反省会はまだまだだ!
「その魔法……」
一体何なんだという様に橘さんは驚いた顔をしていたけど
「さっき20階の天使だと思ったら悪魔な鳥人間が使った魔法です。
ぶっつけ本番だったけど成功して何よりでした」
きりっとした顔で言って見せるもものすごい賭けだったなと今更ながら冷や汗が出る。成功したからよかったものの発動しなかったら恥だけでは済まない話。
「なんて無茶を……」
心から心配してくれる橘さんには悪いが
「そういう意味でも実験をしたかったのです。
オブジェクトの破壊、異世界の魔法のコピー、そして破壊できないはずのNPCの消滅。トイレのための攻略の数は一つでも多くあるに限りますからね!」
なんせもう冬は目前だ。
敷地内で迷子になったりトイレに行くために凍死なんて笑い話にもならない。
魔象の固さと俺達にはない魔法に対する耐性、と言うか知識ではなく感か?
それだけでここまで来てしまったところもあるが、この分では次の25階も無事クリアできるだろう。
とはいえ雪ならともかくほかのみんなのレベルが追いつかない問題も発生している。
これをどうするべきかと悩んでいる間に
「相沢ごめんー。今回俺全く役に立たなかったー」
しょぼんとした岳が林さんに促されてやってきた。
服は破られてボロボロだけど足元は確かなその様子に俺は慌てて駆けよる。
「岳!無事だったか?!」
言いながら岳の全身を確かめるようにポンポンと体を叩いて確認すればくすぐったそうな顔が
「林さんの治療を受けたから大丈夫だよ」
見た目はひどいけどどこも悪くないという様に両手をひろげ
「なんてったって源泉の水の力半端ないからね!」
医者って存在は必要だろうかと思うも笑顔でそこは突っ込まずにいれば
「木の上から見ていたがすごい魔法だな」
「あの借金鳥のスピードにおいつくなんてすごいじゃないか」
千賀さんも三輪さんもやってきた。
みんな集まって無事な姿が見れた所でほっとしたけど
「あ、工藤忘れてた」
「って、あいつ何処にいるのよ」
なんて心配する雪を抱えている沢田に
「一応20階で隠れてもらってる。
視界に居なければいいかなって」
大体どこにいるかは分かっているようだが視界に入らないと攻撃してこないらしい借金鳥に一か八かという様に20階に潜りこんだまでは良いがもぐりこんだのを見られたので追いかけてきたもののこのダンジョンの謎ルール、誰かがボス部屋に居る時は何人たりともはいることが出来ないなんて過去の経験からの知識は借金鳥にも有効のようだった。
となると
「今までボス部屋って言うかマロ部屋とかマゾ部屋とか言ってたけど一応試練の間だったんだな」
ぽつりとつぶやいてしまった。
岳は何言っちゃってるの?なんて顔をしていたけど
「そうですね。次の試練の間にたどり着く実力があるか計っているって感じですね」
林さんもそう分析してくれた。
「まずは魔狼。11階以降いろいろな亜種として魔狼が出てきます。
大きな川や水にかかわる地形ですが、一歩離れれば常に魔狼が待ち構えている状況。そして魔象と言う防御力の高い魔物の群れははっきり言ってマロのスピードに追い付いたからと言っても倒せないぐらいに防御力は高く、そして天使と悪魔ですか?どちらかと言えば今まで肉体的な強力差が目立った相手だったので魔法が強い相手は正直苦戦したと思います」
とそこまで言った所で林さんに睨まれてしまった。
「相沢がアホなレベルのあげ方と謎の魔力の持ち主に成長していたからよかったものの……」
呆れられてしまった。
もう逃げたいくらい侮蔑する視線を向けられてしまったがバルサンに蚊取り線香と言ったアイテムからの広範囲魔物の討伐がまさかのレベル上げに協力するなんて俺が知る限り何処のサイトにも書いてなかったはず。よって俺は悪くないと睨み返すも
「それよりも工藤、出て来い。もう安全だぞ」
千賀さんが20階の入り口から呼べば少し不安げな様子で上がって来た。
命を狙われる、それなりに怖かったのだろうと俺は鼻で笑うが工藤は俺の撮影機械と討伐してそのまま放置していた蝙蝠男と羽を抱えて姿を現した。
「一応機材は全部持ってきたがまだやり残したことがあるのならギリ間に合うぞ」
そういう工藤は19階ギリ一歩手前。
21回の様子を見に行くのもいいだろうという所だろうか。
それも悪くない。
「だったらさ、みんなで扉の隙間から21階見に行ってみない?
結界はって蚊取り線香準備して毒霧撒いておけば大丈夫だろうからさ」
なんて言えばどういう意味か分からない工藤以外は好奇心旺盛と言うか
「次のステージはどういう所か気になるよな!」
なんて岳の言葉に
「だね!いつも相沢ばっかり一番最初に見てるから私も見たいし!」
なんて沢田も見たいと賛成。
そうなれば後は皆さんとても協力的で
「レポートも埋めるネタが増えたな」
「やっぱり未知の世界は男のロマンですよね」
千賀さんも林さんも興味は尽きないようだ。
「ここにきて全員で一緒に見れるって言うのも不思議なもんだな」
「ですね。いつも相沢達の背中を追いかけてる身としてはなんだか不思議ですよね」
なんて三輪さんも橘さんもくすぐったそうに笑うのを見れば
「だったらさっそくみにいこうぜ!」
なんて工藤に言えばその目が途端に大きく見開かれた。
なんだ?
驚きではないそんな様子にいち早く異変を感じて後ろを振り向いた千賀さんは俺達を突き飛ばしてくれて……
目の前に一本の銀の線が走った……
何が起きたか周囲をすぐに伺えばそこには全身真っ黒の、巨大な鎌を持った鳥が俺達ではなく工藤へまっすぐに視線を向けているのを「なんで?!」と声を出さずに驚きながら見上げていた。
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