これが下僕の生きる道
「相沢ー!すぐに追いかけるから先に雪を捕まえていてー!」
必死な沢田の声だけど
「もう雪に追いつかないんだけど!」
泣き言を言ってしまう。多分もう聞こえてないだろうけど。
仕方がない。
もう俺では雪と追いかけっこしても追いつけないのだから。
ただ行き先が分かっているから追いかけれるだけまだましだと思っている。
それに雪が通った後はおびただしい数の魔物が倒されている。
白い悪魔、そういわれるゆえんだ。
と言っても雪曰く拾ってついて来いという意味だろう。
ふっざけんな!
なんて叫ぶ所だろうがあいにく俺は雪の下僕。
「ああ、もう雪さんったら何年分のお肉を確保するつもりなの?!折角狩っても食べれない分は俺の収納の中で大量に在庫で抱えるだけなのに!捨ててもいいよね!拾わなくていいよね!」
はるか先を走る雪に許してください!なんて叫びながらも一応収納していくマメな下僕な俺。
雪の後を走りながら狩った獲物を収納していくうちに手で触れることなく目視で収納ができるようになり、今では複数同時に収納できるようになった。
え、これ雪ブートキャンプの一環ですか?
これが噂の雪軍曹のスパルタですか?
戦闘員ではなく作業員として素晴らしく下僕を使いこなす鬼軍曹ですね!
きっと取り残したらひっかかれるんだろうなと主ながらもそれも悪くないと考えるくらいに雪への愛は溢れている。
のまえに拾い損ねてもダンジョンが吸収してしまうのでばれやしないけどね。
だけど推しの喜ぶ顔を思い出せば期待は裏切られない。
そんな葛藤が雪の足止め作戦だとわかっていても悩まずにはいられない。
とはいえ一応全速力で走りながら雪を追いかける。
一向に追いつく気配はないものの俺は走りながら毒霧を撒いて後から追いかけてくる沢田たちの為に魔物を間引いておく。蚊取り線香をぶら下げて万全の準備をするのも悪くはないが、せっかく魔物が多いこのダンジョンなのでがっつり倒してレベルアップに貢献してもらいたいとそこまでは過保護にしない。
なんてったって普通に沢田たちの方が強いからね。
マゾが群れてやってくるとめんどくさいだろうけど、それでも廃墟となった市街地から城の方へと向かえば城を拠点とする魔物たちがわんさかやってくる。
巣が荒らされると思うよりも餌が飛び込んできた、なんてどこに隠れていたんだという犬や猫に似た魔物が俺に容赦なく襲ってくる。
まあ、身も蓋もなく毒霧でやっつけるだけなんだけど。
頭の中で岳がちゃんと戦闘しようよ!なんて喚いている声が響いているけど俺のようなチキンにはこの方法が一番の正解。
廃墟の中はがれきであふれた道路しかない壊れたレンガ造りの街をピョンピョンジャンプして飛び越えていけるけど城はなぜか正面の入り口からしか入ることが出来ない謎ルールがある。
こういう所無駄に設定が細かいよとダンジョンを恨んでしまうもここは俺が得意とする室内戦ができる場所。
「まずは毒霧!」
叫びながらの魔法発動。
ぷしゅーと言う間抜けな音ももう気にもならなくなるくらい耳になじんで毒霧が充満するのを待っていれば……
ポトリ、ポトリ……
「いやあああぁぁぁ!!」
蝙蝠とか蜘蛛とかが天井から落ちてくる。
コレうちのダンジョンでもあったけどしっかりご家族様をおつくりになられていたようで、それはもう雨が降るように落ちてくるそれらに城から逃げ出す始末。げんなりとしながらもお水を飲んで少し心を落ち着けさせながら再び足を向ければ蝙蝠とか蜘蛛とかのカーペット。
「いやあああぁぁぁ!!」
とりあえずそれらを収納してから城の外の一角に向けて全排出。
さむぼろが浮き立つ腕をさすりながら
「触らなくすんでよかった!」
ほっとして泣いてしまう。涙は出て無いけど。
その作業が終われば再び走り出して階段を駆け上がりながら玉座の間みたいな場所に向かえばカーペットのふちがさくらカットにされていた。
一応足取りを教えてくれるのだろう場内の大量の討伐された魔物と共に。
ちゃんとここにきて20階入り口を目指していることは理解できたが
「さすが雪さん。カーペットっていうダンジョンのオブジェクトを破壊できるなんて雪の爪はエクスカリバーか?」
唸ってしまうがすぐにどうでもいいと必死になって急な階段を上った後に待ち構える下りの階段を必死に下りていく。
「って言うか、この16階から本当に階段多すぎ」
地味に膝にくるんだよと源泉を飲んでその痛みを中和する。
そしてたどり着いた17階も同じように遠くに建築物を眺めながら毒霧を巻き散らかすのは雪が城まで目指してい討伐していることもありやたらと魔物が殺気立っていた。
うん。
お前ら程度じゃ雪が負けるわけないな。
だけど距離が開き始めてしまったので雪が倒した魔物はほかの魔物に食い荒らされてしまっていたため回収はやめた。
「それにしても魔物多すぎだろ」
ン年間誰も足を運ばなかった未開のダンジョンの魔物の量に辟易とするもののどう考えても20階の入り口の扉の前で満足げに寝そべっている雪の姿しか思い浮かばなくって下僕としては
「早くご飯とお水をお届けに行かないと、でないと……」
待ちきれなくて変な魔物を生食していませんようにと願いながらまた城の階段を駆け上がるのだった。
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