第三章 砂漠を越えて

第35話 街の探索(1)


 本来は早々に撤退てったいすべきなのだろう。スライムが倒されたことで、この計画を実行した犯人が様子を見にくる可能性があったからだ。


 しかし、すでに俺は元居た世界でミノタウロスを倒している。

 【白闇ノクス】が敵であるならば、存在はバレているハズだ。


(それが直接、人々を襲撃しゅうげきしていない……)


 そもそも【白闇ノクス】が強いのであれば、このように面倒な作戦を考える必要はない。

 むしろ、裏から歴史を操作しているような印象を受ける。


 【終末の予言】を本当の出来事にするため『秘密裏に行動を起こしている』と考えた方が正しいのかもしれない。


 エーテリアが直接、世界へ干渉が出来ないように一種の『しばり』のようなモノがあるのだろうか?


 俺はり残した事もあるので、街へ滞在することにした。

 まずは神殿の探索を行いたい所だが、スライムの粘液が残っている。


 すべて消失するまで時間が掛かりそうだ。

 探索は明日始めることにして、俺は商業地区エリアへ行くことにする。


 先程はミヒルの件もあり、あまり探索できなかったからだ。

 成長したと思われる彼女の服を新たに探す必要もある。


 また同時に、俺の武器や防具を見付けたい。

 ショートスピアはスライムに投擲とうてきしてしまったので、回収は難しい。


 今あるのはダガーとショートスピア、そしてミノタウロスを倒した時に手に入れたバトルアックスだ。


 バトルアックスは強力だが、大きすぎるため、使い勝手が悪い。

 ここはショートソードやレイピアが欲しい所である。


 急ぎ移動し、探索した結果、運良く装備を整えることが出来た。

 エーテリアも手伝ってくれたので、ミヒル用の着替えの入手にも成功する。


 彼女はまだ成長する可能性があるので、使えそうな衣服をいくつか拝借はいしゃくした。

 基本、古着なので、エーテリアに浄化してもらう。まるで新品同様となる。


 さて、肝心のレベルだが【ウォリアー】のレベルは10となり、上限カンストしてしまった。【バランサー】は19だ。あと1レベル上げると上限カンストになる。


 現段階では、これ以上【ウォリアー】は成長させられないので『副職能サブクラス』を【ナイト】に切り替えた。しばらくは剣と盾での戦闘となる。


 ショートソードとラウンドシールドを入手できたので、ようやく冒険者らしくなってきた。やはり、見た目は大切だ。


 また、スライムを倒したことで分かった事がある。どうやら、強化された魔物モンスターを倒した方が、通常よりも経験値が多く手に入るらしい。


 えて魔物モンスターを強くしてから戦う方法もありのようだ。

 だが、その方法は危険なので、仲間を見付けてからにしよう。


むしろ、他の魔物モンスターから入手できる経験値が少ないような気もするが……)


 今は手掛かりが少ない。そこは追い追い調べる事にする。

 俺はショートソードを使うことにしたので、ダガーをミヒルに持たせる事にした。


 一応、使い方はレクチャーしてみたが、まだまだのようだ。

 取りえず、護身用に持たせておく。腕力がなくてもあつかえるだろう。


 次は拠点探しだ。心許こころもとないが、商業地区エリアで食糧も手に入れた。

 食事を作る前に――念のため、周囲を探索し――魔物モンスターを狩る。


 においに釣られて、やって来られても相手をするが面倒だ。

 ミヒルにも魔物モンスター討伐とうばつを経験させようと思ったのだが、まだ怖いらしい。


 俺がショートソードにれる必要もあったので、少しのつもりだったが、拠点にしようと思っていた商業地区エリアより、だいぶ離れてしまった。


 だが、丁度いいので食事をすることにする。

 よく考えたら、寝床と食事をする場所を一緒にするのは危険だ。


 食事の残り香で、寝ている間に魔物モンスターが寄ってくる可能性がある。

 寝る場所とは離れていた方がいいだろう。


 エーテリアの話では、本来は魔物モンスターけの魔法を使用するらしい。

 魔結晶と組み合わせると、持続時間が伸びるそうだ。


 早速、エーテリアに『お願いしよう』と考えた。

 しかし、ゴブリンとウルフが、態々わざわざ高い場所まで登って来るだろうか?


 本来、臆病おくびょうな性格のようだ。

 数も減らしたので、集団でおそってくる可能性も低い。


 窓やとびらふさいでおけば十分だろう。

 当初の予定通り、商業地区エリアで見付けておいた屋根裏部屋を使用する。


 寝る前に適当な木を削って、簡易歯ブラシを作った。

 虫歯も魔法で治せるのかもしれないが、口の中が気持ち悪くなるのは嫌だ。


 まだ塩も十分残っているので、歯をみがく。

 ミヒルは子供なので『歯磨はみがきを嫌がる』と思ったのだが、気に入ったようだ。


 『獣人種アニマ』だからだろうか?

 爪や歯が大事だと、本能で理解しているのかもしれない。


 陽が沈むと同時に眠ることにした。真っ暗だがミヒルは夜目が利くようだ。

 俺も念のため『技能スキル』で暗視を習得しておく。


 壁に寄り掛かり、俺は座る形で――ミヒルはそんな俺に抱き付く形で――それぞれ眠りにく。


 エーテリアはプカプカと空中に浮いたまま横になり、姿を消す。

 ある意味、何処どこでも寝ることが出来てうらやましい。

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