第5話(2)昼の街
「う~ん……」
翌日、街を歩くイオナが頭を抑える。
「どうした?」
リュートが尋ねる。
「いや、頭が痛くて……」
「飲み過ぎたんだろう」
「どうして止めてくれなかったんですか?」
イオナの言葉にリュートは立ち止まって目を丸くする。
「君、だいぶ理不尽なことを言っているぜ……」
「それは分かっていますよ」
「自覚はあるのか、なおさら質が悪いな……」
「ほどよいところで止めてくださいよ……」
「なんでそんなことをしなきゃならん」
「人生の先輩としてですよ」
「知るか」
「酷いですね」
「君の言い分の方が酷い。大体だな……」
「大体?」
「君は自分にとっての適切な酒量すら把握出来ていないほどのお子ちゃまなのか?」
「ぐっ……」
「そういうところだぞ……」
リュートが歩き出す。イオナが追いかける。
「ど、どういうところがですか?」
「……スカウトマンに向いていないってところだ」
「な、何故ですか?」
「ここだよ」
リュートが自らの目元を指差す。
「目?」
イオナが首を傾げる。
「そうだ」
「視力は良い方ですよ」
イオナが自らの目元を抑える。
「そういうことじゃない」
「どういうことですか?」
「はあ……」
リュートがため息をつく。
「ろ、露骨なため息!」
「そりゃあため息もつきたくなるさ……」
「目がなんなんですか?」
「見極めだよ」
「見極め?」
「ああ、洞察力と言い換えてもいいかな……そういうのが決定的に欠けている」
「ぐっ……」
「諦めた方が良いんじゃないか?」
「そ、その辺は今後鍛えていけば……」
「無理だな」
「む、無理⁉」
イオナが驚く。
「そういうものはセンスだ。つまり……」
「つまり?」
「天性のものだ。もとより備わっているものなんだよ」
リュートが右手の人差し指で自らの側頭部をトントンと叩く。
「そ、そんな……」
「……と、いうことだ。ここらで見切りをつけた方が……」
「……せんよ」
「え?」
「諦めませんよ!」
「ええ……」
リュートが困惑した表情になる、
「なんですか、その表情は⁉」
「いや、ひょっとして、まだついてくる気か?」
「それはもちろんですよ!」
「マジか……」
「マジですよ!」
「勘弁してくれよ……」
「勘弁しません! 少なくとも、今回のパーティーメンバーのスカウトが完全に終わるまでは同行させてもらいますからね!」
「おいおい……」
「嫌ならお金を支払ってください!」
イオナが右手を差し出す。周囲の注目が集まる。
「お、往来で誤解を招くような言動はやめろ……!」
リュートが戸惑う。
「では、ご同行しても構いませんね?」
「仕方がないな……」
リュートが後頭部を掻く。
「あらためてよろしくお願いします」
イオナが笑顔で頭を下げる。リュートが呟く。
「そうだ、思い付いた……」
「はい?」
「そろそろ君なりのスカウティングを見てみたいところだな」
「わ、私なりのスカウティングですか?」
「ああ、そうだ。君が役に立つということを証明して欲しいね」
「は、はあ……」
「誰か良い人材はいないか?」
「い、いきなり言われても……」
「リストアップしておけよ」
「……」
「沈黙されてもどうにもならん」
「……そうだ! こちらに!」
イオナが走り出す。しばらくして、占いの館につく。
「これは……昨夜きたところか……」
「そうです!」
イオナが中に入る。
「う~ん?」
金髪碧眼でツインテールで容姿端麗でスタイルの良いエルフがイオナに視線を向ける。
「お姉さん! 冒険に行きましょう!」
「はあ?」
「勇者さんと一緒に冒険です!」
エルフが耳を抑える。
「うるさいなあ、大声出さないでよ、頭にガンガン響く……」
「富と名声が得られますよ!」
「いらないよ、そんなもの……」
「え?」
「良い男とこれがあれは良いさ……はあ……」
「お、お酒臭い! こんな昼間から飲んでいる⁉ リュートさん、この人をスカウトするのはやっぱり止めておきましょう!」
「そもそも占い師を連れて行ってどうするんだ……」
鼻をつまむイオナをリュートは呆れた目で見つめる。
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