第10話千鳥お嬢さまは志麻とデートをする その1

翌日、昨夜決めたとおりに街へと行きます。

近くの街はこの辺りでは一番大きな街でありますが、そこまで大きな街でもありません。

しかし、歴史的なスポットや温泉、港などがあります。


「車を停めておきますから、そうですね……16時にここに集合しましょう。

それまでは自由にしてください。あと、これは食事代などおこづかいです」


別荘から車で街へ向かい駐車場に車を停めると、梨子さんはみなさんに1万円を手渡します。


「梨子さん、ありがとうっす」

「1万円なんていいんですか?」

「今は色々高いから、1万円はないとね」

「梨子さんありがとうございます」

「わたくしはいりませんのに」

「千鳥ちゃんの分も預かていますから、受け取ってください」

「わかりました」

「では、いくっす。しまっちとやなぎっちは2人でデートするっす」


みなさんは気を使って、わたくしと志麻を2人にしてくださいました。


「ホテル代もありますし」

「ちーちゃん、まだ昼間だよ……」

「でも、高校生は入っちゃだめでよ?」

「ほだか、ホテルには入りません!志麻、行きますよ」

「ちょ、ちーちゃん、待ってよ~」


皆さんにからかわれますが、志麻と2人ということはいわばデートですね。

ただ、何時も2人で居ますしよく出かけてますから、デートと言う感じはあまりしませんが。


「もう、ちーちゃん、先に行かないでよ」

「相変わらずバカな事を言うからです」

「いつものノリだって」

「わかていますよ、志麻と早く2人きりに成田ので怒ったふりをしたのです」

「なんだ、ちーちゃんはツンデレだなぁ」


これがツンデレと言うのかはわかりませんが、皆さんの茶々が恥ずかしかったのが本音です。

もちろん、志麻と2人になりたかったのもありますが。


「ちーちゃん、デートだし手を繋ごうよ」

「ええ、繋ぎましょう」


わたくしと志麻は手を繋ぎますが……志麻は手の汗が凄いです。

暑いのか、緊張なのかわかりませんが手に汗をかいています。


「志麻、デートでこんな事を言うのは何ですが……手の汗がすごいです」

「あ、うん……手を1度拭いた方が良かったかな」


志麻にしては答えに窮しましが、まさか珍しく緊張してるのでしょうか?


「志麻、もしかして緊張してるのですか?」

「実は……してる。ちーちゃんとデートって思うとね」

「でも、2人で学校を帰ったり、休日に出かけるてますよね?」

「それは、日常生活と言うか、習慣というか……緊張しないけど、いつもと違う場所でデートって思うと緊張するんだよ~」


志麻は手を繋ぎ頬を染めながらじもじしますが、志麻は普段はあっけらかんとしてる割に急に緊張して乙女になりますね。


「また急に乙女を出さないでください」

「だって、乙女だし……」

「わたくしだって、乙女です!」

「ぼくたちの年齢は早乙女だって」

「それは田植えをする若い女性の事です」

「そうだっけ?と、とにかく、初デートだから緊張してるんだよ~」


確かに、デートらしいデートはしてませんが、ここまで緊張しますかね?

わたくしは普段出かけてる延長線程度しか感じていませんし。


「とにかく、普段出かけるのと同じ事をすればいいだけですから行きますよ」

「わかったよ~。でも、1度手汗を拭かせて」

「わかりました」


1度手を放し、手汗を拭きますと再び手を繋いで歩き出しました。


 わたくしたちが来た街は幕末の歴史に関する場所であります。

別荘には何度も来ていますが、街の中を歩くは実は初めてです。


「街に来るのは初めてだったよね」

「そうですね。志麻は歴史も好きだなので、来てよかったのではないのでしょうか?」

「そうだね」


駐車場からしばらく行った道は開国のためにアメリカから日本来た偉人の名前がついています。

条約締結のため、この道の先にあるお寺まで行進したそうです。

この道はかつてはの花柳界の面影があり、石畳に川沿いに柳が植えられ

この地方独特のなまこ壁と石造りの建物が残っています。


「なまこ壁や石造りの建物は防火のためだったみたいだね」

「そうなのですね」

「川の向こうの石造りの蔵なんて立派だよ」

「立派ですが、そんなに良い物ですか?」

「ちーちゃんはわかってないけど、和風に見えてちょっと西洋の造りなのがいいんだよ」

「はぁ……」

「むー、この建物の良さがちーちゃんにはわからないけど、うまく説明できないな~」


この後志麻は建物の良さをわたくしに熱弁をふるいますが、立派な事はわかりますが

志麻が熱弁をふるのかまではわかりません。


「とにかく、この建物はいいんだよ。多分、石蔵は明治ぐらいの建物だと思うよ」


橋の上から石蔵の写真を撮っていますが、撮った写真を見て志麻は

「うんうん、いいね~」と言っていますが、歴史はあるのかもしれませんが

わたくしにはやはりわかりません。


「この家は石造りだけど、感じからして大正ぐらいかな」

「見てわかるんですか?」

「造りを見ればわかるけど、断言はできないよ」


志麻が言うには、窓のデザインと壁に貼ってある防火のための金属版から大正ごろとみています。


「ただ、窓は新しくしてるから何とも言えないんだ」

「そうですか」

「なんか、ちーちゃん興味ないなぁ」

「古さはわかりますが、そこまではありません」

「確かに、女の子でこの良さがわかるのは早すぎるか」

「志麻も女子ですよ」

「それを言わないでよ」


志麻と言いますか、太志の頃も歴史は好きでしたがここまで建物が好きな訳でもなかった気がします。

志麻になってなって建物が好きになった様ですが、何がきっかけなんでしょう。


「何で建物が好きになったのですが?」

「何でと言われても、好きだからとしかいえなかも。

古い建物を見てたら、だんだん良さがわかって来たって感じかな?」


どうも特別な理由は無いようですが、建物をまじまじと見て……やはり良さはわかりません。


「ちーちゃんには建物の良さをわかるのは早かったかな」

「そうですね。ただ、川沿いに柳があってよい雰囲気なのはわかります」

「花柳界って事は芸者さんがいた場所で、昔は賑やかだったんだろうね」

「そうのようですね」

「この街灯も電気でなくて、ガス灯みたいだよ」

「そうなんですね」

「電気の明かりとはまた違った感じだと思うけど、流石に夜まで居られないからね」

「そうですね」

「この先のお寺で条約が結ばれた場所たらしいから、行ってみようよ」

「わかりました」


川沿いの道を歩いた先には古い寺がありましたが、ここで幕府とアメリカとの条約が結ばれたそうです。

お寺自体は1625年に創建されてそうなので、お寺自体に歴史があります。


幕府とアメリカの条約について10日間話し合いがなされ、条約が結ばれたそうです。

その時の幕府はアメリカに対して弱腰どころか、対等に交渉し当時の為替レートも

日本側に有利になるようにしたそうです。


「昔は幕府が弱腰と言われてたけど、今は弱腰どころか論破というか

反論できないぐらいに優位に交渉したみたいだ。

だから2回目の来航時は交渉の専門家を連れて来たんだよね」

「そうなのですね」

「弱腰や不平等条約というのは明治新政府が徳川幕府を否定するためのプロバガンダだったみだいよ」


その後も志麻はあれこれ説明しましたが、ここまで志麻が歴史に詳しいとは思いませんでした。


「条約の内容よりも、天皇の許可を取らずに条約を結んだのが最大の失敗なんだよね」

「志麻、わかりましたから次へ行きましょう」

「ちょっと話し過ぎたちゃったかな」


志麻の話は黒船来航から条約締結までの歴史をあれこれ話しましたが

正直な所、ほとんど聞き流していました。

志麻には悪いですが、歴史に関しては学校の勉強程度しか興味がありません。

ただ、楽しそうに話す志麻を見ているのは楽しいです。


「他にも色んな資料があるけど、ちーちゃん見ていく?」

「いえ、志麻の話で十分ですので、次に行きましょう」

「わかった。でも、どこに行く?」

「お寺を出てから考えましょう」


お寺を出て次にどこに行くかを調べますが、次もやはり幕末の歴史に関係する場所です。


「次に行くお寺は領事館になってたらしいよ」

「歩いて行けるのですか?」

「ちょっと遠いかな」

「そうですか。バスの時間を見てみましょう」


スマートフォンでバスの時間を調べましたら、10時38分発のバスがありますが

現在の時間は10時30分なので、少し待てばよいようです。


「少し待ちますが、これで良いでしょう」

「わかったけど……ちょっとトイレに行きたいかも」

「近くにスーパーがありますから、急いでくださいね」

「うん、わかった」


バス停近くのスーパーのトイレに行きますが、熱いので涼むのによいです。

ただ、バスの時間がありないので、間に合うかわかりません。


「お待たせ」

「あと2分出来ますから、急ぎますよ」

「バスは数分ぐらい遅れるから大丈夫だよ」

「念のために急ぎます」

「わかったよ~」


志麻がトイレから戻ってきましたが、思ったより時間がありません。

バス停はスーパーの駐車場を抜けて、道路を渡ったすぐの所にあります。

なんので十分間に合うと思いますが、それでも少し急ぎましたが時間になってもバスは来ませんでした。


「ほ、ほら、バスはまだ来ないよ」

「だから、念のためといいました」

「それに、暑いし日に焼けるよ」

「日焼け止めは朝でかける時に塗りましたよね」

「そうだけど、汗もかいたから後でまた塗り直さないと」

「そうですね」


夏の日差しがとても暑く、汗は拭いても吹いても流れてきます。

そして、バスも志麻が言う通り数分遅れでやってきました。

バスに乗車すると、バスの中は冷房が効いて外からだと少し肌寒いぐらいでした。

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