第16話 そして、異世界へ……
ミノタウロスも視力が回復していなかったのなら、そうしただろう。
だが、ミノタウロスは『醤油』を
ひょっとすると『好奇心』というモノがあったのかもしれない。
見たことのない『醤油』に対し、興味を
だが、それが命取りとなる。
怪力によって
ブシャーッ!――と勢いよくミノタウロスの顔面に掛かった。
「ブモモモォーッ!」
(もう遅い……)
『醤油』が目に入り、痛みに苦しむミノタウロス。
場合によっては浸透圧により眼球にダメージを受け、視力が低下する危険もある。
そして、斧を振るった。
頭は角のある
股間に当たる位置には、立派なイチモツがぶら下がっている。
女神を『
足には
加えて2mを越える巨体。前方への突進が脅威となっただろう。
しかし、バランスが悪い。細かいフットワークは苦手そうだ。
また、四つん
切断とまでは行かなかったが、振り下ろした斧の刃が骨まで届く。
この手の相手は、巨体を支える足が弱点と相場が決まっている。
俺は飛び
だが、必要以上に警戒してしまっていたようだ。
顔を両手で
そして再び、穴へと落下していった。
視力を失い、足を怪我している状態では、穴から
俺は再度、梅吉に声を掛ける。
この間、刈った雑草が袋に入っている。それを持って来るように指示した。
そのまま捨てては、ゴミになってしまうだけだ。
雑草や落ち葉は
俺はそれを穴へと捨てる。
そして、残しておいた
モクモクと煙が上がり、
この場合は焼肉ではなく、煙による
ミノタウロスはビーフジャーキーになったようだ。
一方でエーテリアは
穴の方は放って置けば、自然に
だが、それよりも、俺にとってはエーテリアの視線の方が厄介だった。
彼女はただでさえ大きな瞳を開き、目を輝かせている。そして、
「やはり、私の見立てに狂いはありませんでした♪」
と嬉しそうだ。今回は
しかし、牛であるミノタウロスにとっては『天敵』といえた。
これにて、今回の事件は解決だろう。
だが、彼女がこの地に残っている限り『同じような事件は起こる』と言う話だった。【
それを放って置ける俺ではない。
祖父も
両親は俺が子供の頃に離婚しており、俺を引き取っていた母親も他界している。
結婚もしていない以上、この世界に
(覚悟を決めるべきかもしれない……)
そんな事を考え、穴からの煙が消えるのを待つ。
住職は
エーテリアが『治療してくれる』という事で、後遺症などの問題もないようだ。
彼女の話によると
「やはり、ユイトさんは選ばれし社畜でした」
とエーテリア。全然嬉しくはない――
女神様は異世界へ連れて行くべき人間を『俺だ』と確信したようだ。
いや、最初から決めていたのだろう。
それから一週間後――
身辺整理をした俺は、女神と一緒に異世界へと旅立った。
もう、この世界に戻って来ることはない。
一人の社畜が消えた所で、世界が変わる事はないのだから。
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