わかれ
俺はもう何日も前から姐さんを探していた。姐さんは忙しい。それはずっと昔からそうであり知っていることだ。だが。
「ッたく。姐さんってば武器作ってーって言ったくせに全然会わねえし見当たんねぇしあークソッ!」
せっかく渾身の出来だというのに。アンナとかいう鬼ババのフラスコ作りから逃げてきたというのにどこにいるんだ。
「あ、おーい!ルツー!」
この声はヘリオ兄さんか。ニコニコしているということはいい事でもあったのだろう。だが果たして真実は。
「ヘリオ兄さん。機嫌いいねなんかあったの?」
「いやぁ実はさっきさ新しい奥義完成させたんだけどそれをたまたまレイが観ててくれてさ!褒めてくれたんだよなぁ。んで名前も決めてもらったんだけどルツ、なんだと思う?」
「姐さんってネーミングセンス皆無だったはずだけど、そうだな、それってどんな感じの技なんだ?」
「技じゃなくて奥義な。えっとな、まぁいいや実演してやるよ!せっかくだしな。」
「あーちょっとまってくれ。ここじゃ剣をぶん回すのに向いてないから俺の部屋でぶん回してよ兄さん。廊下の壁ぶっ壊したらシュンに怒られるぞ。」
「た、確かに、よ、よし部屋行こうか。」
技を見るために兄さんを移動させ部屋のドアを閉める。ヘリオ兄さんはいつも左腰にさげている剣を抜いていつもの構えをとった。俺が昔作った剣はいつも右腰にさげているのだが未だに抜いているところを見たことがない。今回もきっと抜くことはないだろう。
「んじゃ行くぞ。」
いつもニコニコしているヘリオ兄さんの顔が真剣な表情に変わった。モードが切り替わったらしい。まわりの空気がしんとなる。兄さんが靴を後ろに引く音、剣が空を切る音。今はそれだけしか聞こえない。
「夜空、
妙見星…なるほど北極星か。姐さんが考えそうな名前だ。っと、名前が気になりすぎて奥義を見忘れていた。ヤバい。だが焦らずにここは…
「流石兄さんだな。技は結構かっこいいし名前も…うん、姐さんっぽかった。とにかくよかったよ。」
「本当か?!ならよかった。レイが付けてくれた名前だから当たり前にいい名前なんだけどかっこいい名前が奥義に合うか心配だったんだよ。でもお前が言うなら間違いないな!ありがとなーじゃあまた明日な!」
手を振りながらヘリオ兄さんは俺の部屋を出ていった。どうやらごまかせたらしい。よかった。まぁあのネーミングセンスは流石と言うべきか。そんなことはさておき姐さんを探さないと。
この時間は大体の確率でリアに勉強を教えている時間だ。ならメインルームか。
「…一応、姐さんに会った時のために新作持っていくか。ま、会えるかは五分なんだけどな。」
出来て数時間は経った新作の剣を持ち俺は部屋を出た。メインルームは俺の部屋から少し遠い。4、5分歩いたところにある。まぁおかげで錬成中は静かで逆に有難いのだがこういうときは不便だなといつも思ってしまう。
メインルームに向かって歩いていると前からレナートが歩いてきた。右手には本を左手にも本を。しかもどちらも薬草に関するものを持っていた。なるほど、誰かのパシリか。大体は予想がつくのだが一応声をかけてみることにしよう。
「よーレナート。」
「おうルツ。どうかしたか?」
「いやなんな両手に本抱えてるから誰のパシリやってんだろと思ってな。」
「なるほど、そういうことか。これはレイさんに頼まれてな。ライラに置いてくるところだ。言っておくがレイさんに頼まれたからパシリじゃない。」
ライラとはライブラリーを略した言葉だ。間違いなく図書室でいいのと思うのだがここの長は姐さんだ。つまりは姐さんに従わないといけない。まぁ俺も他のヤツらも1人を除いては絶対服従しているから特に問題は無い。それに姐さんに文句を言えるのはシュンとメリディアぐらいだ。
「なるほどな。大変だな、レナート。」
「そんなことはない、第一レイさんを手伝いたい人なんか俺の他に沢山いるのにあの人は俺を選んでくれた。これを幸福と言う以外の言葉で表せるなら教えて欲しいくらいだね。」
「あーそうですかー。あ、そうだ。お前本頼まれたなら姐さんに会ったんだよな?今どこにいるんだ?」
「俺が頼まれた時はまだメインルームにいたぞ。リアちゃんとルークに勉強を教えてたしな。」
「じゃあまだメインルームにいるのか。おっけ。助かった。」
「おう。じゃあ俺はもう行くからまた明日。」
「また明日。」
俺たちのグループ、カペナウムは色々なルールが存在している。例えばさっきの「また明日」。これは姐さんが決めたルールだ。いや、カペナウムのルールは基本全部姐さんが決めている。疑問も出ると思うがなぜ「また明日」と言うのか。これをと俺たちがいうようになったのは理由がある。少し長い話になるが回想になるだろうし少し話すとしよう。
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ここから話がややこしくなります。大事なこともかなり詰まってきます。
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