これでも負ける勝負はしないつもりです
箱から出てきたのは蝙蝠男が持っていた剣。
因みにさっき倒したやつのもあるからいきなり二本ゲット! ちょーラッキー!!
なのでマゾ剣は収納して蝙蝠男の剣を俺は引き継いだ。
二つ目の箱には真っ白の反物。
「なにこれ……」
あまりに意味不明で鑑定をすれば
天界の衣
ランク:8/10
防御力:400
備考:光の加護
天使がまとっていた服と言うか布の事だろう。微妙過ぎだ。
いや、沢田ならいい考えがあるかもしれないけど反物ってどうすればいいんだよ。最悪ニャンズ達が昇ってすぐにボロボロになるカーテンの代わりでいいか?なんて途方に暮れる。
まあ、それは適当に何か使い道があるだろうと収納。
そしてもう一つ。
「石ころだ」
「っていうか宝石に近いな。水晶か?」
工藤も覗き見るがつまらんと鼻を鳴らす。
「まあ、せっかくシューターがあるんだから飛び道具ぐらい出してくれてもいいけど、取り合えず俺は沢田たちを迎えに行く。
工藤は借金鳥に見つからないように死角で隠れてろ」
言えば少しだけ顔を歪める。
「何だ?ひょっとして今頃後悔とかいう言葉を覚えたとか?」
「だったら問題でもあるのかよ」
あまりにも素直な返答に言葉が詰まるも
「別に、ただ今頃かって呆れてるだけ」
「ちっ」
なんて言って見つからないように階段のすぐ横の壁に背中を預けて
「早く女王様の様子でも見に行け」
「お前の姿が隠れてアイツがいなくなってる事を願っているよ」
なんて階段を駆け上がればすでに戦闘が終わった20階の部屋の扉は開かれていて、俺が駆けあがるより先に19階に戻っていた雪が
「シャーッ!!!」
その声に足を速めれば借金鳥の鎌をかいくぐりながらすでに雪が戦っていた。
「相沢!」
呼ぶ声に振り向けば近くの木の影から沢田が橘さんの腕からあふれる血を流さないようにと押さえつけるように圧迫していた。
「まだあいついたのか?!」
俺はすぐに源泉水を取り出して傷口にかけたり橘さんに水を飲むように渡せば傷口はすぐにふさがる物の血の気の悪い顔はすぐには治らない。
「ありがとうございます。ふらふらしますが、痛みはなくなりました」
「すみません。水を置いていかなかった俺のミスです」
失敗したとその流れた血の多さに俺まで血の気の引いた顔色をしてしまうも
「それよりも身を低くしてください。三輪先輩が木の枝の中に隠れながら鳥頭を攻撃してます」
さっそく習得したばかりの称号とスキルを合わせての攻撃。
俺と沢田を覆い隠すように地面に伏せればどこからか飛んできた木の枝が借金鳥の肩に刺さる。
「ふあっ?!」
適当に折ったと言わんばかりの木の枝が肩に刺さってついていた花のかわいさが間抜けに見えるがあんな細い枝でそんなことが出来るのかと驚いていれば見えない方角から今度はしっかりと先を削り取られた木の枝が借金鳥の足を地面に縫い付ける。
さすがに身動きが取れないようで深く地中に刺さった枝を抜こうとしてもなかなか抜けないらしい。
「っていうか痛みはないのかよ……」
さっきからと言わず借金鳥の体にはいくつもの攻撃を受けたような傷口があるのにそれが原因で動きが鈍くなっているという様には全く見えない。
「相沢達が20階に行ってから追いかけようとしてドアを攻撃してたんだけどやっぱり入れなくって。
だけど岳が相沢なら絶対20階クリアするからって借金鳥をどうにかしないとって……」
言った所で沢田が黙ってしまった。
そこで俺は岳の姿がないことに気付いて周囲を見回せば
「岳なら大丈夫。林さんに治療を受けているから……」
「治療って、岳は?!」
俺を守っている橘さんをはねのけて立ち上がれば
「大丈夫だから!
吹っ飛ばされて木にぶつかって軽い脳震盪なだけだから。林さんが付いているし林さんは源泉水持ってるから!」
言いながら探し出そうとした俺の足に沢田がタックルするという
「ひどい……」
俺は思いっきり顔面から大地を抱きしめていた。さらにそのままタックルした沢田ごと橘さんに巨木の影に隠されるようにまた守られる。もうちょっと大切にしてほしいと願ってしまうのは贅沢だろうかと思いながらも沢田の説明を聞く。
「岳は安静だから戦線離脱してるの。源泉水のごり押しの相沢と違ってちゃんと診てくれてるからあんたは借金鳥の相手をするの!わかった?!」
「はい……」
言いながら思いっきり痛みを訴える鼻をさすっていれば
「で、工藤はどうしました?」
橘さんは声を張り上げた沢田の口を手でふさぎながら工藤の様子を聞けば
「20階で隠れてもらってます。
扉が閉まったから鳥がいなくなってと思ったけど雪が駆けあがっていったからそこで待機してます」
「十分です。今の所直に見えるところから攻撃しなければ反撃はしてこないので」
なるほど。だから姿を隠して皆さん攻撃しているのかと納得。
だけど足が地面に縫い付けられている鳥を雪は……
「あれ、どうなんだろう」
俺ですらやっと目が追いつくというスピードで攻撃を繰り返す雪に借金鳥は雪を捉える事は無理なようだった。
攻撃するも一切ダメージは受けていないように見える。
だけど……
舞い散る羽。
ダメージ計算の対象外なのか回復もなく一部から剥げていく……
「って、マジですか?!」
さりげなく雪は攻撃しながら頭の羽をむしっていた……
もちろん死角の背中側とかも剥げていき……
思わず両手で目を覆って嘆いてしまう。
戦いには勝てないけど確実に借金鳥は大切な何かを失っている。
そんな攻撃をされたら俺は間違いなく泣くだろう。
「あ、ついに尾羽とか翼にまで手を付けたわよ?」
沢田も雪の攻撃は気になっていたようで橘さんに守られていたとはいえ素直におとなしいと思ったら雪のえげつない攻撃をただ見守るしかできなかったようだ。
「雪のスピードがあるから何とか出来ているけど……」
「ですが、雪の攻撃を受けて足の槍が抜けそうです」
橘さんは俺達とは違い借金鳥が禿げるところではなく縫い付けられた足の様子を見守っていた。
だけど俺は雪が一人で借金鳥の相手をしている間絶対千賀さんは時間を無駄にしないだろうと信じているので
「雪!交代だ!」
千賀さんが攻撃をするためにも隙を作らなくてはいけない。
俺で対処できるか。
一応スピード勝負では勝てるとおもっているけど魔法特化しかけている俺で対処できるか。
っていうか……
「その鎌ちょー怖いんですけど!!!」
マゾ剣ではなくさっき蝙蝠男が置いて行った剣を俺は手にして振り回される鎌の軌道を潜り抜けながら千賀さん早くもう一度足止めしてくださいとそのリーチが不利になる様に狭い木々の間を潜り抜けるけど背後からは木々が倒れる音が響いていて
「これムリゲーでしょ!!!」
お構いなく木々を雑草のごとき切り払う鎌に俺はちょびっとだけ泣きそうになった。
だけどただ逃げ回ってるだけではない。
その間にも千賀さんと三輪さんがいる位置を把握。もちろん枯葉の中に潜伏している岳と林さんも発見。
雪も沢田の所で水分補給中。
これでもう万全な状況だ。たぶんだけど。
とりあえず全員がいる場所を確認すればあとは俺が腹をくくるだけ。
俺の予想が当たれば借金鳥には絶対勝てないはず。だったら、どうするかなんて……
息をのんでそれが正解かどうか試せばいいだけだと逃げ回る足を軸にして体を反転する。
正面には俺に迫る借金鳥。
もちろん俺のこの変化にすぐに鎌を構えるのを見て俺は手にした剣が宝箱から出たものではない物の実力で勝負に挑むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます