試行錯誤でやっぱりこれだろ
「さっき消滅させただろっ!!!」
叫ばずにはいられないという様に大声を張り上げれば
「工藤逃げろっ!!!」
千賀さんも叫ぶも
「どこにっ?!」
気が付けば20階の階段の入り口で向き合ってる状態。
俺達は千賀さんに突き飛ばされてバランスを崩し、工藤は目の前で振り上げられた鎌に完全に足が止まってしまっている。
どうすればいいかなんて……
振り降ろされようとした鎌がはじけ飛んだ。
白銀の輝きが幾筋と流れ
「フーッッッ!!」
いつの間にか借金鳥を工藤から引き離して二人の間で毛を逆立てていた。
「工藤今のうちにこっちにこい!」
「荷物は後で回収するからその辺に置いておけ!」
千賀さんと俺の指示に工藤はこのピンチに警戒しながらも荷物を捨てて、だけど宝箱から出てきた剣だけは手放さずに握りしめていた。
マゾ剣よりランクの高い剣を手放さずにいる判断、意外に冷静だなとそこは借金鳥との遭遇の多さからだと判断しながら俺は借金鳥のステータスをもう一度のぞく。
借金鳥 (---才) 性別:オス
称号:---
レベル:---
体力:---
魔力:---
攻撃力:---
防御力:---
俊敏性:---
スキル:自動修復
「ああ、くっそ!さっきの鳥と別個体かよ!!!」
「マジ?!」
岳の突っ込みに
「今度はオスとか!見分けポイントどこだよ!!!」
「それよりも今は逃げる事が優先でしょ!」
「工藤!走れっ!!!」
言うも
「この距離で逃げれると思ってるのか?!」
よほどの幸運が必要らしい。
だったら
「工藤、あれやるぞ!
雪!工藤を先導してやれ!」
「待て!金の力だけは使いたくない!!!」
なんて
「この状況で選べると思ってるのか?!
とにかく雪の足の速さを借りて逃げろっ!!!」
いくらムカつく野郎でも目の前で死なれれば後味が悪いし、工藤には生涯死んだほうがましと思うほど働いて被害者たちに謝罪を続けさせたい。
「それだったら戦って帰るほうがましだ!」
なんてここで迎え撃つ方法を選んだ。
「ああ、もう!」
どうすればいいかなんて
「なんで俺がお前のために戦わないといけないんだよ!」
俺も工藤とお揃いの剣をもって借金鳥に襲い掛かって切りつけるもすぐに自動修復。
「って、直るの早すぎだろ?!」
ありえないと文句を言いたいけどその直後鎌が振り下ろされて転がりながら逃げる。
「って、鎌いつの間に手に戻ってるんだ?!」
「よくわからんが弾き飛ばしてもすぐに手に戻ってくるぞ!」
「そういうのは早く言え!!!」
言いながら俺達の隙をついて雪が借金鳥の背後から攻撃を仕掛けようとするもさっと視線を雪に向けて
「雪っ!よけろっ!」
鳥らしく視界は広いようで背後からの攻撃も難しいようでぎりぎりの所で宙を蹴って反転して鎌の軌道から逸れた。
そして三輪さんが遠くからの援護射撃をしてくれるけど、貫通した石の部分はすぐ戻る。
「さっきの鳥よりこっちの方が強いんじゃね?!」
距離を取ろうにも工藤だけを襲い掛かる借金鳥から距離を取った瞬間工藤はあの大きな鎌で狩られるのだろう。
「防戦しながらの戦いが難しいなんて……」
「いざとなったらさっさと逃げろよ」
なんて
「らしくない事を言うんだな」
意外だと言えば
「俺のせいで人が死ぬのは見たくないからな」
きっと手柄を上げようとして巻き沿いにあった人の事を指しているのだろう。
「まして守られて人が傷つくのは見たくない」
剣を構えて借金鳥を見る者の視線の先はどこか遠い過去を除くそんな色。
きっと……
まだ無力でただ力を振るわれる弱者だった時の景色。
震えながらも守ってくれる背中があったという事だろ……
力がすべて。
人を支配する。
そんな環境下で育てば自分を守るために必要だと思わずにはいられない。
工藤のしてきたことは絶対許せないけど、いま守ろうとしている守られてきた背中にやっと向き合おうとしている愚か者をどうしようかなんて
「雪、とりあえず鳥を削り取れ!」
「にゃっ!」
そんな指示はせめて借金鳥の見掛け倒しのようなやたらとつややかな羽をはぐことに決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます