帰宅5
「…今日も尊きご尊顔、うーん最高ですね。ね、ナーシャ。」
「カメラ…とかいうのがあれば毎日このご尊顔を何時でも見られるらしいなのですよ。ナトリ。」
「欲しいです。」
「欲しいですね。」
「シュンにお願いするのです。」
「それは後なのですよ。まずはあと10分後に姉様を起こさなければ。」
時間に厳しい双子のナトリとナーシャ(本名はナターシャ)。この2人は非戦闘員で主に施設の掃除や料理などを担当している。所謂メイドのようなものだ。この2人はたまたまマスターと出掛けた(何故そこに行ったのかは未だにわからない)奴隷市場で売っていた子供たちだ。最下級奴隷の烙印を足の裏に押されているためきっと親がお金欲しさに売ったのだろうと推測できる。それに買った、いや攫った…?当初はどちらとも全身に鞭で打たれたかのような傷跡が大量に残っていた。あれは本当に見るに堪えなかったなとついつい思い出してしまう。
「……10分なのです。ナトリ。姉様を起こしてくださいなのです。私はカーテンを開けるのです。」
ナーシャ、そのカーテン…ボロボロです。開けても開けなくても陽の光が入ってくるんですよ、
「姉様、姉様、朝です。10時ですよ。起きてくださぁい。」
「ん、んう、起きる、起きるよぉ、起きます…10分後に…ね…」
朝はめっぽう弱い方だ。日が当たるのをみると目が痛くなってしまう。別に目が太陽に弱いとかではないのだが。単に夜動くことが多いからかもしれない。…幼少期の影響で。
「…あっ、姉様、姉様。ルツが新作の姉様の武器作ったって言ってましたよ。」
「んーー……あとで……」
「わかりました姉様、また後で起こしにくるのですよ。」
ーーーーーーーーーーー
おはようございます。ただいまの時刻は……わからないけど空はもう夕暮れですね。
「……やらかした。」
リシアちゃん達の勉強の時間……とっくに過ぎてる、そういえばナトリがルツがなんとかって言ってたような、はぁ。リーダーとしてあるまじき行為をまたやってしまった気がする。
「……まずは、リアちゃんに謝罪するところから朝が始まりそうだなぁ、」
ーーーーーーーーーー
世界はAIが支配する世界となった。いやそれは日本だけというべきだろうか。アメリカやイギリス、フランスなどの先進国はAIと対等な関係を築きあげよりよい社会のため、色々な開発を推し進めていた。例えて言えば歴史ミュージアム。過去に起きたその国独自の文化や紛争など。正しい過去を歴史を今日に伝えるためにAIと人間は手を取り合っている。そう、それこそ争いも殆どなく。対して発展途上国を見てみようか。発展途上国ではAI推進派と反対派がバチバチにやりやっている。日夜どこかでテロが起き既に都市が1つ壊滅した国があるのだ。誘拐、監禁、見せしめの殺人。これが当たり前のように行われている。だが、それを止めようとする動きはあまりなくテロリストがテロリストを殺すという構図が出来上がりつつあった。発展途上国の少し廃れた街を歩いている人に職業は?と聞けばテロリストです!と言われ銃をぶっぱなされるなんてこともほぼ日常なのである。
「……ということで、私たちはそのテロリストを殺すためのテロリストという訳で……えーっと、リ、リアちゃん?ね、寝てる……。」
「リシアちゃんは寝かしといていいんじゃない?それよりその話の続き聞きたいな。日本は?日本はAIに支配されてるの?さっきの濁し方というかなんとなくそう思ったんだけど。」
この子はルーク。今日はやたらと前のめりになっている。こういう話は好きなのだろうか。
「えっとね。日本は、ちょっと特殊でね。日本は一応先進国の仲間入りをしているんだけど法律っていう法律がなくて。いやまぁ、一応あるにはあるんだけどね。その法律ってAIが作った法律なんだよね。アメリカとかフランスとかは人間が作った法律をAIが色々調整したものなんだけど、日本はマザーコンピュータ、通称Motherが作ったんだ。女性の形をしているからMotherね。それで、Motherの作った法律を国民が守っているのかどうかを監視するために創られたのがアドミニストレータ。監視者。各47都道府県に置かれててそうだね、強いて言うなら昔で言う知事みたいなものかな。」
「……へぇ、じゃあそのMotherが壊れたらどうなるの?」
「んーこれは憶測でしかないんだけど多分日本は崩壊する。大混乱が起きて事件事故が大量発生するかな。インターネットも今日のニュースとかも全ての統括はMotherだからね。アレは全てを管理するから。きっとそうなると思うよ。まぁそんな未来こないと思うけどね。Motherなんだし。……母が国民を……我が子を殺すなんて見殺すなんてそんな馬鹿げた話あるわけないから。」
馬鹿げた話だ。本当にね。Mother。
「なるほど。Motherか。覚えた。ありがとう、姉さん。」
「世界情勢とかのことなら任せて!計算系は……あんまり……得意じゃないんだけど……」
「あはは、確かに。計算とかはシュンの方が姉さんよりいつも少し早いよね。」
「いや少しどころの話じゃないよ、えっと、なんだっけ、あ、そうそう四則演算は私昔っから出来ないからね。身体が受け付けてくれないんだよ、」
「リアは……けいさん好きー……たしざんたのしいよ。」
机に突っ伏して寝ていたリアちゃんがどうやら目を覚ましたようだ。
「おはよう、リアちゃん。」
「おはよぉーおねえちゃん、もうじゅぎょうはおわり?」
「今日の分はね。ごめんね。リアちゃん。私がまた寝過ごしたせいでご飯の後になっちゃって。眠いよね。アンナに迎えに来てもらおうか。グライド、アンナ呼んできてくれる?もし嫌だって言ったら……薬の被検体いや血液提供者になってあげるからって。」
「了解、リーダー。」
グライドはいつもニコニコしている。だが他の人に聞くと怖いとか顔が死んでいるとか言っていた。そんな姿は見たことないのだが。
「リアちゃんもうちょっとだけ待っててね。今アンナくると思うから。」
「はぁーい。」
そういいながらもリアちゃんはうつらうつらとしていて今にも寝そうな感じである。体内時計だと20時ぐらいなのでまだまだ夜は始まったばかりなのだが普通はもう寝る時間である。まぁ、我々は見回りとかがあるためまだまだ寝ることはしないのだが。
「リーダー。連れてきたよ。」
5分も経たないうちにグライドがアンナを連れてきてくれた。リアちゃんはもう夢の中らしい。再度机に突っ伏して寝ていた。しかもお菓子を沢山食べるというなんとも可愛らしい夢を見ているようで「チョコ!」とたまに寝言を言っていた。
「アンナ、リアちゃんをお願い。」
「はーい。あーそうそう新薬のことだけど、出来たよ。殺傷能力が高い毒薬。オーダー通りにアンボイナガイで。何に使うのかは知らないけど時間が空いた時にでも取りに来てちょうだい、あとは、えーっとなんだっけ。あーそうそう、さっきそこでルツにあったんだけどアンタのこと探してたよ。例の武器のことじゃない?」
「あーそういえば、そんなこと言われたような気もしなくもなくもないような……」
「どーせ、あのツインメイドが言ってたんでしょ。ということは朝からアイツは探してるのね。やばぁ。まあいいわ。あとで行ってあげな。あと新薬の件よろしく。おーいリーア寝てるところ悪いけど部屋帰るよ。レイ、また明日。」
「んー」
そういうとアンナは片手でリアちゃんを抱き抱えて帰って行った。
「……いつも思うんだけど、アンナって腕細いのになんであんなに力あるんだろ……」
「アンナの姐さんは実験に失敗した時に箱に実験機材とか入れてそれで数式?みたいなのブツブツ言いながら筋トレしてるからだと思うよ。」
「そんなことしてるんだ、知らなかったな。」
あのアンナがそんなことを。見た目にそぐわないと言うか凄いな。というか実験器具よく壊したーとか言ってるのはなるほどそれが99%原因か。
「ルツは本当に大変ね、」
「いや、あれは大変というより多分生き地獄レベルだと思うよ、姉さん……」
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