』という。


(まあ、種がこうなるとは誰も思わないか……)


 恐らくは、その種を蜥蜴人リザードマンに渡したのが【白闇ノクス】なのだろう。

 誰が供えたのか? その追及ついきゅうは後でするとして――


(種を排除しても、もう遅いか……)


 ここまで成長してしまった状態では、今から、その祭壇へ向かったとしても手遅れだ。恐らく、成長の原因は魔力によるモノだろう。


 この遺跡の下には地脈があり『膨大ぼうだいな魔力が流れている』とは考えにくい。

 誰かが魔結晶を近くに置いたため――


(『それを成長のためのエネルギーに利用した』と考えるべきか……)


 リディエスの街にあった神殿。

 その地下へ入る際、あかりの動力源エネルギーとして魔結晶を使用した。


 似たような仕掛けがあっても、おかしくはない。

 遺跡自体は蜥蜴人リザードマンたちが造ったモノではないようだ。


 彼らの前に住んでいた種族がたらしい。蜥蜴人リザードマンたちの間では、を追われた彼らの先祖を『この地にかくまってくれた』と伝えられているそうだ。


 遺跡の状態から分かる通り、随分ずいぶんと昔の話なのだろう。ミリアムの亡き父親の話によると「『竜人族ドラン』だったのではないか?」と考えていたらしい。


 よって、彼らがった今も蜥蜴人リザードマンたちは、この遺跡を守っていた。

 しかし、それで盗賊をするハメになってしまっては、本末転倒な気もする。


 ミリアム自身は赤ん坊の頃、砂漠で母親と一緒に行き倒れていた所を蜥蜴人リザードマンたちに見付けられ、保護されたらしい。


 その母親も身体をこわしてしまったため、すぐに亡くなってしまったようだ。

 状況から産後まもなく、赤ん坊を連れて、砂漠を横断しようとしたのだろうか?


 そうせざるを得ない状況に追い込まれた理由は気になるが――当時、赤ん坊だった彼女が――自分の出生に詳しいハズもない。


 蜥蜴人リザードマンたちのボスであり、盗賊団を取りまとめていた戦士が、彼女の父親役を務めることになったそうだ。


 その際も、祭壇に赤ん坊であるミリアムをお供えしたらしい。

 神から許可を得たため、彼女はこの集落の一員としてむかえられた。


 成人すれば、彼女も集落から出たのかもしれない。だが、その前に度重なる魔物モンスター襲撃しゅうげきで、育ての親である蜥蜴人リザードマンは命を落としてしまった――


(次のボスの座を狙った男に殺された可能性も、考えた方がいいよな……)


 日本の会社でも、自分の能力を高めるより、相手の悪評を広め、好敵手ライバルおとしいれるのは常套じょうとう手段しゅだんである。


 特にコミュニケーション能力が高く、世渡り上手なバブル期の社員には注意が必要だ。ブランド志向が強く、節約より消費を好む傾向にある。


 「高級腕時計」「若者の車離れ」などとうるさいのも、憧れやこだわりが強い団塊の世代とバブル世代だろう。


 車で考えるのなら、地方では生活する上で必須となる。

 しかし、都市部は公共交通機関が発達しているため、それほど必要としない。


 加えて、政府はEV補助金を出し、国内メーカーをつぶす気のようだ。

 自分の生活にあったお金の使い方をすべきだろう。


 少し上の世代からは「甘えている」「忍耐力がない」などと思われていて、就職に苦労した就職氷河期世代からすると「使えない」「いい加減」といった印象が強い。


 俺の立場からすると、長く働くことを『美徳』としている傾向にあるため『厄介な世代』といった印象だ。かく、相性が悪い。


 会社に貢献こうけんしようという意識がムダに高く、愛社精神が強い傾向にあるのだが、空回っているため手に負えない。


 また、上の世代が学生運動を行っていたためだろうか?

 政治に対しては、みょうに冷めた感じがする。


 お酒の席の重要性は理解しているつもりだが、彼らのいう『飲みニケーション』はハラスメントや説教、くだらない話などが主だ。


 また、大切な話はタバコ部屋で行うので、会議の意味がない。

 年齢の上下関係が、そのまま力関係となっている世代でもある。


 彼らが「使えない」とされるのは、日本経済全体の景気がよく、仕事が沢山あったことに起因するのだろうか?


 求人数も多く、企業はこぞって社員を集めていたようだ。

 自分の実力以上の会社に入社できたのだろう。


 当然、入社したはいいが、仕事で十分に能力を発揮することが出来ない。

 そうなると、優秀な人材の足を引っ張ったり、手柄を横取りしたりする方向へ能力を発揮するようになる。


 元々――職場での飲み会や接待ゴルフ、麻雀など――勤務時間外でも仕事上の付き合いをしていたため、顔は広い。社内における印象操作は得意なのだろう。


(直属の上司にあたるため、バブル世代にはいい印象がないな……)


 俺はミリアムに――現状をグガルとダタンへ伝えるよう――指示を出す。

 原因は花から出ている花粉だろう。


 二人が花粉を吸わないように、注意をするよう付け加える。


「分かった」


 とミリアム。俺は地走鳥ロックバードまたがる彼女を見送った。

 さて、次は遺跡の中にいる蜥蜴人リザードマンたちの救出だ。


 遺跡の中へ入るのと並行し『竜のかご』について、エーテリアへ質問する。

 並行作業マルチタスクは社畜のたしなみだ。

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