第6話 光

 私が目を覚ました頃には、同じベッドで眠っていたはずのステラはいなくなっていた。家中、庭も畑にも、どこにもいない。名前を呼んでみても返事はないし、気配もない。

 そのうち帰ってくるのではないか。そう思ったのだが、しばらく経っても感じることの出来る範囲でステラの気配がすることはなかった。

 ベッドまで戻り、ステラが寝ていたであろう位置に手を置く。

 眠りに落ちるまで、彼女は確かにここにいた。

 思わずシーツをくしゃりと掴むと、その辺りでぽたりと音がする。自分の涙の音だという事に、しばらく気づけなかった。

 夜になるまでずっとそうしていて、これまで追いやっていたはずの心細さに苛まれる。ステラが来るまで、感じようとしていなかったものが心の奥底まで迫ってくる。

 堪えきれなくなり、縋るように見えないはずの星空を求め、窓を全開にした。


「これは……」


 それだけを呟いて、私は唖然としてその場に立ち尽くす。

 窓を開けた途端、視界がクリアになって、求めていた光が瞳に飛び込んできたのだ。

 すぐには信じられず、自身の手や家中を見回した――見える、見ることのできなかったものが、見える。

 もう一度夜空を見上げると、一筋の光が瞬きながら通り抜けた。それと同時に、ステラの声が聞こえた気がする。

 周りを見回すが、ステラの姿は見当たらない。

 気のせいとは思えなくて再び視線を上に向けると、思わず息を呑んだ。夜空一面に広がる無数の瞬き。記憶に残っているものよりも輝きが強く見える。

 夜空の暗さを感じさせないほど眩しい光は、全てを包み込むように私の視界を覆った。これまで輝きを映さなかった瞳には、その星の光一つ一つが奇跡のように思える。

 光に彩られた夜空を映しながら、最後まで姿を見ることの出来なかった少女の声が心の中を巡った。


「ステラ……」


 彼女が最後に語った流れ星とは、自分自身のことを指していたのだろうか。

 真実は分からないけれど、いつもこの窓辺でまた星を見たいと願っていたことを思い出す。きっと、見えていなくてもその時に流れた星が、叶えてくれたのだ。

 そして、迷いがある私の背中を押してくれた。

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