帰宅1
「…今回の報酬と、あと飯だ。ほらよ。」
「…ありがとうございます。」
30cm×45cmの木箱の中に報酬が入っている。いつもと同じ大きさの木箱だ。それで、食料はこっちの木箱か…うん、いつもと同じ乾パンか、最近はなんともまぁ味気ないことだ。大人たちは毎夜酒と賭け事に明け暮れているというのに。やれやれである。まぁ貰えるだけ有難いのだが。
「じゃあここはもう閉めるからな。さっさと中に戻れ。全てはカペナウムのために。」
「あぁ、はい。かっ、カペナウムのために。」
食料と報酬、報酬と言っても金とかではなく娯楽品が多いのだけれど。それらは全て入り口の鉄筋扉の前で受け取る。この入り口と言うのはカペナウムの入り口のことだ。厳重なロックが掛けられているが抜け道は実は存在する。たまに使うこともあるが基本的には使わない。バレたら面倒くさいからである。
「…さてと。」
木箱2つ、これらをどうやって持って帰るか。少し考えなければならなそうだ。
「怜。今日の木箱来たのか?」
「あ、隼。うん、そう。あと報酬もね。」
「報酬…報酬ねぇ。つってもよ、これいつの時代の玩具なんだか。」
「ホントだよね。でもまぁ、最年少のリアちゃんには人気だしいいじゃない。別に。ないよりマシってやつよ。」
「なるほど。リアは……確かにな。んじゃあ食料の方持ってやるよ。ほら箱貸せ。」
持っていた食料品の木箱を強引に奪われ私の手から重たい木箱は姿を消した。かわりといってはなんだが私は報酬の箱を持つことにした。まぁ、当然と言えば当然である。
入口から歩くこと5分。長い廊下を抜けてドアを開けると私たちの居場所が待っている。
「みんな〜報酬来たよ〜」
「お姉ちゃん!」
私は人気者だ。こうやって小さな子供から同い年の人達までに囲まれているのだから。
「はいはい。とりあえず、ヘリオ。この箱、報酬棚に閉まっておいて。」
「了解。レイ。」
「他のみんなはご飯の準備しようか。まずはナトリとナターシャは温室から今日できた野菜を収穫してきて。エレナとシュンはむーちゃんから卵とってきてね。それ以外は私についておいで。」
「了解!」
むーちゃんというのはここで飼っている鶏のことだ。名付け親は私じゃなくて今は死んでしまったカペナウムの子だ。
「レイおねえちゃん、抱っこしてー」
「うーん。お姉ちゃん、リアを抱っこしたら腰が折れちゃうからダメー。」
「むー」
「そうだぞリシア。そんなこと言ったら俺だってねーちゃんに遊んで欲しいんだけど?」
「遊ぶのはいいけど全部終わったあとね。」
「っしゃ〜!」
全力で喜んでいる子供たちを横目に私は食料棚を見上げてメニューを考える。
今日の夕飯はなにを作って貰おう。そうだ、確か以前の報酬にコンソメ…だっけ。それが入っていたはず。確かキューブ状の。キューブだから溶かすのかな。野菜を切ったのをいれてコンソメ野菜スープにしよう。卵はオムレツかな。オムレツを20人分…卵、足りるかな…むーちゃんが昨日と今日それと前のをあわせて何個の卵を産んでくれたかにもよるのだけれど。
「シュンー!決まったよー!」
私はむーちゃんから卵を奪取してきてくれたであろう隼に声をかけた。
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