第29話 序盤の雑魚(3)


 まずは正門へと向かうことにした。

 途中、何匹なんびき魔物モンスター遭遇そうぐうしたが最早もはや、敵ではない。


 文字通り蹴散けちらして進む。

 門番のような存在も警戒していたのだが、不在のようだ。


 街をグルリと囲む強固な壁。

 楼門主塔ゲートハウスを調べてみたが、もぬけからだった。


 落とすための石やクロスボウをつための矢狭間やざまが設けてあるので、戦う準備は出来ていたようだ。


 だが、外からの守りに強くても、内側からの攻撃には弱いらしい。

 スライムの出現により『当初の防衛計画は瓦解がかいした』という所だろう。


 ここで手に入ったのはショートスピアくらいだ。

 守りにてっしているためか、門はせまい。


 高さがあるので馬車が通れるくらいだろうか?

 周囲の木々は伐採ばっさいされていたので、見通しを良くしているようだ。


 れている草があったので、エーテリアに見てもらう。

 すると「『結界草バリアハーブ』のようですね」と教えてくれた。


 どうやら、魔物モンスターを寄せ付けない効果があるらしい。

 れているのは水が原因だろうか? スライムは水を必要とする。


 恐らく、スライムが水源をよごしているのだろう。なにかに使えそうなので、エーテリアに一部を復活させてもらい、種を採取する。


 落とし格子ポートカリスを落として、更に内側から木の扉でふさぐ。

 俺は壁面を歩くことが可能なので、出入りには困らない。


 気休めかもしれないが、これでゴブリンとウルフは入って来ないだろう。

 残りの門へと移動することにした。


 今の俺の速度スピードなら、移動時間はあってないようなモノだ。

 街中の魔物モンスターを倒しつつ『東西南北』全ての門を閉じる。


 その頃には、設定していた【ウォリアー】の『副職能サブクラス』もレベル8となった。

 やはり強くなった分、レベルは上がり難いようだ。


 初級の『主職能メインクラス』はレベル20、『副職能サブクラス』はレベル10で上限カンストとなる。

 現在は【バランサー】と【ウォリアー】を足した24が俺のレベルとなる。


 最初の街ではあり得ないレベルの高さだ。しかし、巨大スライムとの戦いを考えるのなら、上限カンストまでレベルを上げたい所ではある。だが――


(装備や薬、食糧も心許こころもとない……)


 この状況でねばるのは、得策ではないだろう。

 それに『主職能メインクラス』を中級へ、クラスアップすることも難しい。


 本来は神殿で行えるようだが、肝心の神殿はスライムに占拠せんきょされてしまっている。神殿へとまる奇跡の力も、今は霧散むさんしているのだろう。


 しばらくは初級の『職能クラス』で頑張るしかない。


(急いでレベルアップする意味も今はないな……)


 あれだけ巨大なスライムだ。倒すことでレベルは上限カンストするだろう。

 効率を考えるのなら、その方がいい。


 次に俺は、必要な道具アイテムを手に入れるため、商業地域エリアへと向かった。

 ろくなモノは残っていない――と思っていたが、案の定だ。


 それでも、少しの食糧と武器や防具を見付ける事が出来た。

 微調整が出来ないため不格好ではあるが、装備しないよりはマシだろう。


 むしろ今まで真面まともな装備をせずに、よく戦ってこられたモノだ。

 乾燥した穀物を見付けたので、消化がいいように細かくして煮込む。


 今回は俺も食べるので二人前だ。エーテリアは食事を必要としない。

 暖かい地方なので、香辛料も豊富らしく、いくつか手に入れることが出来た。


 ミヒルは子供なので、先に食器へ移し、自分の分を適当に味付けする。

 スパイシーなかおりにられたのか、ミヒルも目を覚ます。


(あれ程、連れ回したにもかかわらず、目を覚まさなかったのに……)


 先に水を与えて、トイレも済ませておく。

 食事を済ませた後は、クッキーの缶を見付けていたので三枚ほど与えた。


 正直、食べ物に関してはエーテリアの浄化能力がなければ、大変だったろう。

 再び、ミヒルの口許くちもとと手をくと、着替えされる。


 浄化で綺麗になったとは、破けている箇所まではそのままだ。

 子供の用の服を見付けていたので、着替えさせる。


 髪型も整えたので、少しは女の子らしくなったようだ。

 最初は髪留めを気にしていたが、鏡を見せたら気に入ったらしい。


(少し成長している気がする……)


 ほそり、小柄だったため、小学校に上がる前かと思っていたのだが、小学一年生程度に成長していた。


 流石さすがに食事を与えただけでは、こうはならないだろう。

 何故なぜか、ミヒルのステータス画面を見ることが可能になっていた。


 保護者だからだろうか? どうにも、俺が彼女の『主人』に設定されている。

 確か『獣人族アニマ』は群れで生活するハズだ。


 俺が『人間族リーン』なので『族長』や『ボス』ではなく『主人』なのかもしれない。


(飼い主みたいなモノだろうか?)


 レベルが5もある。背負って戦っていたので、俺が手に入れるハズの経験値が少し流れたようだ。成長はその所為せいだろう。


(まあ、元気になったのならいいか……)


 どうせ、放って置いても俺のレベルは上限カンストを迎える。

 ミヒルを強くするのも手だ。


 【フェンサー】か【シャーマン】辺りが妥当だろう。

 俺はステータス画面を操作し、ミヒルを仲間パーティーに加えた。

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