第25話 無人の街(1)


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  無人の街『リディエス』

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 エーテリアが最初におとずれる街として、この場所を選んだのも、大きくてにぎやかな場所だったからだ。


 この街で俺たちは『旅の仲間』や『道具アイテム』『情報』などを集める予定だった。

 本来の目的は砂漠にある『神殿』となる。


 なんでも【終末の予言】というモノがあり、その実現を阻止そしすることが俺の役目らしい。裏では【白闇ノクス】と呼ばれる存在が動いているのだろう。


 だが、対決するにしても準備は必要だ。

 まずは、この街で基礎解説チュートリアルを済ませる予定だった。


 旅に必要な『道具アイテム』を購入し『冒険者ギルド』へ登録。

 『仲間パーティー』を集めて、砂漠を越える。


 まさに冒険だ。それが、いきなり無人の街に転送され――


(初手から魔物モンスターに頭をくだかれそうになってしまうとは……)


 死んでも復活できるとはいえ、下手へたをするとトラウマになっていたかもしれない。

 とんだ基礎解説チュートリアルになってしまった。


 俺は新たな『技能スキル』〈ワイドウォーク〉を習得する。

 これにより、壁面や水面も一定時間なら、歩けるようになった。


 壁を走り、屋根伝いに移動する。余裕というワケではないが――子供をつかまえて、楽しそうに笑っている――ゴブリンの場所へと到着した。


 まだ子供は殺されてはいないようだ。


(ギリギリ間に合ったか……)


 魔物モンスターたちにとっては楽しいショーなのだろう。

 全員が子供の方へ視線を集中させている。


(捕まっている子供には悪いが……)


 俺は先に油断をしている周囲の雑魚ざこを撃破する事にした。

 今の俺は――カッコ良く子供を助けられる程――強くはない。


 まずは屋根から壁を伝って走り、奇襲きしゅうをかける。逃げるにしても戦うにしても、集団戦にれていない俺にとっては、相手の数を減らすことが重要だ。


 大抵の生き物は頭上からの攻撃に弱い。

 それは魔物モンスターも例外ではないだろう。


 まずは素早いデザートウルフをり飛ばし、それを別の魔物モンスターにぶつける。

 大きなダメージにはならない。


 だが、一度の攻撃で二匹の動きを阻害そがいすることが出来る。

 前回の戦いで、学習した結果だ。


 俺の攻撃は移動と組み合わる事が必須となる。

 そのため、囲まれて動きを封じられる事態はけたかった。


 常に空間スペースを確保する必要があった。優位に立ち回れているのは、建物の壁面を移動することが可能になったため、立体的な動きが可能になった事が大きい。


 しかし――これが業務改善だ――といっても上司は認めようとはしないだろう。

 工場での勤務でなければ、基本的に管理職の人間は業務改善を嫌がる。


 上からの命令で仕方なく対応するのだろうが――忙しい状況で――そんな事はやっていられないからだ。


 年功序列の減点方式で管理職になった年寄りたちは『飲みニケーション』と『パワハラ』は得意でも『人に教える』『指導をする』ことにおいては無能だ。


 また『総務へ出す報告が面倒』『自分の部署には改善する内容などない!』『出世には関係ない』と思っているのかもしれない。


 ムダに張り切るのは『真面目なタイプ』か『良い評価をもらいたい』という人間なのだろう。ただ、そういう人物は社員から嫌われていた。


 まあ、繁忙はんぼう期に担当者を呼び出して「すぐに改善策を提出しろ!」「関係者を集めて会議をするんだ!」と言われても現場は困る。


 業務の進捗状況などを報告するたびに、業務改善という名で新しい仕事が増えるのだ。病気になる社員や、会社を辞める社員があとを絶たない。


 また、個人で出来る改善案を提出した場合、一回でもらえる報奨金は三百円程度。

 これでは『弁当代にもならない』という状況だった。


 それだったら、会社を休ませるべきではないだろうか? その方が働ける。

 恐らく『総務』辺りは数さえ出せば、満足していたのだろう。


 指示を出された部署――管理職と社員の双方――には利点メリットが感じられない。

 また、上司によっては、業務改善の認識がまちまちだったりする。


 最も困る勘違いは、経営者の独断で『現場の了解を得ず、既存の業務フローを変更する場合』だろうか? 経営者と現場の間には、常に温度差があるようだ。


 通常、業務改善を行うには課題を明確にする必要がある。

 つまりは業務内容の『見える化』だ。


 しかし、ここで問題となるのは『業務を隠しておきたい人間が多い』という事だろう。自分の仕事を取られる。いそがしいフリをしているのがバレる。


 この仕事が誰にでも出来るようになると、会社に自分の居場所がなくなる。

 そんな風に考えてしまう社員たちだ。


 彼らにとって業務改善は悪であり、敵なのだ。

 結果、反対勢力となってしまう。


 彼らの在り方にも問題はあるのだが『コツコツやっていれば、いつか結果が出る』といった昭和の働き方が通用しなくなっている事も原因だろう。


 資本主義に走り、数字だけを追い掛けてきた企業のツケといってもいい。

 日本が豊かだった時代とは、もう違う。


 業務改善の本来の目的は『事業における課題を発見し、解決することで効率的な仕事環境を作り出すこと』にある。


 だが、心に余裕がないのか、その多くの人が目的を見失ってしまっている。

 そもそも、業務改善とは継続しなければ意味がない。


 個人が活躍するだけでは、会社が良くなることはないのだ。

 業務改善は最低でもチーム単位、もしくは部署単位で取り組む必要がある。


 だが、それはチームワークを育て、社員同士のつながりを強固にすることでもある。

 果たして、それを上司が良しとするだろうか?


 『集団』での力が増し『個』である自分の力が弱くなるのを嫌う。

 そんなバカげたこと考える人間もいるということだ。


 出世できる枠は決まっている。ならば他人の足を引っ張ればいい。

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