第13話 魔物と遭遇した日(2)
寺へと続く階段を
「
と短く告げた。近くに熊がいるのかもしれない。
子熊がいたのなら、母熊の凶暴性が増していそうだ。
本来なら、ここで引き上げる所なのだろう。だが、寺には住職がいる。
様子を見に行く必要があった。「分かった」と梅吉。
「エーテリアさん、オレと一緒に車で待っていましょう」
と早くも逃げ腰になっている。俺は、そんな梅吉の耳を引っ張ると、
「
そう言って、再び階段を
「痛いっ! 分かったから、待って……」
と梅吉。観念した様子だったので、俺は耳から手を放す。
やや
「お前、今、オレのこと『餌吉』って呼ばなかった?」
そう言って首を
「言ってないぞ『餌吉』」
と答えた。「やっぱり、言ってるじゃん!」と梅吉は抗議する。
そして、エーテリアの方を向き、気持ちの悪い笑顔を浮かべると、
「
こんな奴とは別れて、オレと付き合いません?――と言い出す。
まったく反省していないようだ。エーテリアは
「いえ、私にはユイトさんが必要です♡」
と答えた。それは『異世界を救済するのに』という
ヨネ婆の時といい、先程から言葉を
まるで俺を
困ったモノだと思いつつ、
「遊んでいる場合じゃない……」
あまり大きな声を出すなよ――俺はそう言って
草や木の枝を刈る分にはいいが、サイズ的には
それでも、俺は先を急ぐことにした。
基本的に動物は自分より大きな相手を
俺はリュックから折り畳みの傘を取り出すと梅吉へ渡す。
「熊が出たら、広げて気を
と告げておく。「
「それとも、一撃当てるか?」
俺が
ヨネ婆の孫とは思えない反応である。
体型的には斧でも
俺たちは境内へと到着する。周囲を警戒したが、特に変わった様子はなかった。
だが、以前として
それに、いつもより静かだった。
(
動物の気配がないだけなら分かる。熊を恐れてのことだろう。
だが、虫まで大人しいのは変だ。
取り
(この間、草を刈っておいて良かった……)
そんな事を思いつつ、住職が居そうな家屋の方へと向かう。しかし、
「待ってください」
とエーテリア。「
魔物というとアレだろうか? ゴブリンやスライム。
どうして、そんなモノが存在するのか彼女に質問しようとしたが【
「数は分かるか?」
俺の問いに、
「あちらに生まれたばかりの気配が三つ。それと大きなモノが一つ……」
今にも生まれようとしています――とエーテリア。本堂の裏を指差す。
彼女の言い回しから、転移してきたのとは違うようだ。
魂だけをこちらの世界へ送り、たった今、受肉したような感じだろうか?
「それは人を
俺は確認するまでもない質問を口にする。エーテリアは、
「生き物すべての敵です」
と答えた。ヤレヤレである。
放って置くワケにも行かないので、先にそちらを確認しよう。
『生まれたばかり』というのであれば、対処できるかもしれない。
どうやら、違和感のようなモノの正体は魔物が原因だったようだ。
(簡単に倒せるなどと、期待はしない方が良いだろう……)
俺は人差し指を
そう言えば、前回来た時、穴があった場所のような気がする。
近づくと「ゲギョ」「ギョギョ」などと声が聞こえた。
建物の影に隠れて様子を
ゴブリンだろうか? 醜悪な形相で異臭を放っている。
こちらには、まだ気がついてはいないようだ。
俺はエーテリアから『天ぷら油』を受け取ると反動を利用し、容器ごと弧を描く形で放った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます