命
南無三
第1話
敵対するモノには死を
十数年前、この辺りで大量の人々が処刑された。出来たばかりのその國は混乱していて当時の政府のトップが合理的な鎮圧だとして行ったらしい。処刑された人々には無関係な人々が沢山いた。その中に私の両親も含まれていた。処刑された人の遺体は返ってくることが少ない。
連邦共和国、そこは広大な面積を持っていているが、極寒の地で大半の土地が使えない。冬に餓死する人で屍の山を作れるほどだった。共和国ができる前は帝国があったらしい。王家は革命の時に惨い仕打ちを受け無くなってしまったと村のおばあさんから聞いた。
私の住んでいる村の近隣に大きな森林がある。そこにはクマや盗賊などがいて、村の住人だけでは対処しきれない。そのため国から軍人を派遣してもらっている。
「お兄さん、それなんなの?」
オーバーコートを着た軍人に話掛けた。手に持っているモノは何か鉄の筒のようなものだ。
「これ?」
「これはね、銃というものだよ」
「どうやって使うの?」
好奇心が抑えられず、聞くと軍人は「見せてあげる」といってポケットから何か出した。
「銃は弾を装填して引き金を引くと対象を倒せるんだ」
遠くにいる野兎を仕留めるといい、銃を構え発砲した。耳が壊れそうな音がする。
野兎の方を見ると脳天を撃ち抜かれ絶命していた。
「凄いね」
私がそう言うと軍人が少ししょんぼりした顔になった。
「お嬢ちゃん。銃はね、動物を簡単に仕留めれるけど、人間に使えば効率的に殺すことができてしまう道具なんだ。だからあまり使わないで欲しいの。でも村のために使うのなら教えようか」
「いいの!でも・・・」
「どうしたの?」
「仕事は大丈夫なの」
私がそう言うと軍人が微笑み、「大丈夫。私、優秀だから」と自信満々に言った。
それから私は、軍人に銃の扱い方を教えてもらっていた。最初は発砲音にビビっていたが段々と慣れていった。村の食材を一人で取りに行くことも出来るようになってきた。ある日、軍人と一緒に猟に向かっていた。
「射撃の腕前はどうなったのかな。噂では一回の量で十数羽の鳥を狩ってくるらしいね」
「はい、結構うまくなりましたよ」
そんな話をしていると数百メートル先に鹿の群れが見えてきた。
「あれを仕留めてみようか」
「わかりました」
猟銃を構え、鹿を狙う。引き金を引き、一発命中。そしてすぐに装填し引く。今回の結果は4頭。
「凄いね、結構上達している。この調子でもっと頑張ろう」
そうしていると馬車が見えてきた。
「ここら辺に馬車?おかしいな」
軍人はそう言うと銃に弾を込める。
「念の為、装填しといて。賊がいるかもしれないから」
そう言われ、私も銃弾を装填する。馬車に近づくと悲鳴が聞こえた。
「賊に襲われているみたいだね。助けるよ」
そう言うと馬に乗っていた数名かの盗賊を撃ち落とす。馬車が止まり中から巨漢が出て来た。実は森に狩りに行ってる時に盗賊にあったことが無かった。初めて見る存在に手が少し震える。
「すいませんが馬車を襲うのはやめてもらえませんか」
「俺らがそんなことで止めるとでも。話し合いとは暴力には勝てないのだよ」
巨漢がそう言うと何人かの部下が出てきて襲ってきた。軍人は慣れた手つきで次々と銃弾を叩き込み、全員が倒れた。
「なれていますね・・・」
軍人は馬車の中にいた人の救助をしている。巨漢に目をやると苦しみながらも起き上がってきている。私を道ずれにするつもりだろうか。猟銃を構える。銃を習う時に軍人に人は撃たないで欲しいと言われた。だが目の前の脅威を排除する方が先であると思った。
深呼吸をし、引き金を引く。巨漢は絶命した。すると軍人が出て来た。
「やっちゃたかー。仕方ないね。今、どんな気持ち?」
「余り感じませんね。動物を撃った時と同じ感覚です」
「人それぞれの感じ方があるからね。でも人を撃てばもう昔の自分には戻れないよ」
軍人は微笑みながら言った。
命 南無三 @hawking1582
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