第11話千鳥お嬢さまは志麻とデートをする その2

バスを降りますと、再び夏の日差しと海からの照り返しが肌を刺します。

帽子を被っていますが、汗もかいたので再び日焼け止めを塗ります。


「うーん、暑いね」

「志麻も日焼け止めを塗り直しなさい」

「そうだね、この日差しだとすぐ日焼けしそうだし」


日焼け止めを塗り直すと、目的のお寺へと向かいます。

このお寺はアメリカ領事館として一時使われたお寺だそうです。

また、同じころに日本来航しましたが、地震の津波で沈んだロシア船の

乗組員の墓地もあります。


お寺はそこまで広くはありませんが、歴史的な物があり志麻は喜んでいます。


「面白いのは領事として赴任した人の日記で、ストーブが暖まらなくて安物は使い物にならないとか

あの人は嫌いだとか、物凄く文句が多い内容なんだよね。

ただ、当時起こった大地震の記録があるから、貴重だったりするんだよ」

「日記も150年以上経つと史料になるのですね」

「そうだけど、人に見せる内容じゃないから自分が死んだあととはいえ、読まれるのは恥ずかしいというか、嫌と言うか」

「そうだとしても、当時の記録ですから、仕方がありませんね」

「そうだけどね。そういえば、本堂の壁にある穴はそのストーブを買ってた名残と言われれていて、煙突がでてたらしいんだ」


本堂の人目が着きにくい側面に、穴を塞いだ後がありますが先ほど志麻が言っていた

領事の使っていたストーブの名残だといわれているそうです。

確かに、軒に近い高さとくりぬかれた形から煙突を出してた居たようにみえますね。


「志麻はそんな事も知っているのですね」

「以前来たことある人の話をネットで見て、知ったんだけどね」

「そだとしても、普通では見逃す細かい事を気になるのはすごいです」

「そうかな」


志麻はわたくしに褒められて嬉しがっています。

そして、本堂の他に資料館はロシア船乗組員の墓地を参拝してお寺をあとにしますた。


「ちーちゃん、時間的にお昼だけど、どうする?」

「そうですね、どうしましょう」

「この近くだと港にある道の駅で色々食べられるそうだよ」

「それではそうしましょう」

「ただ、バスはまだまだ来ないよ」

「地図で調べましたが、歩いて行ける距離なので歩いていきましょう」

「そうだね、この距離なら歩いて行こう」


現在の位置から道の駅までは1.1㎞とあるので歩いていきます。

時間的に太陽は高く、日差しも強くて気温が高いので距離としては

そこまでではありませんが、とても暑いです。

さらに国道沿いを歩くので、車の熱気もありさらに暑いです。


「ちーちゃん、暑いね」

「そうですね。ただ、あと少しです」


暑いですが、海沿いを歩くので時より吹く風は気持ちがよいです。

そして、空には雲が増えて来ていますが、予報では明日から台風の影響がでて

天気が崩れる予報です。

予定を早く切り上げて、明日に帰宅するので今日は出来るだけ志麻と旅行を楽しむつもりですが

志麻の好きな場所も良いのですが、わたくしの好きな場所に行きたいですね。

ただ、その前に空腹なので食事をとります。


「ふう、着いたね」

「そうですね」


20分程でしたが、汗をかいたので汗を拭きます。

そして、建物の中に入るとエアコンが効いていて、汗が引きますがその分少し肌寒くは感じます。


「ちょっとは肌寒いけど、女の子になってから冷房に弱いなったよ」

「女性と男性では感じ方が違いますからね」

「ちーちゃんの気持ちも分かったよ」


太志だった事はあまり話さなくなりましたが、時々思い出したように話します。

ただ、わたしも志麻が太志だった事は気にしなくなってきています。

それに、志麻はも志麻ですから、ミヤコ様によってTSした事も今は関係ありません。


「お腹空いたから、何食べようか?」

「回転寿司や地の魚を使ったハンバーガ―などがありますね」

「せっかくだから、お寿司にしようよ。お寿司も地物らしいから」

「志麻がそう言うなら、そうしましょう」

「お金もあるしね~♪」


志麻と回転寿司に入りますが、回転寿司と言って地魚を使ってるいます。

本日はキンメダイ、ムツ、アジ、ホウボウ、イサキ、メダイなど港で上がったものだそうです。

なので、それらを頼みますが、すべて美味しいです。


「キンメダイはこりこりしてるけどとろけるし、アジは臭いが無くて本当に味がいいよね」

「ダジャレですか?」

「ダジャレじゃないよ、いいアジは本当に美味しんだから」

「確かに美味しいですね」


アジに限らず、どの魚も港で上がった魚なのでお寿司としてもかなりおいしいです。

マグロなどの定番のネタも物が良く、美味しいです。

そして、気づいたら10皿ほど食べましたが、志麻は15皿ほど食べました。


「美味しかったから、食べたよ」

「お金を貰ったと言っても、これだけだ食べるとそれなりのお値段ですよ」

「そうだけど、たまにはいいよね」

「そうですね」


普段は外食はあまりしませんので、たまには良いですね。

食事あとは近くの公園の海辺で行きましたが、雲が広がって来て日差しも弱くなり

海から吹く風で心地が良いです。


「この後どうしようか」

「あと3時間程ですが、3時間は時間がありそうで時間がありませんね」

「そうだよね。有名スポットはバスでの移動だし、かと言って駅から電車で移動するにもだしね」


スマートフォンを見ながら近くのスポットを調べますが、距離的に水族館が良さそうです


「水族館がありますので、行ってみますか?」

「水族館か、いいかも」

「イルカのショーなどもありますよ」

「移動時間的にもよさそうだから、行ってみよう」

「では、そうしましょう」


現在地から水族館まで1.8㎞ほどです。

バスで行くのも良いのですが、雲が出て日差しが弱くなりましたので歩くことしました。

ただ、1.8㎞と言うのは一番近い道を通った場合で、海沿いを通る道を経由するルートもあります。

地図で知ら食べた所、一番近いルートではトンネルがあるので徒歩ならば

海沿いを通る方が遠回りになりますが、海を見ながらなのでこちらのルートにしました。


 最初に車を降りた駐車場にまで戻りますが、さらにその先に進みます。

海沿いの道は山影になっており、海から吹く風で心地が良いです。

途中、海を見ながら休めるベンチがあったり、むき出しの地層を志麻が見ていて

思ったよりも時間がかかりましたが、水族館に到着しました。


 水族館の入場料を払い入場をすると、イルカと触れあえる他、ペンギンやアザラシもいますし

水槽にはクラゲや伊勢海老などもいて見ていると楽しく、意外と時間が経っていました。

ただ、イルカのショーなどは上演時間が過ぎており、次のショータイムでは

集合時間に間に合わないので、残念ながら見る事は出来ませんでした。


「イルカのショーとか見たかったな」

「仕方ありませんよ、ちゃんと調べなかったのがいけません」

「行く所ばかり探してて、細かい所まで調べなかったからね」

「また来る機会はありますよ」

「そうだね、次はショーを見ようね」

「ええ、そうですね」


イルカショーは諦めましたが、志麻は


「イルカショー言ってら飛沫がかかって、濡れ透けチャンスだったのに……」


とつぶやきましたが、聞かなかったことにしましょう。


 水族館を出る前にショップに立ち寄りましたが、色々な物があって意外と目移りします。


「なんか、ぬいぐるみが人気らしいよ」


志麻がそう言いますので、見てみるとポップにも書いてあり人気ですね。

ただ、お値段も思ったよりしますし、大きさもあるので買うのは悩みます。


「大きいのは無理だけど、こっちのペンギンのぬいぐるみはどうかな?

抱き合ってるからカップルにおすすめらしいよ」

「このサイズなら持ち帰れますね」

「それじゃ、これにしよう」

「そうですね。ただ、皆さんにも何か買わないといけませんね」

「だったら、このクッキーでいいんじゃないかな?」


水族館オリジナルのクッキーなので、これを2つ買いました。


「思ったより荷物になるけど、何とかなりかな」

「多分、大丈夫でしょう」

「時間的にも今からなら集合時間に丁度かな」

「ですね」


水族館に来た道を戻れば、集合場所の駐車場になります。

なので、元来た道を戻りますが、意外と荷物が持ちにくいので

途中にベンチとテーブルがありましたので、そこで1度休憩します。


「今日は楽しかったよちーちゃん」

「まだ、これから別荘に戻るのですよ」

「もー、デートの終わりだから少しは雰囲気をだしよ」


志麻はそう言って頬を膨らませますが、つまりそう言う事ですかね。


「つまり、キスをして欲しいって事ですか?」


わたくしが言いますと、志麻は


「もー、そこは黙って近づいてそれらしい雰囲気を出すんだよー」


と再び頬を膨らませますが、まだ日が高いですし近くの防波堤では

釣りをしている人たちがいて、意外と人目があります。


「防波堤に釣りをしている人がいるので、人目が全くないわけではありませんよ」

「だとしても、雰囲気出してよ」

「雰囲気を出すのも良いですが……」


わたくしはそういって、志麻の顔を近づけます、そして


「うるさい口を塞ぐというものがありますよ?」


といって、そのまま志麻の口に軽くキスをしました。


「なななななッ!!!」


志麻が慌てますが、志麻は自分から言っておきながら

実際にされると、乙女の純情を出しますからね。


「何を慌ててるんですが、志麻がキスをねだったのではありませんか」

「そ、そうだけど、そんなイケメンみたいな事しなくても……」

「志麻、顔が真っ赤ですよ」

「ちーちゃんにこんな事されたら、真っ赤になるよー」


志麻はそう言って横を向きますが、恥ずかしがるならあのような事を言わなければよいのに。

ただ、わたくしはもっとしっかりキスをしたかったのは内緒です。


 しばらくして、志麻も落ち着いて顔の赤みも引きましたので再び歩いて駐車場へ戻ります。

駐車場に着くと、15時50分と少し早いですが皆さんも戻っていました


「皆戻りましたから、別荘に帰りますか」

「そうっすね」

「お待たせしましたか?」

「いや、わたしたちも2,3分前に就いたばかりだよ」


千音さんがそういますが、汗を拭いているのでついたばかりの様ですね。


 わたくしたちは車に乗り込み、別荘へ戻りますが来るまでは行きと同じく

わたくしと志麻は隣合って座っています。


「柳さん、なんか荷物を持ってるけど何にかな?」

「これは水族館で買ったものです」

「そうなんだ。柳さんも志麻さんも行ったんだね」

「もということは、千音ちゃんたちもったの?」

「なのとほだかさんとね」

「イルカのショーとかが楽しかったっす」

「わたくしたちは時間が合わなくて見られませんでした」

「そうだったすか。仕方がないっす」

「でも、別の思い出はできたけどね」


志麻がこう言いますと、なのさんは


「なんすか、教えるっす」


といって、志麻から聞き出そうとしますが


「これは内緒」


と言って答えませんでいたが


「あれすっよ、しまっちがキスをねだったけどやなぎっちがあれこれ言って

しまっちが文句を言ったら、うるさい口をキスで塞いだっすよ」


と言い当てました。


「な、な、なんでわかった!?」


志麻も驚きますが


「大体、予想は付くっすよ」


といって、ドヤって顔をしています。


「ばれたらしかたないけど、恥ずかしいな……」


志麻はそう言って顔を赤くしますが、わたくしは横でニコニコしているだけでありました。

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