教育って大切だね
戦いはこれからだ!
残念な事に本当にこれからだ。
三輪さん中心に皆さんお魚で光の球を相殺してくれる。お魚万能すぎてもう俺が黒い球を出す意味なくなっちゃったよ。
それに俺がやると被害が大きくなりすぎるのが欠点なのでそこは任すしかない。
壁が壊れてあの虚無空間に放りだされる、一番回避しなくてはいけない事だから。
俺は雪と一緒にギアを上げて羽無し様に襲い掛かる。
虚無空間でバトルロイヤルを繰り広げて最後の一人の勝者になったラスボス様だけに俺達数か月で鍛えた戦闘能力では歯が立たない。レベルではいけてるから大丈夫だと思ったんだけど、俺よりも圧倒的たくさんのプラスとなる何かを稼いでいる羽無し様の方が優位だったようだ。
分かってはいたけど
「キッツいなこれ!」
ストックはあるとはいえもう大人のマゾ牙を何本折っただろうか。
羽無し様も雪の素早さになれつつあるも翻弄されている様は雪のひっかき傷で証明されている。
って、エクスカリバーで切り落とされないってどれだけあの白い服有能なんだよと同じ素材を着ている俺としてはこれからはこのユニフォーム以外着てダンジョンに潜れないなと俺のチキンが主張する。
とはいえ工藤の精神力も限界。借金の数字もおかしい事になっている。ドーピングもほどほどになって奴だ。
三輪さんも源泉水飲みながらでも肩を手でさすっている疲労とは違う限界が来ているのだろう。
花梨も一瞬なら雪を超える瞬発力で攻撃に加わり、千賀さんも向こうが知らない足技を披露していく。
うん。
準備はあいかわらず不安があるけどきっと大丈夫。
所かまわず魔法をぶっぱなす羽無し様に対して苛立ってるのは俺達だけじゃない。
ここまでダンジョンがボロボロになり、時々虚無の世界が見えたりすぐ修復されたり。
だから見て見ぬふりはできない、と俺は信じる。
「千賀さん」
「何だ!」
「お疲れ!」
「ああっ?!」
疲れからか言葉がイラついている。
「はやっさん!」
「林さんと呼べ!」
「はい!林さんっ!」
ついに教育的指導が来た。
「三輪さんももうひと踏ん張り!」
「おう!だけどもう魚は見たくない!」
「帰ったら足のついてないお魚をいっぱい食べましょう!」
「だったらせめて骨は取ってくれ!」
想像以上になんかかわいらしい言葉に少し離れた所で林さんが小さく噴き出していた。
「橘さんも頑張りましょう!」
「ああ!だけど俺は肉がいい!骨を掴んで齧り付くようなマンガ肉!」
「それ!俺も食べたい!」
岳も当然のように手を上げればしっかりみんなも手を上げていた。
もちろん
「雪まで……」
ちょこんとお行儀良く座ってしっぽフリフリ手を上げる雪しゃん、かわええ……
「花梨さん」
「はい」
「ぜひともよろしくお願いします」
「仕方がないわねえ」
なんてお許し。
やったーと岳と一緒に小躍りしながら
「工藤!一人戦ってるけどお前も参加だからな!」
「戦ってるの分かってるならこっちに集中しろ!」
「はははー! めっちゃマジ顔!」
「山ほど食ってやるぞ!腹がはちきれんくらい食べつくしてやる!」
何て珍しい工藤の食への欲望を吐き出しながらの剣を交えての力比べ。
千賀さん仕込みのパワーファイターだったはずなのにもうただの力比べにしかなっていない。
「まぁまぁ、それよりも飯は大人数で食べるほうが美味いに決まってる。
しかもみんなあこがれの骨付きのマンガ肉。
あんたも食べてみたいだろ?
借金鳥さんもさ?」
「はぁい、たべたぁい」
全員の動きが止まった。
だけど俺はみんなに見えないようにガッツポーズ!
突如現れた漆黒の鳥。
もちろん例の鎌はお持ちだ。
と言うかだ。
俺はさっそくステータスをチェック。
そしてとある文字を探せば期待を裏切らないNEWの文字。
もちろん俺が期待した文字は「召喚」
わけがわからず俺に返事をさせられたみんなはやっとここで納得という様に目を見開いて借金鳥を見ていた。
「何だそいつは!
さっきまでいなかっただろ!」
羽無し様も驚愕だ。
いくら正規ルートでこの部屋に来なかったからと言ってこの部屋の特性も知らないはずで、説明しても素直に理解はしてくれないはずだから省略。
だから俺は収納から一つの鍋を取り出して借金鳥に渡す。
「今呼んだからいるだけだろ。
それよりも鳥の肉だけど食べるか?」
聞けば鍋を受け取った借金鳥。
分からないというような顔に蓋を取って見せればそこには花梨が作ってくれたローストチキンが詰まっていた。
皮付きジャガイモがごろごろと入っていてこちらも皮付き人参が彩に入っている。玉ねぎも小粒なのが詰めてあり、その上に鎮座する骨付き鶏ももが三つ。
この密室にこの匂いはきつい。
どこからか「ぐ~」となる腹の音。たぶん岳。素直すぎると今は微笑ましく思ってしまいながらも
「食べていいぞ」
借金鳥に言えば無言のまま腹から鍋ごと収納。
あれ?
これ、どんな展開?
予測不可能な借金鳥。
そこは全員言葉が出せずにいれば
「きゅええええええええっっっ!!!」
何ともテンションの鳴き声を発してくれた。
「な、何?こんな鳴き声だっけ?」
「また仲間が来るのか?」
「それはまずいぞ!さすがのあの数がここに来ると狭いぞ?!」
俺も思った花梨の疑問とは別に千賀さんと林さんの判断はこんな時でも冷静だなと思う中
「おいしいね」
こっちがドン引きするような借金鳥の笑顔の感想。
いや、今腹から鍋ごと食べたじゃん。
その喋ってる口、会話専用かよ。
って言うか
「お前上手にしゃべるな?」
そんな疑問には
「いっしょーけんめいおべんきょーしたぁ!」
ぞっとした。
見られているのは感じる事はなくても俺達を監視しているのはなんとなく頭で理解していた。
その結果が
「これか?!」
舌っ足らずな幼稚園児レベルの語学力を学んだのは想定外。
ほんと斜め上を良く言葉遣いは岳のせいだと決めつけた。
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