帰宅4

私は知っているのだ。こういうケンカの原因は大体しょーもないことだということを。

えぇ、今回もそうでした。アレンとエレナの喧嘩の原因は目玉焼きになにかける論争でした!

アレンは醤油でエレナは塩。正直どっちでもいい、のだが。日本人の私からすれば圧倒的醤油派である。だがまぁ塩もわかる。日本にいた時は目玉焼きが最早一日の食事であったからよく調理室から塩を少しだけ盗んでかけて食べていたものだ。醤油は持ち運びが不便だったからね。その分塩は少量だけ盗めばバレなかったのだ。今回はお互いにどちらも良いということで解決したのだけどそれでも納得いかなかったのか2人は他の人にも聞いて回るといっていた。個人的な予想だと半々で別れる気がするのだが。さてさて。

「…なぁ、怜。俺の話聞いてる?」

「うんうん聞いてるよーなにー」

「それぜってぇ聞いてねえやつじゃん。ったく、あ、ほらそこ木の根っこある。」

指をさされても夜だし明かりないから見えません!ということで足を引っ掛け盛大に転んだ。

「ぐへっ!」

「おー顔面からいったな。大丈夫か?」

「いたい…」

「だろうな。ついでに割とでかめの石に頭ぶつけてるしな。ほら手。」

負の連鎖すぎる。せっかく風呂に入ったのにまた入り直さないといけない。何故なのだ、くそー

「ん、ありがとう。てかさ隼。いい加減ここの荒地から畑とかにしない?ここ通る時転びたくないんだけど。」

「確かにな、考えとくよ。それより早くアレにいくぞ。」

「はいはい。」

服についた土を手ではたき落としてふと空を見上げた。空には夏の大三角形が綺麗に光を放っていた。今日も良い星空だ。

「…綺麗な星空。明日は晴れそうな感じがするなぁ。」

「…明日はルナリス予報だと雨だぞ。」

「むっ、人が感傷に浸ってる時にそんなこと言わないのっ!」

「んな理不尽な…」

「どこが理不尽だバカっ!」

ったくいつになったら人の心を理解できるようになるのか隼は!何年一緒にいると思ってるんだ全く。10年、そう10年である。10年も一緒にいるのにやれやれである。言ってはあれだが女にモテなさそう。

「…ふっ」

「おい、今失礼なこと考えただろ。」

「べっつにー?」

でもそれでも。隼はなんやかんやで隠れファンができてるかもしれない。まぁこれも学校とかに行ってたらの話だけど。

「まぁいいけどさ。ほら着いたぞ。ささっと終わらせようぜ。」

「はいはい。」

なにを終わらせるか。それはこの島を覆っている光学迷彩の充電だ。私たちがいるこの施設…もとい島。ここは海の上に建設された結構最近の施設だ。

最近の、といっても数十年も前の話だけど。もとは訓練施設だったらしい。なんの訓練施設かは知らない。でも内装的には射撃訓練施設といったところだろうか。広さは東京ドーム3個分と割と普通サイズ。いや結構広いのかな?マスターが言っていたのだが私は行ったことがないので知らない。

元の話に戻ろうか。光学迷彩はこの施設を海と同化させるためにある。仮にも私たちは銃をぶっぱなして敵を殺すやばい集団だ。流石に隠さないとまずいらしくセーレさんがここを隠すために作った機械それが充電式光学迷彩装置である。充電式なのでまぁなにかを電池として使うのだが何故か、そう何故かその電池は残飯なのだ。最早残飯処理機という名前を追加してもいいのではないかといつも思っている。

「っと、おい怜。鍵。」

「ちょっと待ってね。ポケットに入れたはずだから。」

暗いので手探りでポケットをあさり鈴付きの鍵を取り出す。その鍵を光学迷彩装置残飯処理機の電源ボタンの隣にある鍵穴に挿し右側に捻る。

「おっけー開けたよ。」

「はいよ。っと、」

隼が持ってきた1週間分の残飯を装置に入れて蓋を閉じた。すかさず私は開始ボタンをポチッと押す。すると光学迷彩装置残飯処理機笑は音もなく動き始めた。稼働を確認して鍵を左に捻り鍵を抜く。いつもこの稼働の瞬間だけは最近の技術というのは進化したのだなとしみじみ思ってしまう。

「はい終わり。また来週と。」

残飯はあまりでない。食べる人数も多いし食料がすぐになくなるからである。割と食べられる場所がある野菜などを自家栽培しているからかもしれない。だが絶対に残飯がでないわけではない。例えばじゃがいもの芽などは食べたら死ぬので取るし大根の茎は…私が嫌いだから棄ててる。その他に海鮮などの頭なども食べれないので出汁を取ったら捨てるらしい。私は調理担当ではないからシュンとかツインメイドから教えてもらった。

「よし、帰ろうぜ。帰りにまた転ぶなよ。」

「うるさいなぁ。そんな簡単に転ぶわけないでしょ、勉強するんですよ。人間は。っうわ!」

…またさっきの根元で転んだ。悪運強すぎる、ほんとに最悪だ。あぁ血がでた。痛いさっきの痛みも合わさってもっと痛い。色んな人に怒られそうな気がする。こんなことなら大きな懐中電灯でも持ってくるんだった。

「勉強するんじゃなかったのか笑?」

「うるさい隼のバカ!早く手貸して手!」

「あーはいはい笑」

この後施設に着くまでずーーーっとこの事で隼は笑っていたのであった。アイツ……いつか同じことしてやるからな、覚えとけよー!

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