第12話 魔物と遭遇した日(1)
「どうした? そんな嫌そうな顔をして」
と
ガラが悪いので『仕事を頼み
だが、一番の理由はだらしない事だ。
顔役の息子という事もあり、皆も強くは言えないようだ。
あまり良くは思われていないのだろう。
関わると面倒なタイプなので、結果、言いやすい俺に仕事が回ってくる。
俺自身、無職で独身なのがバレているため、
会社でも「独身だろ?」という理由で休日出勤や残業を頼まれる事が多かった。
今から考えれば、結婚していようが、独身だろうが同じ会社員だ。
だが、それで面倒な仕事を他人に押し付けていい理由にはならない。
考えるとイライラしてしまうので、今は忘れることにしよう。
「会って嬉しい顔でもないだろ?」
と俺は梅吉へ返す。学生時代、一度、
文句があるなら
今の時代だと大人が
だが、あの時代は大体、喧嘩をして仲良くなる。
お互いに軽口を叩ける程度には、今でも仲がいいつもりだ。
「確かにな」
梅吉はそう言って納得した後――アッハッハッハ!――と笑う。
そして、すぐにエーテリアの存在に気が付いたのか、目を丸くしているようだった。
彼女の全身を
「うちのユイトさんが、お世話になっております」
とエーテリアは頭を下げた。だから、その
まあ、相手はスケベなオッサンなので、勘違いをさせておいた方がいいだろう。
「彼女はエーテリア、一緒に暮らしている」
俺は
サングラス越しでも分かる、
このまま放って置くと文字通り、指を
そんな、みっともない孫の様子に対し、
「ボーっとしてんじゃないよ! 暇なら一緒にお行き」
とヨネ婆。恐らく、梅吉は家にいてもゴロゴロしているだけなのだろう。
理由を付けて、家から追い出そうとしているようだ。
バシンッ!――孫の尻を叩くヨネ婆。これも愛の
ヨネ婆は甘やかして育てたことを後悔しているのかもしれない。
「
と梅吉。すっかり中年太りしてしまった肉付きのいい尻を
脂肪のお陰でダメージは少なそうである。
だが、これ以上、尻を叩かれるのは
ヨネ婆から逃げるように梅吉は距離を取った。
俺としては別に、ついてこなくてもいいのだが、梅吉からすると家に居てもヨネ婆に小言を言われてしまうだけなのだろう。
それにエーテリアにも興味があるようだ。
鼻の下を伸ばしつつ、寺まで付いてくることにしたらしい。
俺の運転する車の中で梅吉は移動中、デレデレとだらしない顔で――いや、それはいつも通りか――エーテリアへと話し掛ける。
歳をとった分、場数を踏んだ
(
寺に着いた俺は、そんな結論に
一応、護身用の道具が入ったリュックを持って行くことにした。
ただ、今は熊よりも、梅吉の方が危険な気もする。独身を
車から降りた俺は作業着に着替え、エーテリアに虫除けスプレーをする。
今度は彼女に頼んで、俺にもかけてもらった。
「オレには?」
と梅吉。正直『虫に刺されればいい』と思ったのだが、仕方がない。
駐車場は無く、草を刈った広場へ車を停めただけだ。
これから階段を上って
寺は山の中にあるようなモノなので『変な虫』も多い。
(いや、この場合『変な虫』は梅吉の方か?)
仕方なく、俺がスプレーをしてやる。
「ちょ、顔は止めろ」
と梅吉。当然、
「人の彼女の尻ばかり見るからだ」
俺が説明すると、
「失礼な、オレは胸派だ! だが、尻もいい」
そう言って、
俺のそんな気持ちなど一切、伝わっていないらしく、
「そっちこそ、
と梅吉。作業着に着替えた俺の格好が気になったのだろう。いつでも取り出せるように懐中電灯を胸ポケットに、
ヨネ婆から預かった荷物はエーテリアに持ってもらう事にした。
彼女には普段から、畑仕事を手伝ってもらっている。
結構、力持ちなのを俺は知っていた。
「熊が出るとヨネ婆に言われた」
俺が説明すると「
「ちゃんと守ってね」
とサングラスをずらし、俺へ向けてパチリとウィンクをした。
(こいつ、本当に
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