文明ってたまには迷惑だと思う件

 なんだかんだ伴さん達のブートキャンプをしながらも予定通り辿り着いた。

 予定と言ってもそれは日数的な予定であって、時間的な予定ではない。

 到着をすぐさま結城さんに連絡する千賀さん。

 結城さんが必死になって覚えてくれたおかげで千賀さんがこまめに連絡するから居心地の悪い事。まあ、本来それが千賀さん達の仕事なので今更な気はするけど、初めましての魔物とかすぐに報告するマメさ。これが仕事なんだよねと今までの大雑把な仕事ぶりは何だったのだろうかと言うくらい連絡を取り合うのはここには二度と入れなく、それでいてどんな所かよくわかってないからの情報収集。

 大体は雪が頑張ってくれているけどね。雪が撮影したもののぶれの酷さに見ていて酔いそうだけどそれを解析するのは俺達ではないので問題ない。


すでに空は真っ暗で、灯りのない月夜にそびえる廃城の迫力たるや見事と言うしかないだろう。

「なんかヤバい奴が出てきそう」

「ねー、ヤバい奴がいそうだよねー」

 岳と一緒にそんな感想を笑いながら素直に言いながらも

「とりあえず城に入る前の儀式で」


 プシュー……


 毒霧一発、わけもわからず命を落とす毒霧と相性最悪な虫系の落下する音や、何やら苦しむ声がまたこの夜の廃城によく似合う。そしてやっぱり多少の隙間はあれど毒霧は密閉型の場所では最強だ。

火攻めするのとどっちが有効か。

 俺的にはその後を有効活用できる毒霧一択。

 何もかも燃やしては転売出来るものも出来なくなるからなんて、魔物を売ったりしたうまみを知ってしまっただけに余計取り扱いは慎重にだ。

そんな俺の思惑にも皆様白い目を向けてくるけど城の中を想像できる岳や花梨と千賀さん達はここまでやるか。虫嫌いもここまでくるとしょうがないなという様にさらに白い目を強化させたものを向けてくるが、俺の必殺広範囲殲滅魔法毒霧(痛っ!)を知らない伴さん達には俺が城の中をちょっと確認しただろう程度にしか見えてないのでこの突然の魔物の苦しむ声に思いっきりビビっていた。

 俺のスキルの事を言うつもりのない皆様と言うか勝手に言うのはタブー視されている社会のおかげで聞いてはこないけど、観察されて分析される分にはタブー視されていない。むしろ

『それぐらい当然できるよな?』

と言う授業の中にも取り込まれるくらいの世知辛い世の中。

 友達をそんな目で見なくてはいけないなんて高校卒業後のニート時代にダンジョンが発生してくれてよかったよ。友達いなかったけど。

 とりあえず城に乗り込む前に真っ暗闇だからと光魔法の基本と言えばライトをいろんなところに設置する。

 まあ、ここでも岳がしでかしてくれるんだが……


「岳、一つ聞くが城の外壁を電飾で飾って意味があるのか?」

「ですねー。城の中の暗さが際立つじゃないですか」


 俺と林さんで岳の意味不明な努力に魔力大切に、でも源泉水が問題解決コンボの使い方を伴さん達に悟らせるなとすでにバレバレでも対策をする小芝居を披露してもそこはエリート様。

 まるで昼のような溢れんばかりの輝き。

 そして変わりゆく色と光の芸術。

 魔物を呼び寄せるんじゃないか?なんて突っ込みさえもうどうでもよくなった。

 それどころか伴さん達は突っ込むどころではなくライトアップされた城をぽかんと見上げていた。

 まあ、分かるよ?

 ここに来て文明と遭遇したからね。

 え? 違う? 細かいこと気にしないでと全力でスルーしていれば


「相沢君」

「なんですか?」


 ここに来て背中がぞわぞわするような相沢君呼び。

 嫌な予感しかしないのは当然だろう。


「我々にも光魔法とやらは覚えることが出来るだろうか」

「まさかのネズミーファン。エ〇クトロニカ〇パレードとかガン見でした?」

「でした。

 ではなく……」

 ゲフンゲフンと咳払い。おっさんくさーい。おっさんだけど。

「たぶんここまでの間に我々を助けてくれるための魔法ですか。いくつも使ってくれたと思います」

 そんな控えめな言葉の裏には情報収取と言う言葉が見え隠れするも

「まあね」

 あっさりと肯定する。


 実際うちのダンジョン脱出してから水井さん達にお願いして俺達の戦闘風景の動画をネットで配信してもらっている。

 最初こそうちのダンジョンの入り口、例のトイレの話しとかからのダンジョン攻略した後の出来事も簡単にまとめての第一弾を流した。

 そしてダンジョンに潜ってちょうど第一弾からの24時間後に第二弾を流してもらった。

 魔法について。

 もちろん覚えるコツとかはぼやかした。

 ほら、バルサンが品切れになるとかそんなことが起きたら全国の虫イヤー様に申し訳ないじゃん。

 こんな種類の魔法覚えましたよー。

 ファンタジー凄―い!

 そんなバカっぽいノリで紹介をしていった。

 もちろん第三弾も用意してある。

 魔物から採れた素材お披露目だ。

 マロ皮とかクズ角とかはもちろんボス戦で獲得した宝箱の中身とかも紹介する。

 これで世の冒険者様達のモチベーションが上がればいいと思うけど、フィールドダンジョンに自由に出入りできてそこで生活とかし始めたり自然保護団体とかが出てきたり、子マロ、子象の愛らしさに保護団体とか設立されたり厄介だからと言う理由で出入りを制限しなくてはいけない以上俺達みたいな成長を期待するのは難しく思っている。

 第三弾があれば第四弾もある。

 もう二度と足を運ぶのは無理だろうと思っているからこその俺達が冒険した風景を改めてダイジェストにしたもの。

 そして第五弾が花梨のお料理教室。

 貴重なダンジョン産の食材を楽しむ飯テロ動画。

 素晴らしい事に花梨はお肉だけではなく現地の野菜やハーブを見つけていたりする。

 結構ヤバくね?

 なんて編集していた時心配していたもののそこはダメなときは即源泉水でなかったことにする強者だった。

 花梨さんこんなヤバいことしてたの?

 彼女の食への貪欲さがここまでと知らなかったとはいえ今更止める事なんてできないだろうと手軽に入れるダンジョンが無くなってよかったと本気で思った。

 

 そんな情報を一緒に潜る事で知る事の出来ない精鋭なお三方をかわいそうにとはまったくおもわないが


「魔法って案外簡単に覚えれますよ。むしろダンジョンの入り口の方が覚えやすいのでお勧めです」


 そう、覚えるなら入り口が一番だ。

 地上の文明を使ってダンジョンへの攻撃。

 一見意味不明な事だけどダンジョンが勝手に理解できる魔法に置き換えてくれるからこそ入り口の階段が一番のスポットだ。

 ある程度覚えたらすぐ10階に戻れる11階でいろいろ試すのがお勧めだけど、さすがに天を操りし者なんて運動会か遠足ぐらいにしか使いようのない称号がつく魔法なんて使いようがないしね。

 

「実の所ダンジョン対策課の皆さんと交流した時に気が付いたのですが、皆さん魔法を覚えているのに気づいていない方が結構いたのですよ。

 千賀さん達みたいに覚えて積極的に使ってもらう人もいますが……

 むしろ戦闘職ではない方の方が色々覚えてました」


 という事を話している間にいい感じに時間が過ぎて


「とりあえず今夜寝る場所はせっかくなので城の中で休ませてもらいましょう。

 少なくとも明日の朝ぐらいまでは魔物も少ないだろうから俺達で交代して見張るからしっかり休んで明日の二連続のボス戦に備えましょう」


 見上げるほどの大きな扉を開ければその先に続く広間にはおびただしいほどの魔物の亡骸。

 俺は雪が遊ばないように、そして研究資料の為に収納で回収して

「とりあえず入り口でキャンプするから生き残りがいないか討伐お願いね」

 なんて言う前に動いていた雪と暗い室内を城の外と変わらないくらいに明るくする岳の電飾攻撃。

 うん。俺達の目にも厳しいよと心の中で突っ込むも何を見習ったのか知らないけどとにかく美しい光の渦。

だけど


「岳、寝る時はちゃんと消してね?」

「えー……」

「えーじゃないでしょ。寝れなかったらお肌が荒れるんだから」

「あ、はい」


 幼馴染の容赦なさは最強だなとそれでも暗くて静かな夜を得ることが出来た事は安眠への第一歩として感謝してみた。




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