第9話千鳥お嬢さまたちは嵐が過ぎるのを待つ

夕方から雷が鳴り雨も強くなりましたが、暗くなっても雨も雷もやむ気配ありません。


「雨雲レーダーだと、この辺りは真っ赤だし、その後も雲があるからあと1,2時間はやまないかも」

「雨もすごいですが、雷もすごいですね」


雨音と雷鳴で大きな声が出さないと会話できないぐらいすごいです。


「停電にならないか心配だね」

「ちねっち、フラグっすよ。そして、連続殺人がはじまるっす」

「まだそんな事言ってるんだ。そもそも殺す動機も殺させる理由もないし」

「街から離れた場所にポツンとある別荘は殺人事件が起こるものっす」

「なの、バカな事言ってると、部屋に1人にするよ」

「わるかったす!1人にしないでほしいっす!」

「もう、服をつかまないでよ。一緒にいるから」


なのさんは千音さんの服を引っ張ていますが、鳴りやまない雷を怖がっています。


「でも、本当にすごい雨だよね。別荘までの道路は大丈夫かな?」

「しまっち、フラグになるからそういう事は言わないっす!」

「なのちゃん、わかったよ」


なのさんは雷に怖がりながらも、ツッコミをいれたりしていますが

稲光した瞬間、同時にドーン!と言う雷鳴がして別荘が揺れました。


「か、かなり近いっす!怖いっす!」

「な、なの、怖いからって抱きつかないでよ」

「本当はやなぎっちがいいですが、ちねっちで我慢するっす!」

「余裕があるのか、無いのかわからないな」

「でも、建物が揺れたのは流石に驚いたよ」

「流石に今のは驚きましたね」


するとまた稲光がし、先ほどと同じような雷鳴がしてまた揺れると同時に

明かりが消えましたが、停電したようです。


「流石にあの雷は停電するか」

「そうでね」

「な、なんで2人とも冷静なんすか!停電なんて、連続殺人事件の冒頭っすよ!」

「なの、そんな事言ってる余裕があるなら、離れてよ」

「余裕なんかないっす!ほだかっちの姿がないので、やはりほだかっちが犯人っす!」


確かにほだかの姿がありませんが、ほだかは梨子さんと台所で料理をしているだけです。


「なのさん、なんでわたしが犯人なんですか?」


ほだかがLEDランタンをもって、こちらの部屋に来ました


「ほだかっち、いきなり全員を襲うのはスプラッター映画っす!」

「襲いませんよ。なのさんは雷が怖いといいながら、そのような事を言う余裕がありますね」

「本当は怖くないんじゃないの?」

「怖いっす!わたしは怖がると、色々話すタイプっす!」


なのさんは怖さを紛らすために、あれこれ話すタイプだそうです。


「そうだっけ?小学生の時や中学生の時は毛布やクッションを被って震えてたよね?」

「それは以前の話っす!アップデートしたっす!」

「そう言う事にしておくよ」

「しかし、これから食事なのに停電は困りましたね」


今度はLEDのヘッドライトをつけた梨子さんがやってきました。


「や、八つ墓村っす!やっぱり連続殺人が始まるっす!」

「なのちゃんが何で八つ墓村を知ってるかはさておき、停電ですが食事が出来ましたから食べましょう」

「LEDランタンは部屋の分だけありましたので、後で渡しておきます」

「用意がよいですね」

「千鳥ちゃん、ダジャレですか?」

「違いますよ」

「天気が悪くなるので、事前に用意しておきました。電池も予備もありますので一晩持つと思います」

「それまでに復旧すると良いですね」

「と、とにかく、ごはんす!」


なのさんは抱きついていた千音さんから離れると、一番最初にテーブルに

着きますわたくしたちもテーブルに着きLEDランタンの明かりで夕食をとりました。



「外は嵐でも梨子さんの食事はおいしかったす」

「雷が怖いって言いながら、食い気は変わらないんだ」

「ちねっち、腹が減っては戦できぬっす」

「いや、戦わないから」

「とにかく、怖くてもお腹は空くっす」


雷を怖がりながらも、なのさんは料理を全て食べましたが

夕食が終わった頃になると、雨もかなり弱まり雷も遠くになってきました。


「あ、明かりがついたね」

「よかったす」

「停電が復旧したって事は、道路は大丈夫の様ね」

「梨子さん、フラグっすよ」

「フラグじゃないわ、道路が寸断されたら電気も来ないから道は大丈夫って事よ」

「ならよかったす」

「ただ、心配だからお酒を飲む前にちょっと車で様子を見に行ってくるわね。

もし何かあったら通報しておかないいけませんし」

「片づけはわたしがしておきます」

「お願いね、ほだか」


梨子さんは片づけをほだかに任して、車で道路の様子を見に行きました。


「これは絶対フラグっす」

「なの、しつこいよ」

「だって、夏休みのイベントと言ったら、海での遭難、肝試し、人里から離れた別荘連続殺人っす!」

「最後はイベントじゃなくて、ミステリー物の話でしょ」

「大体、行き先々で高校生が殺人事件に遭遇するって変っすよ。

むしろ、そいつが連続殺人犯シリアルキラーっすよ」

「それを言わない。ほだかさんの手伝いをするよ」

「そうだね、ほだかちゃんの手伝いをしてあげようね」

「そうですわね」


わたくしたちは食べ終わった食器を下げたり、ほだかが洗った食器を拭いたり

棚に戻すなどをしてほだかを手伝いました。


「ほだかっちはメイドみたいっす」

「一応、本物のメイドですよ?」

「ええ、わたくしの家の事を手伝ってますからね」

「そういえば、そうだったす。しかし、わたしたちと同じ年なの手際がよいっす」

「これでもまだまだです。料理の腕は千鳥ちゃんの方が上ですし」

「そうなんすか?」

「ちーちゃんはこう見えても、意外と料理がうまいだよ」

「こう見えてもは余計です。といっても、梨子さんみたく本格的な物を作れる訳ではありませんが」


わたくしは作れる料理を話しますがなのさんは


「いや、それだけ作れればすごいっす」


と感心しました。


「そうだよ、わたしなんてインスタントの味噌汁をつくるぐらいだし」

「ぼくだって簡単な炒め物や卵を焼いたりはするけど、そこまではできないよ」

「そうですか?」

「そうみたいですね」

「むむ、料理の基準が高いとは、さすがお嬢様とメイドっす」

「ちーちゃんとほだかちゃんは梨子さんが基準になってるからね」


みなさんのお話を聞くと、どうもわたくしたちの料理の基準は高いようです。

確かに、梨子さんを基準にしたらプロを基準にしているようなものですからね。

なので、これからはもっと料理が出来る事を誇る事にします。


 片づけが終わると、雷と停電で入れなかった温泉に入ります。

温泉は源泉かけながしですが、シャワーの湯は停電だと給湯機が使えなませんので

停電が復旧してよかったです。

温泉に出ますと、梨子さんが戻ってきました。


「道の方はちょっと土砂が流れてた場所がありましたが、通れないほどじゃなかったです。

ただ、念のために警察と役所に連絡はしておきました」

「それは良かったです」


幸い、別荘から国道へ出る道は通れましたの安心しました。


「なんか、国道が土砂崩れで通行止めみたいだよ」


スマートフォンで交通情報を見ていた、志麻がこう言いますが大丈夫でしょうか。


「本当だ、帰る方の道だね」

「あらあら、困りましたね」

「やはりフラグっす!」

「SNSに写真を上げてる人がいるね」

「これなら1日で復旧するんじゃないのかな?」

「そうっすか、残念っす」


何故かなのさんは残念がります。


「なのは何か起きて欲しいの?」

「冗談っすよ。でも、明後日には帰らないとならいっす」

「そうだね、明日も天気が悪いから、海では遊べないよね」


予定を切り上げましたので、明後日には帰らないとなりませんので

なのさんも千音さんも少し残念がっています。


「せっかくですから、街の方へ行きませんか?」


それを聞いて梨子さんが提案しますが、別荘に何度か来ていても街に入ってないので

街に行くのも良いかもしれません


「それもいいっすね」

「別荘には何度も来てるけど、言った事はなかったから行ってもいいかな」

「そうですね、街も見る所がありますから」

「皆が行くなら、わたしは構わなないよ」

「わたしもです」

「では、そうしましょう」


こうして、明日は街へ行くとになりました。

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